円安・物価高の一因「異次元緩和」の後処理策「資産課税くらいやらないと」 石川和男が指摘
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年7月7日 9時0分
政策アナリストの石川和男が7月7日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送Podcast番組「石川和男のポリシーリテラシー」に出演。止まらない円安と物価高の一因と指摘される「異次元の金融緩和」について導入された背景から振り返り、今後の金融政策のあり方まで、朝日新聞編集委員の原真人氏と議論した。
7月に入り、円相場は一時約38年ぶりとなる1ドル162円台に迫る安値を連日で更新。賃金の上昇が輸入価格の押し上げによる物価高に追いつかず、実質賃金マイナスの状態が続いている。その円安の一因と指摘されるのが、日米の金利差だ。先進国の中でいまだ異常な日本の低金利は、2013年の「異次元の金融緩和」に始まる。日銀は、今年3月のマイナス金利解除に続く金融政策変更のタイミングを慎重に模索しており、7月末の金融政策決定会合で追加利上げに踏み切るかが焦点となっている。
番組にゲスト出演した朝日新聞編集委員の原真人氏は、「異次元緩和」が導入された経緯について「アベノミクス最大のエンジンとして始まった。リフレ政策という、お金を世の中にたくさんバラまけば、物価が上がって自動的に景気が良くなるという、簡単に言ってしまえばそういう思想を信じた安倍さんが、同じくそれを信じた黒田東彦さんという元財務官僚を日銀総裁に送り込んで、嫌がる日銀に強引にやらせた政策」と解説。「その時のお題目は、2年以内に2%の物価目標を達成しますというものだった。そうすれば、お金がたくさん循環して景気が良くなるだろうということだった。ところが2年経っても物価はまったく上がらず、3年経っても4年経っても上がらず、結局10年間の黒田総裁時代の日銀はまったく物価目標を達成できなかった」と振り返った。
そして、「異次元緩和」をやめられなかった理由について「一つは『アベノミクス』の呪縛があると思う。安倍さんがご存命の頃、安倍政権の時は当然ながら、政権が終わった後も、安倍さんは自民党や政界にものすごく影響力があった。その圧力のもとに日銀も存在していたので、日銀はそこから逃れられなかったという側面はある。政治的な理由から『アベノミクス』に基づいた異次元緩和を簡単にやめられなかった」と分析。続けて「もう一つは、日銀自身が過去に金融引き締めをして世間から批判を浴び、政権から圧迫を受けたことがあったトラウマから、引き締めに対して非常に憶病になっている。だから決断できなくて、ずっとここまでズルズルきている」とも指摘した。
そのうえで、「異次元緩和」が必要だったのかについて「私は必要なかったと思う。おおいなる社会実験だったと思う。百歩譲って、やったとしても初めに約束した2年間限定でやって、その後修正したのであれば容認できたが、11年間やめられなくなったというところが失敗だった」と述べた。
さらに「日銀が無責任になったせいで、政治も無責任になった。日銀が国債を全部買ってくれるので、いくら政府が借金をしてもちゃんと予算が組めるという状況になってしまった。その結果、とんでもない赤字財政なのに、それを解消しようという政治家が数える程しかいなくなってしまい、大多数は借金すればいいじゃないかという政治家ばっかりになった。その結果、国政選挙のたびに全野党が消費税の廃止か引き下げを公約に掲げている。GDP比の政府債務が世界で下から2番目なのに、本当に無責任な話だ」と批判した。
石川は「選挙を通じて国民が政治を選ぶ。その選挙で選ばれた国会議員たちのマジョリティの政権与党が日銀の人事を決めている。結局、民主主義なので我々自身がどこかで責任を取らなければいけない。日銀の異次元緩和の後処理は、人口減・長寿化社会の中で何らかの落とし前をつけていかなければならない。そのための新たな経済構造を作らなければいけない」と指摘。その一例として「貯金を吐き出させる。その代わり、あなたは破産しない、年金は絶対に保障すると。簡単にいうと資産課税。そのくらいやらないと出てこない」と持論を述べた。
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