ページをめくるごとに悶絶必至! 作者特有の青春群像劇『僕はお姫様になれない』

おたぽる / 2014年11月7日 5時0分

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 若林稔弥は、ネットを駆使するマンガ家である。「別冊少年マガジン」で連載中の『徒然チルドレン』(共に講談社)は、もともと若林がウェブに掲載していた作品で、サイト名でもありサークル名でもある。そして、商業誌で連載しながらも、HP、pixiv、ニコニコ静画(マンガ)への投稿の手を休めることはしない。そんな若林が「コミック電撃だいおうじ」に連載しているのが、『僕はお姫様になれない』(共にKADOKAWA[アスキー・メディアワークス])である。この作品の1~4話はpixivで無料公開している。試し読みにしても大盤振る舞いである。こんなことができるのも若林が「続きが読みたくなる面白さがある」と自信を持っているからに違いない。というわけで、筆者も「これはもっと読みたい!」と単行本を買ってしまったのである。

 若林の作品の魅力は、単にギャグマンガにはカテゴライズしきれない身もだえするような面白い青春群像である。とにかく登場人物に対して、男女を問わず「幸せになってもらいたい」という思いがこみ上げてくる。

 この『僕はお姫様になれない』は、そんな思いがいっそう強くなる作品だ。物語のメインヒロインにして主人公の新堂玲は、両親を亡くして兄と貧しい二人暮らしである。どれだけ貧しいかといえば、女の子なのに男子の制服で通学しなければならないレベル。おまけに僕っ娘なもので、クラスメイトのスーパーの御曹司・白馬王子をはじめ、みんな彼女が男子だと誤解している。白馬くんは「男にドキドキしてしまう」と悩むし、ヤンキーの白雪姫さんは男だと信じ切って激ラブに。オマケに玲ちゃんってば、女の子の服を着たら美少女(道行くオバサンが微笑ましい視線をおくる正統派の可愛さ)なので、余計に状況は混乱していくのである。

「いい加減、気づけよ!」なんてツッコミは野暮なもの。誤解が誤解を生む中で、みんな揃って若さゆえの処理できない恋の悩みに悶えるのが本作の魅力なのである。もう、読んでいるうちに、もどかしくて読者のほうが悶絶になってしまうのは必然。そして、彼らの周囲には、さらに別のベクトルの妙なキャラも次々と出現する。常に鏡に悩みを相談する女子や、望んでもないのにモテまくって女友達ができない女子などなど......。こうした登場人物たちが相互に絡み合うことで、さらに、恋のもだえは深刻になっていくのである。一種の悶絶中毒すら起こさせる若林ワールド。青春って恥ずかしいものだということを、いま一度思い出させてくれる。
(文/ピーラー・ホラ)

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