[社説]強制不妊報告書 真の救済へ政治が動け
沖縄タイムス+プラス / 2023年6月20日 5時0分
千ページ以上にわたる記述からは、法による人権侵害の深刻さと影響の大きさがうかがえる。
旧優生保護法の下で障がい者らが不妊手術を強制された問題で、衆参両院がまとめた報告書の全文が公開された。
旧法下の不妊手術は約2万5千件で、女性が75%を占めている。「本人同意なし」の手術は全体の65%に上った。
都道府県別で最も多かったのは北海道の3224件で、宮城県1744件、大阪府1249件の順。沖縄県は復帰の1972年5月以降で18件だった。
国や自治体、医療機関、福祉施設に保管されていた記録などからは、非人道的な手術が浮き彫りになった。
手術を受けた年齢は男女ともに30~34歳の割合が最も高かったが、20歳未満も一定数いた。当時9歳の男女2人の記録もあり、未成年にも手術を強制していた可能性がある。
旧厚生省は手術の目的を伝える際、うそも許されると通知しており、資料には「盲腸手術の時に本人に分からないうちにした」などの事例もあった。
一方、旧法下でも禁じられていた子宮・睾丸(こうがん)摘出や放射線照射などが横行していたことも確認された。
浮かび上がる被害の実態は、国策によってもたらされた「戦後最悪の人権侵害」そのものである。「優生思想」の法制化が社会に差別を根付かせたことを考えると、その責任は重い。
■ ■
旧法は48年、議員立法により全会一致で成立した。「不良な子孫の出生を防止する」目的で、遺伝性疾患や、遺伝性でない精神疾患、知的障がい者への不妊手術を認めていた。
だが、障がい者団体からは、生理の手間を省くために子宮摘出が勧奨されていたとの回答もあった。国立ハンセン病療養所では結婚の条件として手術が行われており、人権無視の手術が際限なく広がっていたことが分かる。
旧法は96年に不妊手術などの規定が削除され「母体保護法」に改められた。2019年には、被害者に一律320万円の一時金を支給する救済法が議員立法で成立した。
しかし、今年5月末現在の支給認定は1049人にとどまり、救済が行き渡っているとは言い難い。
報告書は救済法の前文に触れる形で「我々は、真摯(しんし)に反省し、心から深くおわびするものである」と記載したが、責任の所在はあいまいで検証は不十分だ。
■ ■
旧法下で不妊手術を強いられた人たちが国に損害賠償を求める裁判が相次いでいる。
そのうち国に賠償を命じた判決は地裁3件、高裁では4件を数えた。賠償額は1人1500万円前後で、一時金とは大きな開きがある。
被害者の多くは70~80代になった。「生きているうちに解決を」と望む声を、政府も真摯に受け止める必要がある。
報告書を基に一人でも多くの被害者に真の救済と補償を届けるべきだ。
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