福地桃子、伊原六花…朝ドラの登竜門的側面がヒロインから“助演”にシフトしたワケ

オトナンサー / 2019年6月22日 8時10分

 放送中のNHK連続テレビ小説「なつぞら」は、女優の広瀬すずさんが主演していますが、2019年度下半期の「スカーレット」は戸田恵梨香さん、2020年度上半期の「エール」(窪田正孝さん主演)は二階堂ふみさんがそれぞれヒロインを演じます。朝ドラヒロインが“新人女優の登竜門”とされていたのは昔の話。現在では、確かなキャリアのある女優が起用される傾向にあります。

 代わって、登竜門的側面は、ヒロインの姉妹や同僚、幼なじみなどが担うようになり、「なつぞら」では、福地桃子さんや伊原六花さんなどが注目を集めています。また、「スカーレット」でも、三姉妹の長女を演じる戸田さんの妹役として、桜庭ななみさんと福田麻由子さんが出演、活躍が期待されています。

 こうしたキャスティングの傾向の変化には、どのような背景があるのでしょうか。コラムニスト・テレビ解説者の木村隆志さんに聞きました。

■スロー展開に我慢できない視聴者

「朝ドラヒロインが新人女優の登竜門と言われなくなって、10年ほどがたちました。昔は、ヒロインは“国民の娘”という位置付けで、ひたむきに頑張っている姿を見守っていくのが朝ドラの楽しみ方でした。しかし今では、そのようなゆっくりした展開に、視聴者が我慢できなくなっています」

 半年間、月曜から土曜まで150話以上放送される朝ドラですが、木村さんは「最近の視聴者はせっかちになっています」と指摘。それがヒロインのキャスティングや作品の展開に影響を与えているといいます。

「最近も、たった1~2週間の放送で『下手で見ていられない』『大根役者』とたたかれた朝ドラヒロインもいます。朝ドラというブランドが大きくなり、よくも悪くも注目され、称賛よりも酷評の方が目立ちやすいのがつらいところ。受信料問題などで非難されることの多いNHKにとって、朝ドラは失敗できないコンテンツであり、低視聴率は許されません。そこで、一定の演技力と実績を兼ね備えた女優を選ぶようになりました」

「また、ストーリーの面では、本来のドラマの面白さであるはずの、余韻や行間を楽しむような脚本ではなくなりました。心の機微や逡巡(しゅんじゅん)などの描写は減り、さまざまな出来事が早いテンポで次々に起き、それを補足するようなモノローグやセリフでの説明が増えています。テレビ全体でも、家族ドラマやヒューマンドラマの数が減っているのは、視聴者から『まどろっこしい』『テンポが悪い』と言われてしまうから。一方、医療ドラマや刑事ドラマが多いのは、命に関わるような切迫した展開で見せた方が視聴率が取れるからです」

 なぜ、視聴者は“こらえ性”がなくなったのでしょうか。それには、インターネットの普及が関係しているそうです。

「オンデマンドで好きなものを好きな時に手に入れられるようになってコストパフォーマンスの感覚がシビアになり、ドラマの行間が“無駄なこと”に感じられてしまうようです。また、テレビは家の中で見ることが多いので、映画館などより集中力を保ちにくいなど、作り手にとっては難しい状況になっています」

■朝ドラの“フレッシュさ”を補う必要

 ヒロインをキャリアのある女優が演じる一方、朝ドラをきっかけに注目を集める女優が増えています。6月15日放送の「なつぞら」には、資生堂「シーブリーズ」のCMキャラクターに抜てきされた池間夏海さんが突如登場して、話題になりました。

「フレッシュさという朝ドラ本来の魅力をどこかで補わないといけない。そこで、ヒロインの親友や姉妹、同僚など、ヒロインと一緒にいるシーンが長い女性キャストに、力が入れられています。NHKの場合、キャスティングに芸能事務所とのしがらみが少なく、事務所に所属していないキャストを使うこともあるほどです」

「事務所側としても、新人や実績のない女優は助演狙いにシフトして、オーディションを受けさせています。最近では『最初から主演になりたい』という淡い期待を抱く若手女優はほとんどいないでしょう。実際、助演で朝ドラに出演し、その後の作品でヒロインになった土屋太鳳さんや高畑充希さん、芳根京子さんなどのケースも多いので、こちらのルートが現実路線です」

「『あさが来た』に助演として出演した吉岡里帆さんもブレイクしました。『半分、青い。』の奈緒さんも現在、『あなたの番です』に出演していますが、業界内では、放送スタート前でも朝ドラ出演が知れ渡るので、別作品のオーディションでも有利になります。さらに、知名度の上昇で、イベントやCM、民放からのオファーなども増えるので、事務所はヒロインに近い助演を狙うのです」

 朝ドラ100作目の「なつぞら」には、松嶋菜々子さんや山口智子さん、貫地谷しほりさん、比嘉愛未さんら歴代ヒロインたちが多数登場していますが、この作品をきっかけに、助演経由の新たな“朝ドラヒロイン”が誕生するかもしれません。

オトナンサー編集部

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