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ラグビーワールドカップ開催に向けてファンと猫好きがスクラムを組む!

おたくま経済新聞 / 2019年2月13日 11時0分

ラグビーワールドカップ開催に向けてファンと猫好きがスクラムを組む!

画像提供:光文社

 新種のゆるキャラか? 神保町のS書店に平積みされている新刊の中に、ひと際目を惹くコミックが。描かれているのは、赤×白のストライプのシャツを着て仁王立ちする猫の姿。手にとってみると「ラガーにゃん」(800円+税/光文社刊)のタイトル。帯には「2019年、日本で開催! ラグビー ワールドカップを222(ニャー、ニャー、ニャー)倍楽しむ必読まんが」とある。そうか、猫が着ているのはラグビー日本代表のユニフォームなのか。

 描き手は「猫ピッチャー」でおなじみの“猫まんが界の巨匠”そにしけんじ氏。どのページにも、ラガーシャツを着た猫たちがわしゃわしゃいてニンマリ。ニャーニャー、けりけり、ぴよ~ん、といった猫ならではの擬音の文字もジワジワくる。その一方で内容は、ラグビーに真面目に挑戦する猫たちの姿を通して、ラグビーの基礎知識が身につくラグビー入門書になっているのがスゴい。
 
 この「ラガーにゃん」、2017年6月から週刊誌「女性自身」で連載中のコミックで、それを1冊にまとめたのが、この単行本。しかし、ラグビーのコミックを女性週刊誌で連載というのが意外。そこで、担当編集の吉田健一さんに「ラガーにゃん」誕生のきっかけについてうかがってみた。

「話は2015年12月に刊行した猫好きのための特別ムック「ねこ自身」にまでさかのぼります。そのムックに、猫好きさんから絶大な支持を集める、そにしけんじ先生にどうしても読み切りを描いていただきたいと思い、ダメモトで執筆をお願いしました。
ありがたいことに先生からは、『“ねこの可愛さ”を取り上げるだけでなく、地域猫問題や殺処分問題など“不幸な猫のためにできること”に真剣に取り組んでいる「ねこ自身」のコンセプトに共感する。自分は高校、大学とラグビーをやってきて、2019年のラグビーワールドカップを盛り上げるために何かできないか、と思っていたところだったので、ラグビーを題材としたまんがなら描ける』という旨のお返事をいただくことができました。その読み切りが大変面白かったため、ぜひ続きを描いていただくべく、本誌である「女性自身」での連載をお願いし、2017年6月より連載を開始いたしました」 
 
 連載を始めるにあたっては、「女性自身」読者のようなラグビーにあまり興味のない人たちに、できるだけ楽しくその魅力を伝えたい、ということを、そにし先生と話し合ったと吉田さん。そのためにはわかりやすい解説を入れる必要がある。で、真っ先に浮かんだのが、元日本代表キャプテンの廣瀬俊朗さんだったという。廣瀬俊朗さんは選手としてのキャリアも抜群、加えて人格者であり、ラグビー界では知らない人はいない存在。かつ言葉に強い力を持つ廣瀬さんの分かりやすい解説は、ラグビーの知識の浅い読者の頭にもすんなりと入ってくる。

 その一方で、小学3年生から始めたラグビーに50年近くハマっているという生粋のラグビーファンからのこんな声も。

「見開きごとにラガー猫ちゃんのエピソードが完結するので、気軽にコミックを楽しみながらラグビーのルールや文化の解説が読める所がいいですね。でも、解説の見出しが猫の口調になっているので、読み終わった瞬間からずっと、僕の脳内では廣瀬さんの顔にネコヒゲがついてしまっている。やれやれ」

 これ、雑誌「MEN’S Precious」編集長でありつつ、日本ラグビーフットボール協会プロモーション委員長としても走り回っている酒井直人さんの感想。確かに、解説の見出しも「15人の選手がいる2チームが、ボールを奪い合うんだニャ」「楕円形のボールは豚のボウコウが起源らしいんだニャ」と、猫口調なので、猫好きに親近感がわく。

 書籍発売に合わせて「ラガーにゃん」の公式ツイッター(@ruggernyan)もスタート。フォロワーは、熱いラグビーファンから、「興味はあるけど今一つルールーがわからない」といったライト層まで幅広い。付けられたコメントを見ると、ラグビーファンは「ワールドカップイヤーを盛り上げたい」という思いを持っているようで、「2冊買って1冊を知り合いにプレゼントする」というラグビー層拡大派もいる。もちろん、猫の写真をアップして「うちのラガーにゃん」と愛猫自慢をする猫好き派、「ラガーにゃんを見て猫が飼いたくなった」なんていう隠れ猫好き派も多い。

 オリンピック/パラリンピック、サッカーワールドカップと並ぶ大規模のスポーツ大会、ラグビーワールドカップ。日本での開催はもちろん初めて。と言うか、アジア開催さえ初めて。札幌から九州まで全12の会場で48試合が行われる。日本代表は世界ランク11位(2月7日現在)だが、8強に入り、初の決勝トーナメントを狙っている、とは前出の日本ラグビーフットボール協会プロモーション委員長の酒井直人さんの弁。

 “ラガーにゃんチーム”の吉田さんも熱い思いを語る。
「そにし先生もそうですが、ラグビー経験者には「ラグビー界に恩返しを」と考えている方が多いようです。そんな方々の底力で、ワールドカップに向けて『ラガーにゃん』と共にラグビー熱も必ず盛り上がっていくと思います」

 先に開かれたサッカーアジアカップ2019や、大きな資本が動く2020年の東京オリンピック/パラリンピック開会の盛大な宣伝に比べ、ラグビーワールドカップの盛り上がりはラグビーファンの間に限定されがち、との声もないではない。しかし、ラガーにゃんの登場で、広い裾野を持つ愛猫家たちにまでラグビー熱が伝われば、話は変わってくる。

 “猫力”はとんでもニャいパワーを持っているので、あなどらニャいほうがいいかもしれませんね。

<画像提供>
光文社

(堀けいこ)

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