大阪府公用メール問題…勤務中の送別会準備は義務違反? 民間と違いは? 専門家に聞く

オトナンサー / 2019年8月19日 6時10分

 大阪府の職員が勤務時間中、上司の送別会の連絡を公用メールで行っていたことが7月下旬に分かり、吉村洋文知事が「ルール違反。厳しく対応する」と処分を示唆しました。

 しかし、ネット上などで「そんなことで処分されるの?」「送別会は業務みたいなものでは」「だったら知事の初登庁セレモニーは業務なの」といった疑問の声が噴出。吉村知事は8月1日、府幹部を交えた会議を開き、「今回のケースは公用か私的利用かの限界的な事例。公用メールの使用ルールが明確でなかったため、メールの利用について処分すべきではない」と方針を転換しました。

 送別会の準備やセレモニーといった行事は、役所でも民間企業でもよくあることですが、どこまでが「業務」で、そのための業務用メール利用はどこまで許されるのでしょうか。大阪府と専門家に取材しました。

■処分するには明確なルールが必要

 大阪府人事課によると、府の総務部長が6月末に退職。総務部と財務部の職員が7月、職場のパソコンを使い、公用メールで送別会への参加呼びかけや会場の案内周知などを行いました。勤務時間中に送ったメールもあったとのことです。

 人事課の担当者は当初、「勤務時間中に送別会のメールを送ったことは地方公務員法35条(職務専念義務)に抵触する可能性がある」としていましたが、知事が方針転換した後に再取材すると、「公用メールの使用については処分や注意はしない方向になりそうです」とトーンダウンしていました。

 送別会などの準備と「業務」との関係、業務用メール使用の問題点について、社会保険労務士の木村政美さんに聞きました。

Q.職務専念義務について、公務員と民間企業でそれぞれの根拠となる法律や規定、主な内容を教えてください。

木村さん「公務員の職務専念義務は、国家公務員法および地方公務員法において、明確に定められています。主な条文としては『すべて職員は、国民全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務し、かつ、職務の遂行に当っては、全力を挙げてこれに専念しなければならない』(国家公務員法96条)。地方公務員法30条にも同様の条文があります。

言い換えると、公務員は国民や管轄自治体の市民等のために、与えられた職務を執行する義務(職務執行義務)を負っていることになります。

民間企業の場合の職務専念義務とは、『勤務時間中は使用者(会社や上司)の指揮命令に従いその職務に専念する義務』であり、会社と労働者が労働契約を締結した場合の義務として当然に存在するとされています。労働契約法3条4項に根拠があり、一般的に会社の就業規則の中で服務規程として定めている場合が多いです」

Q.勤務時間中に上司の送別会の準備をすることは、職務専念義務に違反するのでしょうか。

木村さん「民間企業の場合、『勤務時間中は使用者の指揮命令に従いその職務に専念する義務』とあるので、会社や上司が命令したり、許可したりすれば、勤務時間中に送迎会の準備を行ったとしても職務専念義務違反とはなりません。命令や許可なく自発的に行なった場合は、職務とはみなされず、違反となります。

公務員の場合は、職務の目的が『公共の利益』です。勤務時間中は、国民や市民のために仕事をしなければなりません。あくまでその解釈にのっとった場合、勤務時間中に上司の送別会の準備を行うことは、公共の利益であるとは言い難く、職務専念義務に違反する可能性があります」

Q.送別会の連絡に業務用(公務員の場合は公用)メールを使うことは、どのような問題があるでしょうか。

木村さん「業務用のメールはあくまでも仕事のために使用することが認められているものであり、メール内容が業務との関連性がないと判定されれば私的使用となります。業務用メールの私的利用を禁じている企業は多いのですが(官公庁も同様)、それには次の理由があります」

・勤務時間中に私用メールを行うことは、職務専念義務に違反する。
・私用メールは会社の所有物(パソコン)やインターネットの接続環境を無断で使用することになるため、企業秩序の違反行為にあたる。
・私用でメールを受信する際にウイルスに感染したり、社内の情報漏えいにつながる危険がある。実際に事故が起こると、企業(官公庁)は多大な損害を被る可能性があり、問題を起こした従業員は懲戒処分や損害賠償を請求される場合がある。
・ただし、業務用メール(公用メール)を私用で使ったことにより該当者を処分する場合、業務用メール(公用メール)の使用ルールについての規則を設ける必要があり、規則がない場合は処分ができないことがある。

Q.職務専念義務と公用メールの使用ルールに違反せず準備をするとすれば、どのようにすればよかったのでしょうか。

木村さん「送別会の準備・連絡にパソコンやスマホなどのモバイル機器を使う場合は、職場内に設置されていたり、業務目的で貸与されている機器を使用せず、私物の機器を使用する。また、準備や連絡をする際は勤務時間中ではなく、勤務時間外に行うことにより、職務専念義務及び企業秩序の違反行為には当たらないことになります」

■セレモニーへの参加は職務?

Q.勤務時間中に送別会の準備をしたことで処分された、という実例があれば教えてください。

木村さん「公務員の場合、処分がなされた例は、調べた限り見当たりませんでした。大阪府に限らず、他の官公庁でも、以前から送別会の準備や連絡を勤務時間内に行うことが通例として扱われていたため、現在まで問題視されていなかったのではないかと推測されます。民間企業も実例は見当たりませんでした」

Q.役所では知事や市長の初登庁や退任のときに職員が庁舎玄関に集まり、花束を渡すセレモニーが行われることがあります。これは職務といえるのでしょうか。

大阪府秘書課の担当者は「府民に選ばれた知事を迎えることは、秘書業務として指示されたもので、職務専念義務には違反しないと考えます。4月8日の吉村知事の初登庁は午後1時でしたが、他の職員には庁内放送で『業務に支障のない範囲でお集まりください』と呼びかけており、業務に支障のない職員が集まったと思います」と述べています。

木村さん「セレモニーを行う目的をどう捉えるかです。もし、知事や市長個人に対する激励や慰労の意味だけであれば、あくまでも職場内部の行事です。その場合、公務員本来の職務目的に鑑みると、公共の利益のために行っている業務とはいえず、職務ではないと取られる可能性があります。

もっとも、セレモニー自体が悪いのではなく、始業時間前・昼休み時間・勤務終了後など、参列者自身の勤務時間外に行われた場合であれば問題ないといえるでしょう」

オトナンサー編集部

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