「問題の本質は原発事故にあることを忘れてはいけない」識者コメントと共に省みる『美味しんぼ』騒動

おたぽる / 2014年5月19日 23時59分

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「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載のグルメマンガ『美味しんぼ』(共に小学館)の鼻血描写をめぐって"風評被害を助長する"と炎上した騒動は、今なお続いている。そんな中、本日5月19日に「スピリッツ」最新号となる第25号が発売された。ここには"福島の真実"編クライマックスとなるエピソードが掲載され、また、『美味しんぼ』騒動をめぐる識者のコメントを集めた10ページにわたる特集記事が組まれた。

 「スピリッツ」本誌を購入していない人でも、公式サイトから特集記事(http://spi-net.jp/spi20140519/index.html)を読むことができる。今回はその内容も踏まえ、評価できる点、なお残る問題、そして"『美味しんぼ』騒動がもたらしたもの"について考えてみたい。

 まず『美味しんぼ』本編だが、締めくくりとなる今週号の第604話「福島の真実-24」に物議をかもすような描写、セリフは見られない。山岡(本作の主人公)や海原雄山(山岡の父親)たちが北海道へ渡り、福島県の飯舘村から移住した酪農家・菅野義樹氏と話をしたり、再び福島に戻って会津藩のもてなし料理に舌鼓を打ったりしながら、これまでの全編を総括するエピソードだ。

 海原雄山が「千差万別の事情で福島を離れられない人も大勢いる」と被災者の境遇に配慮したセリフを発するなど、受ける印象は前号・前々号の過激さとは対照的である。鼻血シーンのせいで極端な部分がクローズアップされがちだが、"福島の真実"編の前半にあたる単行本110巻では、山岡たちが被災地の農産物が受けている風評被害に憤るシーンなどが収録され、とりたてて物議をかもす展開はなかった。ラストとなる25号掲載分ではその流れを引き継ぎ、また山岡が海原雄山を「父さん」と呼んで自然に会話するなど『美味しんぼ』オールドファンを歓喜させるシーンも用意されている。

 次に、小学館公式サイトと「スピリッツ」本誌に掲載された特集記事(http://spi-net.jp/spi20140519/index.html)を見てみよう。医師、研究者、自治体、ジャーナリストなど16もの異なる立場から『美味しんぼ』の描写に対するコメントが寄せられ、最後に編集部の見解として「スピリッツ」編集長・村山広氏の書いた文章がある。

 批判・抗議の論点としては、『美味しんぼ』各話(とりわけ鼻血描写のあった22・23合併号以降)の各シーンについて、学術面での誤りや印象操作と思われる演出手法、被災者心理への配慮を欠いた点などを具体的に指摘している。たとえば放射線による"フリーラジカルの作用"が鼻血の原因と誤解させるような描写や、「大阪で受け入れた震災がれきを処理する施設近くの住民が鼻血などの異状を訴えている」といった描写への反論だ。そもそも震災がれきの広域処理は岩手県と宮城県が対象なのに、福島県の震災がれきかのように読者を錯覚させたことについては、野口邦和氏(日本大学歯学部准教授)が鋭く批判している。

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