耳掃除やりすぎは“かゆみ”の原因に 軟こう使ったセルフケアNG 耳鼻科医が教える対処法
オトナンサー / 2024年12月12日 6時10分
耳の穴の中が痛くなったり、かゆくなったりすることはありませんか。この場合、耳の鼓膜までの間の「外耳」と呼ばれる部分が炎症を起こす、いわゆる外耳炎の可能性が考えられます。外耳炎になった場合、どのように対処すればよいのでしょうか。外耳炎の原因や治療法などについて、わしお耳鼻咽喉科(兵庫県西宮市)の鷲尾有司(わしお・ゆうし)院長に聞きました。
■耳の中を触って刺激を与えないこと
Q.まず外耳炎になる原因のほか、外耳炎の主な症状について、教えてください。
鷲尾さん「耳は外側から3つに分けられ、鼓膜までの『外耳』、鼓膜の内側の『中耳』、さらに奥の聞こえの神経がある『内耳』があります。つまり、外耳炎とは一番外側にある外耳に炎症が起こったということです。
主に外耳は耳の中で皮膚の部分を指していることになるため、『外耳炎=皮膚炎』と言い換えても良いかもしれません。そういった意味で、外耳は外から守る場所であり、外からの影響を受けやすい場所になります。
外耳炎の症状で多いのは痛み、特に『耳介牽引(けんいん)痛』と呼ばれる耳を引っ張ったりしたときの痛みのほか、『耳珠圧迫痛』と呼ばれる耳の周辺を押したときの痛みが特徴的です。
その次に多いのは耳のかゆみで、ときどき耳が詰まったような感じを訴える人もいます。ひどくなると浸出液や膿(うみ)が出てきたり、出血したりする場合もあります」
Q.では、耳掃除のしすぎが原因で外耳炎になることはありますか。
鷲尾さん「耳掃除が外耳炎のきっかけになることは非常に多いです。ただ、どこからが『しすぎ』で、どこまでなら『しすぎでない』かを判断することは難しいです。ピンポイントで耳あかのみを自分で取り除くのは不可能と言ってよいでしょう。どうしても耳あかのない所に機械的な刺激を加えることになります。
耳あかには、皮膚を守ったり、ほこりや虫が入ってくるのを防いだりするなどの働きがあります。耳あかは自然に排出されるために、ほとんどの人は基本的に耳掃除を必要としません。また、見えないところを触ることはリスクしかありません。そのため『耳掃除はしないことが理想』です」
Q.外耳炎とみられる症状が出た場合、どのように対処したらよいのでしょうか。また、どのような方法で治療を行うのでしょうか。
鷲尾さん「症状の程度によりますが、まずは何もしないことです。外耳炎の原因はほとんどが機械的な刺激によるものです。自宅で何となく耳に市販の軟こうなどを塗るのもお勧めしません。軟こうを塗る際に耳に刺激を加えることになるためです。
また、外耳炎の場合、どの辺りにいつまで塗布するかも見えないため、自己判断になってしまいます。治り切っていないのに良くなったかもしれないと途中で軟こうの使用をやめた結果、ぶり返すというのは、外耳炎でよくあるケースです。
しかし、頭では何もしないことが良いとは分かっているけど気になる場合は、耳鼻咽喉科を受診しましょう。耳鼻咽喉科では『診断』『治療』『再発予防のための取り組み』を行います。外耳炎にも特殊なものもありますから、まずは特殊な外耳炎や外耳炎以外の疾患がないかを診察します。診断の結果で一般的な外耳炎であれば、治療は軟こうもしくは点耳液、必要に応じて飲み薬を処方します。
膿性の浸出液がある場合などで感染が疑われれば抗生剤を必要としますが、通常は必要ありません。治療が終了しても繰り返してしまう人が多くいます。その場合は再発予防のための取り組みが必要となります。これはいかに触らないようにするかです。
『耳がかゆくなりやすい人=耳掃除が好きな人』に当てはまるケースに多いのが、耳掃除をしてさらにかゆくなって、の悪循環です。耳あかがあるために耳がかゆくなるわけではないため、かゆくなる原因を考える必要があります。よく耳がかゆくなる人で多いのがアレルギー体質です。アレルギーの治療をすることでかゆみが解消され、耳を触らなくなるといった好循環が期待できるかもしれません」
Q.自分で外耳炎かどうかを見分けることは可能なのでしょうか。
鷲尾さん「残念ながら見えない場所なので見分けることは難しいです。しかし、耳介牽引痛や耳珠圧迫痛などがあれば、外耳炎を疑うことはできます。難聴など、他の症状がなければ、まずは触らないようにしてみてください。それで改善するようであれば外耳炎の可能性が高いと判断することができます。症状が続くようであれば、外耳炎以外の疾患も考えられるため、耳鼻咽喉科を受診しましょう」
Q.外耳炎は触らないのが良いとのことですが、症状が良くならないまま放置した場合、難聴になるリスクはあるのでしょうか。
鷲尾さん「先述のように、外耳炎になった場合は触らないのが一番ですが、それでも症状が改善しなかったり、分かってはいるけど触り続けてしまったりするようであれば、耳鼻咽喉科を受診しましょう。まずは通常の外耳炎かどうかの診断が必要になります。
糖尿病などの持病がある人が、特殊な細菌に感染することで悪性外耳道炎にかかったり、耳の中を触り過ぎたことで外耳道真菌症にかかってしまったりすることもあります。また、耳の周囲の骨を溶かしてしまう外耳道真珠腫であることや、まれですが、頻回の機械的刺激による外耳道がんに発展した事例に関する報告もあります。
外耳炎によって生じるリスクというよりも、外耳炎でない可能性や頻回の持続的な刺激によるリスクがあります。
炎症の程度によって外耳道が狭くなったり、鼓膜や中耳に影響が出てしまったりすると一時的に難聴が起こります。ただ、耳鼻咽喉科で治療をすれば、通常は改善する難聴です」
Q.外耳炎をできるだけ防ぐには、どのような対策が有効なのでしょうか。
鷲尾さん「繰り返しになりますが、耳の中を触らないことです。『耳掃除はしなくてよい』『かゆいところをかいてはダメ』『見えないところは触らない』が基本です。
もちろん理屈は分かっているけど触ってしまうことはありますよね。うまく気付いて触らないことで良くなるのが望ましいですが、ついつい触り続けてしまう場合や外耳炎の症状が続く場合などは、自己判断せずに耳鼻咽喉科を受診しましょう」
オトナンサー編集部
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