史上初!カンタス航空ニューヨーク~シドニー19時間超の直行便を運航

おたくま経済新聞 / 2019年10月21日 18時0分

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ニューヨーク〜シドニー19時間のフライトを終えたパイロットら(Image:James.D Morgan/QANTAS)

 オーストラリアのカンタス航空は2019年10月20日(現地時間)、民間航空会社の旅客便史上初となるニューヨークからシドニーまでの直行便を、19時間16分かけて運航したと発表しました。これは、将来の超長距離路線運航におけるテストケースとして実施されたものです。

 ニューヨークのジョン・F・ケネディ空港から、オーストラリアのシドニーへ飛んだこのフライトは、カンタス航空7879便(QF7879)。ボーイング787-9(登録記号:VH-ZNI)「Kookaburra(ワライカワセミ)」号が使用されました。

 このフライトは、将来カンタス航空が計画しているアメリカやヨーロッパへの直行便において、超長時間フライトとなるパイロットなど運航乗務員や、乗客の疲労やストレスを実際に計測するために、シドニー大学チャールズ・パーキンス・センター(CPC)と共同で計画されたもの。

 計画は、カンタス航空が第二次大戦中に、オーストラリアからセイロン島のイギリス空軍基地まで、約6480kmをPBYカタリナ飛行艇で27~33時間かけて結んだ連絡便「ダブル・サンライズ(飛行中に日の出を2回見ることから)」にちなみ「プロジェクト・サンライズ」と名づけられました。

 アメリカやヨーロッパからオーストラリアへのフライトは、現在は乗り継ぎが必要。これが直行便になれば、ロンドン~シドニーでは最高4時間、ニューヨーク~シドニーでは最高3時間の短縮になります。

 このフライトに参加したのは、2組4名のパイロットと6名の客室乗務員。そしてカンタス航空をよく利用するフリークエントフライヤーの中から募集した6名の乗客、そしてシドニー大学チャールズ・パーキンス・センターの研究者にカンタス航空のアラン・ジョイスCEOら、乗員乗客合わせて49名が乗り込みました。


 パイロットや乗客など、被験者には脳波やメラトニン、意識の覚醒の具合をモニターするための機器を頭につけてもらい、フライト中の様子を逐次記録します。また、トイレに行った際には尿のサンプルも採取。どのような場面において疲れを感じやすいのか、また、ストレスを感じるのか、記録をもとにその原因と改善点を探るというわけです。



 今まで経験したことのないフライトに備え、乗務するパイロットは事前にシミュレータ訓練を受け、どのような状況になるかをあらかじめ学習しました。頭に計測器をつけることによる違和感にも、慣れておく必要があります。




 これと同時に、事前の研究で時差ぼけ(ジェットラグ)防止に効果があると考えられる客室内照明や、機内食のメニューも実際に乗客に提供され、その効果を確かめます。


 ニューヨークのジョン・F・ケネディ空港では、搭乗口に「カンタス航空7879便オーストラリア、シドニー行き:定刻」のサインが表示されました。一番下に小さく「飛行時間:19時間10分」と表示されているところに、このフライトの凄さが感じられます。

 乗務するパイロット2組4名のうち、責任者(PIC)を務めるのはショーン・ゴールディング機長。19時間以上にわたるフライト中、2組のペアが交代で操縦を担当します。

 ジョン・F・ケネディ空港を定刻の21時(アメリカ東部時間)に出発した「プロジェクト・サンライズ」の7879便。機内では、ずっとシートに座っていると脚に血栓ができてしまう「エコノミークラス症候群」を予防するため、ギャレーで体操する場面も。


 定刻より6分遅れのオーストラリア東部時間7時16分、ニューヨークから約1万6200kmを飛行した7879便のボーイング787-9は無事にシドニー国際空港へ着陸しました。



 到着後、姿を見せたパイロットら運航乗務員、カンタス航空のジョイスCEOは長旅の疲れも見せず笑顔。

 フライトを終えたジョイスCEOは「これは航空史における大きな一歩となりました。今回は確認としてのフライトでしたが、これが定期便化されれば地球の反対側へ、より時間をかけずに旅行が可能になります。超長距離フライトは大きなチャレンジでしたが、技術は日進月歩です。今回得られた成果は、より快適なフライトを実現するための大きな参考となります」とコメントしています。

 今回のフライトで実施した時差ぼけ対策の具体例として、ジョイスCEOは機内食の内容と客室照明の工夫に言及しました。

 「今回(ニューヨーク発21時)のような夜間の出発便の場合、通常は照明を落とした形で夕食から機内食を提供します。しかし今回は到着地シドニーの時間に合わせて、照明を明るくして昼食から機内食を始め、その後6時間は機内を明るいままに保ちました。機内の時点で到着地の時間に体内時計のサイクルを調節していこうという取り組みです」


 パイロットの責任者を務めたゴールディング機長は「フライトは非常にスムーズなものでした。夜の間は向かい風が続き、飛行には少々時間がかかりましたが、これは想定ずみです。この長いフライトの間、私たちは最適な飛行ルートをキープし、ベストなコンディションを保ち続けました。フライト中、様々な区域の航空管制官と交信したわけですが、彼らもこの独特なフライトに対し、非常に興味を抱いているようでしたよ。また、出発時のジョン・F・ケネディ空港、到着時のシドニー空港の管制塔からは、スペシャルなメッセージも送ってもらいました」と、フライトについて振り返っています。

 この「プロジェクト・サンライズ」は、今回のフライトだけでなく、全3回の調査フライトが設定されています。次は11月にロンドンからシドニー、そして12月には再びニューヨークからシドニーへのフライトが計画されています。

 カンタス航空では同時に、エアバスやボーイングとともに、この超長距離直行便に使用する機材についての研究も行っています。現在のところエアバスA350か、ボーイング777Xを使用することを考えているそうですが、機体の軽量化や燃料タンクの増設、多くの機内食を収納するためのギャレーなど、いくつかの改良も必要とのこと。定期便として実現したときには、どのようなものになるのか興味は尽きません。

<出典・引用>
カンタス航空 プレスリリース
Image:James.D Morgan/QANTAS

(咲村珠樹)

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