いちどできたシワは、元に戻せる?戻せない?【ヘルスリテラシー#4】
OTONA SALONE / 2019年9月12日 11時0分
こんにちは。「予防医学」を啓蒙するアンチエイジング医の中村康宏です。健康に関する正しい情報を使いこなす令和時代の概念「ヘルスリテラシー」を伝えています。
よく「できてしまったシワを伸ばすだなんて、もう無理」というぼやきを聞きますが、本当でしょうか。
結論から言うと、できます。
シワを伸ばすためには、筋肉にシワを伸ばすような力を働かせるか、真皮層にヒアルロン酸などを注入し「溝を埋める」、これら2つの方法が考えられます。
特に、目の周りの乾燥ジワや真皮ジワは保湿を密にすることで防ぐことができます。
40代の肌がたるむ理由って?少しでも「遅らせる」方法
たるみとは、簡単に言えば、重力に負けて顔の組織が下降することです。更年期世代に起きることは以下の4つ。
①脂肪の蓄積
②表情筋の衰え
③肌の弾力性が低下
④骨が劣化
特に、40代後半からは閉経に伴い女性ホルモンが急激に減少し、肌の弾力を保つコラーゲン繊維やエラスチン線維が変性して機能も低下。皮脂分泌も減少して肌が乾燥し、結果的にシワやたるみが進行します。
また、骨は皮膚や筋肉・皮下組織の基礎となる部分であり、土台の骨が萎縮すれば、必然的に上に乗っている肌はたるんできて「老け顔」が加速度的に進行してしまいます。
今回は4つのうち上から2つ目までの原因と対策を説明しましょう。
脂肪の蓄積は「リンパの機能低下」で起きる
まずは脂肪の蓄積について。たるみが起きている部位では、皮下脂肪が蓄積しています。原因は加齢によるリンパ管の機能低下。本来リンパを経由して血流に乗るべきだった脂肪が吸収されないままになるので、若いころからあった「むくみ」だけでなく、皮下脂肪が増えて「たるみ」が引き起こされます。2つの対策が考えられます。
対策1・筋肉を動かす
筋肉を動かすことや、圧迫(マッサージ)をすること。外からリンパ管に圧を加えることで、脂肪の蓄積やむくみを解消することができます。ただし、方法には注意が必要。
対策2・脂肪を直接溶解させる
メソセラピーと呼ばれる脂肪溶解注射は、気になる部位に脂肪を溶かす薬剤を注射して顔をスッキリさせることができます。メスを使うことがないのでダウンタイムなく短時間でスッキリ・小さくできます。腫れや痛み・赤みがほとんどなく、治療回数が少なくて済む、安全性の高い治療です。顔以外にも使用できますが、脂肪の少ない顔面は効果を実感しやすい部位です。
糖化、加齢で表情筋や靭帯が衰える
続いて、表情筋の衰えについて。酸化ストレスや紫外線、加齢の影響で、糖分と筋肉を構成するタンパク質が糖化反応を起こします。結果、よくカラメルに例えられる、タンパク質と糖が絡んだ「コゲ」のようなもの、「AGE」が形成されます。これが表情筋を萎縮させ、筋肉の質の低下を起こすのです。肌のハリや弾力性も低下し、たるみやシワの増加につながります。
また、加齢によって筋肉と骨を支える「靭帯」も弱ります。たるみの主な原因はむしろ靭帯。靭帯を越えて皮膚が垂れてしまうのです。
また、骨格の「ずれ」が原因で土台から顔が崩れたりします。頬骨の後退や、顎の短縮化が起き、筋肉を支える土台の体積自体が少なくなるのです。
よく、「表情筋の体操」や「表情筋を鍛える」と言われますが、「硬くなった筋肉をほぐす」「血流をよくする」 という言葉は、実は医学的根拠がほとんどありません。むしろ、表皮はたるみやすいので下手な刺激はシワやたるみの原因となります。
筋肉を動かせば、リンパが血流に戻っていくのを助けることができます。しかし、それで筋膜が上がることはありません。力を入れたマッサージは皮膚科でも基本的に勧められていません。皮膚への接触はたるみを増やしてしまう可能性があるからです。
ですので、美容医療の世界には、超音波や高周波ラジオ波で皮膚の土台ともいえるSMAS(筋膜)に直接エネルギーを加えることで、タンパク質を縮ませ、SMAS(筋膜)のゆるみを引き締める治療があります。伸びやすい表皮ではなく、伸びないSMAS(筋膜)に刺激を与え、メスを使用することなく、手術と同じ層へのフェイスリフトを行います。
また、たるんだ「皮膚」へのアプローチは前述の通りの脂肪融解注射がオススメ。フェイスラインを元に戻すことができます。急激なダイエットに成功した結果、皮膚がたるんだ人に対する治療は、まさにこのセット。超音波で筋膜をきゅっとさせ、皮下脂肪を溶解注射を打ちます。
コラーゲンを飲むのはどうなんですか?
なお、皮膚のコラーゲンを増やすためにコラーゲンを皮膚上に塗ったり、飲んだりということもあります。これも効果についてよく質問されます。
コラーゲンはペプチドに分解されてからしか吸収されないので、体内でコラーゲンになるかはまた別の話です。直接的な効果はない可能性が高いでしょう。
しかし、体内で分解されてできたコラーゲンペプチドが線維芽細胞を刺激して間接的に増やす作用があるとされています。なので、現在のところ「恐らく何かしらの意義がある」と想定されています。
皮下へのコラーゲン注射の場合は打った日から効果があり、あご先や目の下ならおおむね1年は持ちます。
肌の弾力性低下、骨の劣化については次回。
医師・予防内科医・米国栄養士・産業医・MPHホルダー(米国公衆衛生学修士)
中村 康宏先生
米国留学を経て、健康増進・健康防衛のための医療を提供すべく「中村康宏内科クリニック」を京都で開業。その後、日本初のアメリカ抗加齢学会施設認定を受けた「虎の門中村康宏クリニック」を東京で開業。一般内科診療、アンチエイジングを追求する女性への美容医療、外国人の企業検診や訪日旅行客へのヘルスケアサービス、IT企業の社長へジムの運動メニューまで考える「顧問ドクター」、産業医として、企業のメンタルヘルスに関する相談などの予防に特化した医療サービスを提供している。無料相談会も全国各地で実施、ぜひお運びください。
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