「血液のがん」白血病と、私たちにできること
おたくま経済新聞 / 2019年2月14日 12時25分
画像:写真ACより
先日、競泳選手の池江璃花子さんが自身のSNSで「白血病」である事を告白、連日大きく報道されています。俳優の渡辺謙さんも、白血病から復活した自身の経験から池江さんを応援するなど、数多くの人も応援する声を送っています。そんな中、私たちにできる事はどんな事があるでしょう?
■ 血液のがんとは
いまや全人口の二人に一人は何らかのがんにかかると言われています。その中でも臓器にできず、血液細胞ががん化するものが「血液のがん」と呼ばれています。白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫は「3大血液のがん」と呼ばれ、白血病は白血球ががん化する事でがん化した機能的に未熟な血液細胞が多くを占めるようになり、赤血球や血小板など必要な他の血液細胞が減少してしまいます。その為、内出血が起こりやすい、鼻血が出やすくなるなど粘膜からの出血が起きやすく止まりにくくなるなどの血小板の減少による症状が出現したり、赤血球が足りなくなる事で酸素供給が各臓器に追いつかなくなり、全身の倦怠感や貧血などが起こってしまいます。
この血液のがんに対する治療法は、手術という方法が取れないのでメインは抗がん剤治療となります。一昔前よりも抗がん剤の種類が増え、がん細胞に照準をあてて攻撃をする「分子標的薬」も出現し、治療成績も上がりつつあります。しかし、血液を造る「造血幹細胞」が弱ってしまうと、がんの種類によっては抗がん剤でフォローしきれない事も。
■ 造血幹細胞を直接移植が治療のカギ
一旦抗がん剤などで治まった血液のがんが再発すると、抗がん剤だけでは治療しきれなくなる事も多くなります。そこで、骨髄バンクに登録したドナーから提供を受けた造血幹細胞を患者の体内に送り込む、「造血幹細胞移植」という方法が取られる事があります。造血幹細胞移植は、通常の化学療法や免疫抑制療法だけでは治すことが難しい血液がんや免疫不全症などに対して、完治させることを目的として行う治療ですが、白血球の型を表すHLA(ヒト白血球抗原)が一致している必要があります。このHLAは様々な型があり、血縁者では一致する事も多くありますが、非血縁者では数百から数万分の1と極めて低くなります。
この低い一致率の中でも、あらかじめ健康な人のHLAを登録して、ドナーとなってもらえる人を募る為に骨髄バンクが作られました。骨髄バンクに登録した人の中から、HLAの型が一致した人が患者に提供するための骨髄の採取を行います。この骨髄に含まれる造血幹細胞が、血液のがんから救うカギとなるのです。
■ 骨髄バンクの登録とドナーについて
病気で弱っている人の体内に直接細胞を送り込む造血幹細胞移植は、当然の事ながら、健康で元気な細胞である事が望まれます。その為、過去にウイルス性肝炎、エイズ、梅毒、マラリアなどの感染症にかかった事がある人や、持病、特に気管支ぜんそく、肝臓病、腎臓病、糖尿病など、慢性疾患のある人、過去に輸血を受けた事がある、貧血がある、血液の病気がある人は登録できません。また、骨髄・末梢血幹細胞を提供できる年齢は20歳以上、55歳以下と年齢制限もあり、ドナーとなる人の体を守る為にも、他にも血圧に問題があったり、肥満傾向が強い人などは登録できません。
また、登録できてもドナーとして実際に骨髄や末梢血幹細胞を採取するのに2~4日間の入院が必要だったり、その前に健康診断を受けたりと、平日に時間を取られる事も多くあります。企業によってはボランティア休暇の制度などを使えるところもあるので、制度が使える健康な人は、ぜひ骨髄バンクに登録して欲しいと思います。
骨髄バンク・ ドナーのためのハンドブックより抜粋骨髄バンクに登録して、HLAの型が一致した患者さんがいると、ドナーに連絡が文書で通知されます。そして提供するとなれば、骨髄バンクのコーディネーターが患者さんとドナーの間に入って丁寧に説明したり、日取りを決めるなどしてくれます。
■ 骨髄バンクに登録できなくてもまだやれる事はあります
骨髄バンクの登録は、各都道府県にある献血ルームや保健所など、各所にある受付窓口で登録できますが、何らかの制限に引っかかってドナー登録ができない人でもやれる事はあります。献血もその一つ。献血には血液成分の全部を献血する「全血献血」と、赤血球以外の血液成分を献血する「成分献血」の2つの方法があります。200mlの全血献血は16歳から、400mlや成分献血はおおむね18歳以上69歳まで(但し男性の400mlは17歳から、女性の血小板成分献血は54歳まで)で、体重も規定以上あれば可能。ただし、服薬している薬によっては献血ができない事も。どの薬が大丈夫でどの薬がダメなのかは、献血ルームなどで聞くと教えてもらう事ができます。
これらの献血で得られた血液製剤は、血液のがんに使う以外にも、大量出血を伴うケガや病気、出血を多く伴う手術の際にも使われますし、他の病気で使われる事もあります。成分献血で得られた血液製剤は保存できる期間が非常に短いので、常に必要とされています。
しかし、骨髄バンクの登録も献血もできない、という人も中にはいるかと思います。そんな人は、ぜひ周りの人にこうした制度や事業がある事を周知してもらえると嬉しく思います。また、妊娠している人は、臍帯血を移植用に受け付けてくれる病医院もあるので、正常妊娠の人は健診の時などに医師に相談してみるのも良いかもしれません。臍帯血にも造血幹細胞が含まれており、移植に使えます。今後、妊娠する可能性のある人は頭の片隅にこういった情報も入れておくといいかもしれません。
有名人の病気が話題になると、何かと騒がしくなりますが、こういった機会から、正しい医療知識と自分にできる事を身に付け、考えてもらえる切っ掛けになってもらえると嬉しく思います。
<引用・参考>
日本骨髄バンク
日本赤十字社
国立がん研究センター がん情報サービス:造血幹細胞移植とは
他多数
(梓川みいな/正看護師)
外部リンク
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