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フォークからロックへと転身を遂げたボブ・ディランの歴史的傑作『追憶のハイウェイ61』

OKMusic / 2021年2月19日 18時0分

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(okmusic UP's)

アメリカでは公民権運動やベトナム戦争の激化と呼応するかのように、60年代前半は政治的なスタンスを持つプロテストフォークに大きな注目が集まっていた。ボブ・ディランの代表曲のひとつである「風に吹かれて(原題:Blowin’ In The Wind)」(’63)は、抽象的で文学的な歌詞と語りかけるようなヴォーカルで、フォークの可能性を広げることになった。63年7月に出演した『ニューポート・フォーク・フェスティバル』では大喝采で迎えられるなど、新時代のフォークシンガーとして頂点に立つのだが、同時期にビートルズをはじめとしたイギリスのロックグループと接することで、生ギター1本での活動に限界を感じ、徐々にロック的な表現に傾倒するようになる。ディランの6枚目のアルバムとなる本作『追憶のハイウェイ61(原題:Highway 61 Revisited)』(’65)は、フォークのエッセンスとロックサウンドが巧みに融合されたそれまでにない新しいスタイルを持っており、その後のロックの進化に大きな影響を与えることになる。

■フォーク時代のディラン

庶民の視点で政治的な歌を歌うウディ・ガスリーに影響を受けたディランは、60年代初頭からグリニッチ・ビレッジでフォークシンガーとして活動する。彼のソングライターとしての才能は、2ndアルバムの『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』(’63)の頃にはすでに開花しており、「風に吹かれて」「激しい雨が降る」「くよくよするなよ(原題:Don’t Think Twice It’s All Right)」など、名曲が目白押しである。

5thアルバムの『ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム』(’65)は初めてスタジオミュージシャンをバックに付けたアルバムで、フォークとロックを融合させるディランにとっての最初の実験となったが、それがひとつの引き金となったのか、彼の創作欲はここから旺盛になっていく。

■ロックへの転向と それに伴う歌詞の内省化

65年の7月、『ニューポート・フォーク・フェスティバル』にポール・バタフィールド・ブルース・バンドを引き連れて現れたディランはロックを演奏し、大ブーイングを浴びる。これはかつてフォークとロックが水と油のような関係であったことを証明する事件だろう。当時、フォークソング愛好者が中流階級以上であったのに対して、ロックンロール好きは労働者階級が多かった。その構図は日本でも同じで、アイビーファッションに身を包んだ大学生中心のフォークシンガーと、リーゼントで決めたヤンキー中心のロックンローラーみたいな感じである。

ディランはウディ・ガスリーのような本物の庶民派シンガーを目指しており、そうであるならロックでなければ自分を表現できないと思ったのかもしれない。この頃、ディランはフォークとロックを融合させるべく、コアなフォークファンからは商業主義に迎合したと揶揄されながらも、自分の思い描いた音楽を作り出そうと試行錯誤していたのである。

■本作『追憶のハイウェイ61』について

本作のレコーディングは『ニューポート・フォーク・フェス』前の6月と、後の8月に行なわれ、6月のセッションでは「ライク・ア・ローリング・ストーン」の録音に全精力が傾けられ、『ニューポート』に出演する直前にシングルリリースされている。6分以上の曲がシングルカットされること自体が前代未聞のことであったし、ディラン初のロックナンバーということもあり、当初レコード会社はシングルにするのをためらったのだが、9月にはビルボードチャートで全米2位、キャッシュボックスでは1位という輝かしい結果となった。この曲はディランの抽象的で文学的な歌詞がメロディーに溶け込み、アーシーな演奏とパワフルな展開が印象に残る傑作中の傑作であり、60年代のディラン最高の一曲として、現在でも愛され続けている。

本作のセッションにギタリストとして参加したアル・クーパーは、同じくギタリストとして参加したマイク・ブルームフィールドのプレイのすごさに尻込みし、急遽オルガンを弾くことになった。プロデューサーのトム・ウィルソンはアル・クーパーのオルガンを素人とみなし音をカットしようとしたのだが、ディランが残そうと強く主張したそうだ。確かにこのオルガンは素晴らしく、この演奏がなかったら、こんなにヒットしたかどうか分からない。「ライク・ア・ローリング・ストーン」はジミヘンやジョン・レノンら同時代の多くのアーティストだけでなく多くの悩める若者たちに驚きをもって迎えられ、ディランはロックの歌詞というものを根本から変革することになるのである。また、このセッションで出会ったマイク・ブルームフィールドとアル・クーパーのふたりは意気投合し『スーパー・セッション』(’68)や『フィルモアの奇跡(原題:The Live Adventures of Mike Bloomfield and Al Kooper)』(’69)といったロック史に残る名作をリリースする。

収録曲は全部で9曲。「ライク・ア・ローリング・ストーン」以外の曲も、詩的な歌詞に彩られた名曲揃いである。ブルームフィールドが参加しているだけにブルース色が少し濃い目だが、ポール・グリフィン(Key)、ハーヴェイ・ブルックス(Ba)、ボビー・グレッグ(Dr)、チャーリー・マッコイ(エリアコード615のメンバーで本職はマウスハープであるが、ここでは生ギターをプレイしている)らのツボを押さえたシンプルな演奏には無駄がなく、ディランの歌をしっかり引き立てている。

この頃のディランは冴えまくっている時期で、次作の『ブロンド・オブ・ブロンド』(’66)は、ロック界初の2枚組ということで話題になったが、完成度は非常に高く、こちらはシンガーソングライター作品のはしりともいうべき傑作である。そしてこの後、オートバイ事故を起こし、しばらくウッドストックで隠遁生活を送ることになるのである。それ以降の活動については、また別の機会に述べたい。

TEXT:河崎直人

アルバム『Highway 61 Revisited』

1965年発表作品



<収録曲>
1. ライク・ア・ローリング・ストーン/Like a Rolling Stone
2. トゥームストーン・ブルース/Tombstone Blues
3. 悲しみは果てしなく/It Takes a Lot to Laugh, It Takes a Train To Cry
4. ビュイック6型の想い出/From a Buick 6
5. やせっぽちのバラッド/Ballad of a Thin Man
6. クイーン・ジェーン/Queen Jane Approximately
7. 追憶のハイウェイ61/Highway 61 Revisited
8. 親指トムのブルースのように/Just Like Tom Thumb's Blues
9. 廃墟の街/Desolation Row



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