クルードラゴンが無事アメリカに帰還 次からは2回連続で日本人宇宙飛行士が搭乗予定

おたくま経済新聞 / 2020年8月4日 7時0分

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降下するクルードラゴンに向かう回収班(Image:NASA)

 民間会社の開発した宇宙船として初めて、国際宇宙ステーションに宇宙飛行士を送り届けた、スペースXのクルードラゴン「エンデバー」が2020年8月2日14時48分(現地時間)、フロリダ州ペンサコーラ沖のメキシコ湾に無事帰還しました。乗っていた宇宙飛行士2名の健康状態も良好で、ヘリコプターに乗りペンサコーラ海軍航空基地まで移動しています。

 国際宇宙ステーションへの往復を民間会社が開発・運用する宇宙船が担当する、というアメリカの「コマーシャル・クルー」計画。その第1陣として、スペースXのクルードラゴンがロバート(ボブ)・ベンケン宇宙飛行士とダグラス(ダグ)・ハーレイ宇宙飛行士を乗せ、2020年5月30日にフロリダ州のケネディ宇宙センターから打ち上げられました。

 およそ19時間後、クルードラゴンは国際宇宙ステーションの「ハーモニー」モジュールにドッキング。宇宙開発の歴史で初めて、民間の宇宙船に乗った宇宙飛行士が国際宇宙ステーションに到着しました。この際、搭乗するクルードラゴンは「エンデバー」と命名されました。



 国際宇宙ステーションに到着したベンケン、ハーレイ両宇宙飛行士は、現在滞在している第63次長期滞在(Expedition 63)クルーの任務をサポート。ベンケン宇宙飛行士は、同じNASAのクリス・キャシディ宇宙飛行士とともに船外活動を実施し、JAXAの「こうのとり」9号機(HTV-9)で運ばれた国際宇宙ステーションの電源となる日本製のリチウムイオン電池を設置しています。


 ハーレイ宇宙飛行士は科学実験のミッションをサポート。また、協力して補給船で送り込まれた新しい実験装置の設置作業なども担当しています。

 64日間のミッションを終え、ベンケン、ハーレイ両宇宙飛行士がクルードラゴン「エンデバー」に再び搭乗し、国際宇宙ステーションを離れたのは8月1日の19時35分(アメリカ東部標準時)。一度に噴射すると、反作用で国際宇宙ステーションの軌道にも影響を与えるので、2回と4回に分けてスラスタを噴射し、ゆっくりと離れていきました。

 一旦単独での地球周回軌道に入ったクルードラゴン「エンデバー」。軌道上で睡眠をとり、いよいよ減速して軌道高度を下げ、トランク(機械船)を切り離して大気圏再突入体勢に入ります。

 最終減速のためのスラスタ噴射を12分間実施し、大気圏への再突入態勢に入ったクルードラゴン。断熱圧縮によりプラズマ化した大気に電波が遮断される「ブラックアウト」の前に、スペースXのクルー・オペレーション・エンジニアのマイク・ハイマン氏は「噴射は大成功だ。宇宙船は非常にいい体勢で大気圏に突入できる」と無線で語りかけ、ハーレイ宇宙飛行士が「OK。ドラゴン了解。ありがとう」と答えてブラックアウトに入りました。

 通信が回復したクルードラゴンは、高度約5500mで最初のパラシュートを展開し、時速約560kmから約190kmまで減速。次いで高度約1800mで4つのメインパラシュートを開き、ゆっくりとした速度でフロリダ州ペンサコーラ沖のメキシコ湾に降下していきます。

 クルードラゴンが着水したのは、現地時間の14時48分。アメリカの宇宙船が海に帰還するのは、1975年のアポロ・ソユーズテスト計画でトーマス(トム)・スタッフォード宇宙飛行士、ヴァンス・ブランド宇宙飛行士、ドナルド(ディーク)・スレイトン宇宙飛行士の3名が搭乗したアポロ宇宙船(CSM-111)が、7月24日にハワイ沖の太平洋に着水して以来、実に45年ぶりのことでした。

 海域で待機していた回収船「ゴー・ナビゲーター(GO Navigator)」からボートが出され、着水したクルードラゴンに接近します。

 宇宙飛行士が乗ったまま、回収船に引き上げられたクルードラゴン。スラスターに使用している有害な燃料(モノメチルヒドラジン)がハッチ付近に付着していたため、そのクリーニング作業を終えたのちにハッチが開けられました。2名の宇宙飛行士の状態は良好。


 ヘリコプターに乗り、ペンサコーラ海軍航空基地へ到着したベンケン、ハーレイ両宇宙飛行士は、出迎えに手を挙げて応える余裕も。約2か月もの間、無重量状態にいたとは思えない様子です。



 NASAのブライデンスタイン長官は「おかえり、ボブ、ダグ!そして、この試験飛行を成功させるため尽力してきたNASAとスペースXのチームを祝福します。これはかつて、不可能だと思われていたことを可能にするため、一緒に取り組んできた成果にほかなりません。パートナー企業は、私たちがこれまでよりも遠く、月や火星へ向かう大きなミッションに進む次のステップへの鍵となります」と、NASAとスペースXのチームワークをたたえました。

 スペースXのグウィン・ショットウェル社長は「すべてのスペースX従業員を代表して、NASAのボブ・ベンケン宇宙飛行士、ダグ・ハーレイ宇宙飛行士によって、アメリカが有人宇宙飛行に復帰する機会を与えてくださったNASAに感謝します。ボブとダグが安全に帰還できて、これほど誇りに思うことはありません。私たちはこのミッションをはじめ、人々を低地球周回軌道(LEO)へ定期的に、そしてさらに月や火星へ送る道のりを歩み始めることに意欲的に取り組んできた、すべての人々に感謝します。今回の旅を楽しんでくれたのではないかと思っています!」と、今回の感慨を語っています。

 今回の有人試験飛行「デモ1」ミッションについては、これから6週間かけてデータを分析し、全体についての評価がなされることになっています。問題のないことが証明された場合、次は9月にも実際に国際宇宙ステーション長期滞在クルーが搭乗する「クルー1」ミッションが実施される予定です。

 4名が搭乗する「クルー1」ミッションには、JAXAの野口聡一宇宙飛行士がミッションスペシャリストとして搭乗予定。さらに2021年春に予定されている、クルードラゴン2回目の「クルー2」ミッションには、JAXAの星出彰彦宇宙飛行士が搭乗します。星出宇宙飛行士は第65次長期滞在ミッションで、第39次長期滞在(2014年)の若田光一宇宙飛行士に続き、日本人2人目の国際宇宙ステーション・コマンダーを務める予定です。

<出典・引用>
NASA プレスリリース
Image:NASA/SpaceX

(咲村珠樹)

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