首相所信表明が10月23日になったのは「国会運営の主導権」を野党に握られつつある証拠 須田慎一郎が指摘
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年10月17日 18時50分
ジャーナリストの須田慎一郎と中央大学法科大学院教授で弁護士の野村修也が10月17日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。10月23日に行うことになった岸田総理の所信表明演説について解説した。
岸田総理大臣が10月23日に所信表明演説を実施へ
自民党の高木国対委員長と立憲民主党の安住国対委員長は10月16日、国会内で会談し、臨時国会での岸田総理の所信表明演説を10月23日に行うことで合意した。自民党が提案していた召集日20日の実施は見送られた。
飯田)10月22日に参院と衆院でそれぞれ1つずつ補欠選挙の投票日があることから、「党利党略だ」と野党が反対したということです。
須田)「代表質問をしないまま、一方的に言いたいことを言ってしまったら選挙に影響する」というのが野党の主張ですが、所信表明ごときで影響は受けませんよ。つまり、どうやら野党に国会運営の主導権を握られつつある。自民党が劣勢に立たされているということです。基本的に安住国対委員長は、高木国対委員長を相手にしていないのです。
飯田)相手にしていない。
須田)そのバックにいる森山裕総務会長が、安住さんとのやり取りのなかで動いているわけです。落としどころとしては、「補欠選挙が終わった時期に」というのが森山さんの動きだと思います。
この臨時国会では政権側が野党に譲らざるを得ないケースが出てくるのでは ~国会運営の主導権を野党に握られつつある
飯田)もともと安倍政権の時代でしたか、森山さんが国対委員長を務め、カウンターパートが安住さんで、ここが国会を回していましたものね。
須田)そう考えると、今回の臨時国会は、どうも与党・自民党が劣勢に立たされているのではないでしょうか。政権側が野党に譲らざるを得ないケースが多々出てくると思いますね。
国対政治がまた戻ってきた
飯田)その辺りは、支持率低迷も関係するのでしょうか?
野村)また国対政治が戻ってきた感じがあります。本当は政策を前面に出し、「きちんと政策論議を行う」ということを打ち出していけば、国民の関心がそちらへ向くので支持率は上がっていくのです。しかし、また国対で調整していく流れになると、「これが政治かよ」とげんなりしてしまいますね。
飯田)政治改革が叫ばれた90年代に「これをやめよう」とされたのが国対政治ですからね。
野村)そうです。党首同士で、ガチンコで政策論議するのを国民に見てもらうとか……。
飯田)党首討論ですね。
野村)政策論議を行い、アイデアもたくさん出てこなければいけません。このような日程調整をしているのでは、もう終わりですよね。
臨時国会のテーマは経済対策に ~野党が求めてくる減税に対して代替案として何を出せるのか
飯田)党首討論をしなくなりましたよね。
須田)政策論争を行うべきなのですが、次の臨時国会の最大のテーマは、経済対策、景気対策です。加えて、そのなかに減税が盛り込まれてくるのかどうか……。
飯田)減税が。
須田)共産党も含めて、野党がいっせいに減税を求めてきます。それに対して与党は、減税を行いたくないのだけれど、代替案として何を出してくるのか……。それが決まっていないから政策論争ができないのです。
野村)減税については、花火は上がったではないですか。与党内からも「所得税を減税できるのではないか」という声があるわけです。しかも、税収に関しては自然増があり、収益が上がっています。
飯田)増収した。
野村)また円安で、例えば外為特会などが積み上がっているため、それらを利用するような方策を「バン」と打ち出せるかどうかがポイントだったのです。
「補正予算の規模がどの程度になるのか」が重要 ~そのなかで減税するのかしないのか
飯田)補正予算が臨時国会の焦点となってきますが、本当に岸田さんは減税するのでしょうか?
須田)減税は方法論なのです。基本的に何が大事なのかと言うと、いま、マクロ的に「日本経済の状況をどう見ているのか」ということです。内閣府によると、4~6月期の需要と供給のギャップは、需要不足が解消されてプラス0.4%になったと発表されています。
飯田)そうですね。
須田)政府はことさら「平時になった」と言うのですが、はたして「本当に平時なのか?」ということです。これを失業率の兼ね合いで計算すると、潜在的な供給能力はまだまだあり、実は需給ギャップは15~20兆円あるのではないかと。
飯田)マイナスが。
須田)そういった動きを受けて、自民党の積極財政派は「真水で20兆円の財政出動を」と求めているわけです。それに対して「規模ありきだ」という批判が財政再建派から出ている。まず、「補正予算の規模がどの程度になるのか」が大事です。そのなかで減税するのかしないのかを見ていただきたいですね。
国民に対して大きな政策を打ち、それに対しての信を問う ~その1つが減税
飯田)首相動静を見ると昨日(16日)、総理は木場のイトーヨーカドーへ行き、「物価はこんなに上がっているんだ」と、「いまさら?」というようなことをしていましたが……。
野村)インターネット上ではみんなに言われています。「いま気付いたのか」という感じですので、逆効果の部分がありますね。物価高に対して対策を打っているわけですから、いま物価高の状況を見に行くのは、後手に回っている印象を受けます。
飯田)そうですよね。
野村)そして、やはり減税の話は解散とリンクしているのです。「減税解散」になるのかどうかという問題もあります。このタイミングで解散を打つとすれば、国民に対して何か大きな政策を出し、それに対して信を問う。そんな大義が必要になると思います。
飯田)そうですね。
野村)その1つが減税なのです。須田さんがおっしゃったように、どういう方法論で減税に持っていくかを詰めないといけないのですが、財務省の影があるので非常に難しい。
国民にとって大事なのは消費税減税と所得税減税 ~税金を納付していない世帯には給付
飯田)自民党内の議論が少しずつ報じられています。それによると、所得減税ではなく法人減税、あるいは所得を一定程度に区切った上で、給付金を限定的に出すのではないかという話が出ています。
須田)結論ありきなのです。「いくら使えるのか」というところから逆算してしまっているので、そういう発想になる。いま「国民生活にとって何が大事なのか」をきちんと見極めれば、トップ・プライオリティは消費税減税、そして所得税減税になると思います。
飯田)消費税減税と所得税減税に。
須田)もちろん所得税減税の場合、税金を納付していない世帯もあるので、給付という形になるでしょう。そこで初めて出てくるのですが、考え方が逆転しているのです。
減税解散につながる可能性もある
野村)よく財務省などは「1度減税してしまうと、消費税のようなものは2度と上げられない」という話をしますが、時限的に行うという法律のつくり方もあるわけです。「1回減税してしまったら、国民は上げることに反対する」などと言うのは、「減税したくない派」の人たちから強く出てきている、つくられたロジックではないかと思います。
飯田)減税したくない派の。
野村)経済が回復してきているので、自然増収は大きいわけです。その部分を国民にきちんと知らせる。財政がある程度、健全化する方向にあり、いま生活に困っている状況があるわけですから、「消費税を減税します」と打ち出せれば1つの大義となり、「それを問う解散」にもつながる可能性があると思います。
減税しなければ、選挙も、解散もできないことになる
飯田)「代表なくして課税なし」という言葉もある通り、税の話は選挙に直結するところもありますか?
須田)ただ、選挙期日をいつにするのか。例えば、10月22日の補欠選挙ですが、私は16日に四国で取材してきました。やはり四国は徳島・高知ですが、相当、自民党が厳しそうなのです。
飯田)参院補選、高知・徳島(合区)には、無所属の野党系候補として広田一さん、自民党からは西内健さんのお二方が立候補しています。
須田)長崎4区は衆院補欠選挙です。ここが1勝1敗だったら選挙に踏み切ってもいいかなと思いますが、2敗になると少し厳しい状況ですね。そういった意味では、先般の東京・立川の都議補選で自民党が負けたダメージが大きいのです。
飯田)都民ファーストが勝ちましたね。
須田)ここへきての支持率低下を考えると、いま選挙を打ってもどうなのかという状況ではあります。でも、ここは踏み込んで減税をきちんと打ち出せば、十分、勝機はあるのです。減税しないとなると、選挙も、解散もできない状態になると思います。
飯田)長崎4区の補選は、立憲民主党から末次精一さん、自民党からは金子容三さんが出ており、一騎打ちの形です。
年を越してしまったら解散を打つタイミングを失ってしまう ~解散しないまま自民党総裁選を迎えることに
野村)解散の話が出ていますが、もし年をまたいでしまったら、打つタイミングがないと思います。
飯田)1月から通常国会が開かれますが、そこでは翌年度の予算を考えなくてはいけませんからね。予算が決まった4月以降となると、総裁選も近い時期です。
野村)さまざまな政策を打つときは、どうしても財源問題が出てくるわけです。そこで議論が出尽くしてしまう状況のなかで、国民に信を問うものが出てくるのかどうか。
飯田)しかも来年度予算となると、防衛費の増額に対して、「これを増税で議論するのか?」という話になりますよね。
野村)その財源もきちんと決めておかないと、国会を乗り越えられません。「解散できないまま総裁選になるのか」と考えると、やはり岸田さんのリーダーシップに対する議論が出てきてしまう可能性があります。
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