描かれるのは、現代社会への絶望!? 美少女ゲーム・ヒットメーカーコンビによるラノベ『ようこそ実力至上主義の教室へ』

おたぽる / 2015年7月9日 23時0分

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『暁の護衛』(しゃんぐりら)や『レミニセンス』(てぃ~ぐる)など、美少女ゲームのヒット作を手がけてきた衣笠彰梧とトモセシュンサクのコンビによるライトノベル『ようこそ実力至上主義の教室へ』(KADOKAWA メディアファクトリー)。発売にあたって宣伝用のスペシャルアニメが公開されるところを見ると、"売れることがわかっている"+"今後の展開を考えていること"が明白な作品だ。

 実際、発売直後にいきなり重版がかかったというから、作品に力があることは間違いない。しかし、この作品で真に評価すべきは、決してコアな美少女ゲーム・ユーザーやラノベのファン層を狙ったわけではない、作品の重厚さにある。作者・衣笠の文章は軽くて読みやすい。けれど、物語の冒頭ではこんな言葉が登場する。

「問い・人は平等であるか否か」

 主人公の綾小路清隆を中心におりなす物語の舞台は、全国屈指の名門校・高度育成高等学校。この学校は、髪型や私物の持ち込みなどが自由な学校生活を送れるばかりか、毎月10万円分のポイントが支給されるというサービスまで存在する、生徒たちにとっての楽園だ。しかし、この楽園を享受できるのは優秀な者だけ、という実力至上主義の学校でもある。

 物語のセオリーとして、主人公が配属となるのは成績最低のDクラス。冒頭、多くのページを割いて、4月の入学式から5月まで、主人公たちがクラスの仲間を得ていく様子と学校の姿とを描いていく。成績最低クラスの主人公はいきなり格差のある扱いを受けるのではなく、入学式からしばらくはフツーの学園生活が綴られていく。

 しかし、入学式早々10万円分のポイントを得て狂喜するDクラスの面々は、5月になって新たなポイントが振り込まれていないことを知る。ここで、この学校ではクラスごとの成績によってポイントが増減するシステムだということが初めて説明される。そのくだりが始まるのは、142ページから。相当なページ数を使い、楽しい高校生活が天国から地獄へ真っ逆さまになる一大イベントを描いていることがわかるだろうか。

 とはいうものの、ここまででも、このディストピアの空恐ろしさがわかる描写もある。在学中、生徒は学校から出ることが一切禁じられている。もちろん、学校の中には支給されたポイントを使えるさまざまな店が存在する。しかし、外界との接触は、許可なく肉親と連絡することも禁じられるほどの徹底ぶりだ。

 こうして物語は、恐るべき実力主義のディストピアの中で抗う主人公たちの姿を描いていく。そこで描かれるのは、一種の絶望の中の戦い。多少ネタバレになってしまうかもしれないが、この一冊の中で、すべてが成績次第(遅刻等も減点対象)というシステムが崩れ去ることはない。主人公を始めとしたDクラスのメンバーの戦いとは、退学などの最悪の事態を回避するためのものに過ぎない。

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