コミュ障ガールは自分に掛けた“呪い”を解けるか? 悶絶トラウマミュージカル『心が叫びたがってるんだ。』

おたぽる / 2015年9月17日 10時0分

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 思春期の少年少女たちにとって、世界は学校と家庭しかない。狭い脆弱な世界では、非科学的なタブーが生じやすい。迷信、噂、誤った刷り込みによって人格形成に重要な成長期が左右されてしまう。劇場アニメ『心が叫びたがってるんだ。』のヒロイン・成瀬順は幼い頃に自分が体験したトラウマから自分自身に呪いを掛けてしまう。口は災いのもと。自分が口を開けば、誰かを傷つけてしまう。だから自分は誰ともしゃべっちゃいけないんだと。感受性豊かで、純真な子どもほど暗示に掛かりやすい。埼玉県秩父ののどかなロケーションを背景に、自分自身に掛けた呪いという名のバリアーの中に閉じ篭ってきた少女が、他者と関わることで成長し、呪縛から解き放たれようとする姿を『ここさけ』は繊細に描いていく。

 劇場アニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』(13)を大ロングランヒットさせた脚本・岡田麿里、監督・長井龍雪、キャラクターデザイン・田中将賀の3人が再結集した『ここさけ』。子どもの頃に亡くなった幼なじみに対する罪悪感が『あの花』の重要なモチーフとなっていたように、『ここさけ』でも罪の意識がやはり物語の核となっている。『ここさけ』のヒロイン・順(水瀬いのり)は幼い頃は明るくおしゃべりな女の子だった。ある日、丘の上にある洋風のお城(実はラブホテル)からお父さんと知らない若い女性が一緒に出てくるのを目撃し、そのことを興奮気味にお母さん(吉田羊)に報告した。順のおしゃべりが原因となり、両親は離婚。それ以来、順は自己暗示を掛け、人と話すとお腹が痛くなるようになってしまう。自分に重い罰を与えることで、母親と2人っきりになってしまった小さな世界で辛うじて生きながらえてきた。

“コミュニケーション障害”を抱えた順は、高校生になっても友達がいない。学校でひと言もしゃべらない暗い青春を送っていたが、高校2年の秋に担任教師(藤原啓治)から「地域ふれあい交流会」の実行委員に任命される。実行委員には順のほかに、自分の本音を語ることのない拓実(内山昴輝)、チアリーダー部の部長を務める優等生の菜月(雨宮天)、ヒジの故障で投げられなくなった野球部のエース・大樹(細谷佳正)がいた。交流会は近所のおじいちゃんやおばあちゃんたちが集まる程度の催しだったが、順たちは担任教師のプッシュもあり、オリジナルのミュージカルを上演することになる。登場人物たちがしゃべる代わりに路上で歌い踊り出すミュージカルをクラスメイトたちは笑ったが、順は違った。「人と話すことができないけど、歌なら大丈夫かも」とかすかな光明を見出す。学校外の人たちも集まる体育館での発表会が、順の呪いを解くための祝祭の場として急浮上する。

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