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追悼・小松政夫「ナショナル劇場」時代劇作品での同心役を振り返る

おたくま経済新聞 / 2020年12月30日 15時0分

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画像は小松政夫さん公式HPより。

 俳優の小松政夫さんがお亡くなりになりました。幅広い分野で活躍された小松政夫さんですが、筆者が個人的に印象深いのは、ナショナル劇場の各作品における同心役です。本稿では、バラエティ番組における印象的なギャグではなく、時代劇作品での喜劇に根差した小松さんの芝居について、言及していきます。

 本稿で触れる「ナショナル劇場」とは、1956年~2008年の期間、TBS系毎週月曜20時より放送されていた、松下電器(現:パナソニック)グループ1社提供のドラマ枠を総称したものです。特に1969年~2001年9月の期間は「水戸黄門」「大岡越前」の2大タイトルを中心に、時代劇作品が連続して放送されてきました。

 小松さんは、これら「ナショナル劇場」時代劇作品において、以下のドラマ・役名で同心のキャラクターを演じてきました。

「大岡越前」12部~15部(1998年8月~1999年3月):同心・赤垣伝兵衛

「江戸を斬る」VII~VIII(里見浩太朗さん主演版):同心・色川伝兵衛

「翔んでる!平賀源内」(1989年5月~9月):同心・赤垣平助

 これらの作品での役どころは「大岡越前」12部(1991年10月~1992年3月)、「江戸を斬る」VII(1987年1月~8月)とVIII(1994年1月~8月)、「翔んでる!平賀源内」(1989年5月~9月)で演じた同心は、早とちりして無実の人間を冤罪で逮捕する、という迷惑な同心という感じ。

 その中でも「大岡越前」12部での赤垣伝兵衛は、主人公の大岡越前(加藤剛さん)が南町奉行であるのに対し北町奉行所の同心、また「江戸を斬る」VII・VIIIでの色川伝兵衛は、主人公の遠山金四郎(里見浩太朗さん)が北町奉行であるのに対し南町奉行所の同心……と、小松さんは主人公のライバル奉行所(史実での北町奉行所と南町奉行所は「月番」という制度で交代しながら職務を担当しており、同時に活動することはなくライバル関係ではありません。以下の記述も全てドラマの中の話です)の同心役でした。

 上記の同心は、はた迷惑なキャラクターではありましたが、そこは小松さんの喜劇役者としての腕の見せ所でして、単なる迷惑な同心ではありません。

 例えば「江戸を斬るVIII」では、南町奉行所(小松さん側)はいつも遠山金四郎の北町奉行所に手柄を奪われているにも拘らず、色川伝兵衛は上司である南町奉行・鳥居甲斐守耀蔵(名和宏さん)に自慢げに成果を報告するんですね。しかし実際には北町奉行所に手柄を奪われている、ということを知っている鳥居は激怒し、色川をお仕置きするのですが、その様子がコントのようで愉快でした。この辺りも小松さんの喜劇役者としての面目躍如といえるでしょう。

 さて「大岡越前」では、1992年11月~1993年5月に放送された13部で、赤垣伝兵衛は北町奉行所から南町奉行所に移籍し、主人公・大岡越前の部下になります。

 南町奉行所の同心には、それまでベテラン同心・佐橋孫兵衛役で佐野浅夫さんが出演していました。しかし、佐野さんが同じナショナル劇場の「水戸黄門」に於いて、1993年放送の第22部より三代目水戸黄門に就任し、そちらに集中する関係で「大岡越前」の同心役を降板すると、赤垣伝兵衛が南町奉行所のベテラン同心のポジションとなりました。

 北町奉行所時代、あれだけ迷惑な同心だった赤垣ですが、南町奉行所にくると、配役の関係で佐野さん演じる佐橋孫兵衛のポジションに入ることになり、頼りになる同心に変身。まるで別人のような活躍を見せています。

 しかし作品をよく見ると、北町奉行所時代の赤垣と南町奉行所時代の赤垣は決して別人のような人物像ではありません。北町奉行所時代の赤垣は、ちょくちょく居酒屋で大岡越前と同席していました。

 この時、赤垣は大岡越前が南町奉行であることを知らず、浪人だと思い込んでいたのですが、事件の捜査情報を大岡越前に喋り、大岡越前はその情報を活かして事件を解決に導いていました(捜査情報を部外者にベラベラ喋ってよいのかという問題はありますが)。即ち赤垣は北町奉行所所属の時点で、確かに冤罪で無実の人を逮捕するという迷惑な同心であった一方、有能な面もあり、大岡越前は赤垣の有能な面を見抜いていたのでしょう。

 また赤垣は南町奉行所に移ってからも、北町奉行所時代の失敗を回想するシーンがありました。即ち、現在はベテラン同心として頼りになる存在ではあるが、過去には失敗も経験しており、その失敗を教訓としているからこそ、若手の同心を温かく見守る役割が果たせた、というキャラクター像となっているのです。

 以上を纏めると、ナショナル劇場での時代劇作品で同心役を演じられた小松政夫さんは、喜劇役者としてコントのような愉快な場面を演じつつも、一方で過去の失敗を教訓にして若手を率いるベテラン同心の姿も演じており、1人の同心が実在するかのように、同心の人生を演じられた、というのが本稿の結論であります。小松政夫さんに謹んで哀悼の意を表します。合掌。

※画像は小松政夫さん公式HPのスクリーンショットです。

(コートク)

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