“あなたは狙われている“!? 『スパイ歌謡全集』で知る政治的プロパガンダの存在とエンタメのふか~い関係

おたぽる / 2014年11月17日 19時30分

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 これは、日本の近い未来を暗示しているのか。数々のSP音源復刻CDで話題の"ぐらもくらぶ"から新譜『あなたは狙われている ~防諜とは~ スパイ歌謡全集 1931-1943』がリリースされた。

 このCDは「特定秘密保護法案施行さる!戦前の軍機保護法施行における防諜ソングはエンタメか?はたまたレジスタンスなのか?その謎に迫る!」と銘打つ、ぐらもくらぶの終戦70年企画第一弾だ。

 そもそも、このCDは謎だらけだ。ジャケットのイラストは、今でこそ『あれよ星屑』(KADOKAWA[エンターブレイン])が話題となっているが数々のゲイ作品で知られるマンガ家・山田参助氏だし、いったい「スパイ歌謡」とはなんなのだ?

 そんな疑問の中で、CDを早速聞いてみて度肝を抜かれた。ライナーノーツの中で、今年話題となった新書『日本の軍歌』(幻冬舎新書)の著者・辻田真佐憲氏は、次のように記す。

「政治がいかにレコードというエンターテイメントを利用したのか。あるいは民間企業がいかに手持ちのエンタメで当局におもねったか。その間にあった消費者はそのような『政治的エンタメ』をどのように受け止めたのか。軍国主義の中心にあった『スパイ歌謡』こそは、これら政治とエンターテイメントの複雑な関係性を教えてくれる」

 つまり、戦時体制の構築に向けた統制のキーワードとしての「防諜」。そこにレコード会社が乗っかり次々と新曲をリリースして、雰囲気作りを進めていった。その当時の空気感を、このCD一枚で味わうことができるのだ。セレクトされた曲と、収録順も空気感をより濃縮して味わえるように工夫がなされている。
 
なんにも言えず 靖国の  
宮のきざわし ひれ伏せば
熱い涙が こみ上げる  
さうだ感謝の その気持ち
揃ふ、揃う気持ちが 国護る

 この1941(昭和16)年を代表する曲である『さうだその意気(国民総意の歌)』で、当時の国民のテンションを感じさせた後、曲は1931(昭和6)年へと遡り、時系列へと移っていく。

 まず登場するのは『噫中村大尉』、そして『十五夜の娘』である。

『噫中村大尉』は、満州事変直前に大興安嶺へと潜入し捕縛されて処刑された軍事探偵・中村震太郎大尉を称える曲。続いて収録される『十五夜の娘』は、歌っているのが歴史に名を刻む女スパイ・川島芳子なのである。

 自軍のスパイの功績を称えると共に、敵スパイへの危機意識も高まっていったのだろうか、防諜を訴える歌詞は次第に過激な方向へと向かっていく。豊橋市防諜団撰定の『防諜の歌』は、当時随一の人気歌手・東海林太郎が歌っているのだが、歌詞への気合がこもりまくっている。

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