ボブ・ディランのロックが開花した『BRINGING IT ALL BACK HOME』

okmusic UP's / 2014年3月7日 18時0分

BRINGING IT ALL BACK HOME - ジャケット画像 (okmusic UP's)

 祝ボブ・ディラン来日記念!  今回はディラン流ロックが高らかに宣言された代表作『BRINGING IT ALL BACK HOME』('65)を紹介! フォークのみならずロックを変え、J-POPへも影響を与えた名盤です。ライヴに行く人はもちろん、行かない人もこれだけは聴いておきたい。

■今も革新性が失われていない傑作

 これまで皆無に等しかったリズム・セクションにエレキギターが騒々しくイントロを奏で、猛烈な勢いで脈絡のない、細切れの単語をまくしたてるディラン。「SUBTERRANEAN HOMESICK BLUES」。デビュー以来、発表されるアルバムを順番に買ってきたファンは、飛び出してきたこの音に戸惑ったことだろう。ウディ・ガスリーやデイブ・ヴァン・ロンクを慕い、まだ初々しさを残した青年然とした彼がプロテストソングを歌い、「風に吹かれて」や「激しい雨が降る」、「時代は変わる」…と、たて続けにヒット作を世に送る姿は、まさに彼らにとってのフォークの旗手だったのだから。
 “これは自分たちの好きだったフォークなのか? もしかしてロック? だとしたら、こんなの糞だぜ”と、一部、このディランの変化を裏切りなどと評する向きもあったようだ。アルバムのリリースと前後して行なわれた英国ツアーでは無理解な観客から露骨に“ユダ(裏切りもの)”と野次られたり、有名な『ニューポート・フォーク・フェスティバル』ではエレキ演奏で物議を醸したりと、あれこれ叩かれたことが今でも派手に語られる。それぞれの事件の生々しいシーンは今では映像作品(DVD)として、『ノー・ディレクション・ホーム』('06)、『ニューポート・フォーク・フェスティバル 1963~1965』('07)で観ることもできるので、ご覧になるといいだろう。
 と、それだけ見ていると、大方のファンがディランのロック化を否定したかと思いきや、実際にはこのアルバムはビルボード・トップLPチャートで最高6位、全英アルバムチャートで1位、ディランのアルバムとしては初めてトップ10入り果たすという、かつてないほどに大衆に支持されたアルバムだったのだ。ディラン自身、この結果には内心“ざまあみろ”的な気分だったのではないか。

■“フォークロック”と呼ばれたけれど

 アルバムを聴きながら思うのは、昔も、そして今もなおよく言われる、これが“フォークロック”の誕生とする論調についてである。個人的にはこうした、フォークともロックともつかぬ曖昧な表現を良いと思わないし、そうしたカテゴリーなどないと思うのだ。でも、もしかしたら主に日本で使われている表現なのかもしれない。実は、私は一時、米国のNY州ウッドストックに3年ほど住んでいたことがあるのだが、米国人の口からディランの諸作やたとえばザ・バーズの初期の音楽を指して“フォークロック”という言い方をしているのを聞いたことがないのだ。では、なんという言い方をしていたかというと、雑談の中での会話ではあるのだが、これが一様に“ロック”だったと記憶している。
 ラウドなサウンドに対してそう言っているのではない。やはりアルバムを統一する内容を指しての“ロック”なのであり、クール、ヒップなところ、ということになるのだろうか。彼らに言わせればアコースティック・ギターを主体に演奏していても、CSN&Yやジェイムス・テイラーの初期の作品はロックなのであり、とても私的な詞やバラッドを歌うロン・セクスミスの音楽は“フォークだよ”と言っていたのが印象に残っている。

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