バイオレンスにブラックギャグ、メタフィクション 水島努が押し広げた劇場版『クレヨンしんちゃん』の可能性【水島努編】

おたぽる / 2014年5月29日 20時0分

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――この時期に観たいアニメとしてお勧めの劇場版『クレヨンしんちゃん』。そんな劇場版『クレしん』の魅力を監督別に特集。第4回は、原恵一監督の後を継いだ水島努監督の作品群を取り上げる。『オトナ帝国』『戦国大合戦』の大ヒットで、映画『クレしん』に"大人も笑って泣けるアニメ"というイメージが付く中、あえてギャグに特化した『栄光のヤキニクロード』『夕陽のカスカベボーイズ』などの、こんなところを知っていると観方が変わって面白いという見どころを紹介していこう!

【水島努編】

■『クレしんパラダイス! メイド・イン・埼玉』

 最初に水島監督が映画『クレしん』を手がけたのは、劇場版本編ではなく、原恵一監督の『クレヨンしんちゃん 爆発! 温泉わくわく大決戦』と同時上映された短編オムニバスアニメだった。本作は、「野原刑事の事件簿」「ひまわり ぁ GOGO!」「ふしぎの国のネネちゃん」(出てくるのは、トランプじゃなく花札の兵士!)「ヒーロー大集合」「私のささやかな喜び-A motion for a long time.-」「ぶりぶりざえもんの冒険 銀河篇」の豪華6話構成。これが劇場版での水島努の初監督作品である。

 本作の白眉は、ひまわり視点で描かれた「ひまわり ぁ GOGO!」と、ミュージカル仕立ての「私のささやかな喜び」だろう。「ひまわり ぁ GOGO!」はほぼ全編、背景動画【編注:一枚絵の背景でなく、背景自体が動く画のこと】で作画され、とにかく動き回る。股間を打って悶絶しながら裸になるしんのすけのクネクネ具合も最高だ。「私のささやかな喜び」はミュージカルということで映画ネタが横溢。宝塚、『サウンド・オブ・ミュージック』『タイタニック』『メリー・ポピンズ』『雨に唄えば』『ブルース・ブラザース』『イージー・ライダー』の名シーンが再現される。ちょっとブラックなギャグや、過激な暴力シーン、ミュージカル的要素へのこだわりなど、その後の水島作品に共通する要素が散見できるのも興味深い。

■『嵐を呼ぶ 栄光のヤキニクロード』

 本作は、ずっと『クレしん』で演出助手を担当してきた水島努監督の劇場長編第1作である。水島監督にとって演出助手を卒業後、シュールなギャグが冴えるテレビアニメシリーズ『ジャングルはいつもハレのちグゥ』の監督を挟んでの『クレしん』復活である。

『オトナ帝国』『戦国大合戦』の大ヒットで、『クレしん』に「大人も笑って泣けるアニメ」みたいなブランドイメージが定着し始めていた。しかし、本作はあえてそれに背を向けてギャグに特化した。『クレしん』をひとつの固定観念で測っちゃダメダメとばかりに、冒頭から息もつかせぬ逃亡アクションを展開し、これでもかとギャグをちりばめたエンターテインメント作品に仕上がっている。結果として本作は『クレしん』劇場版の可能性を押し広げたと言えるだろう。

おたぽる

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