コロナ死者がゼロだった「意外な国」とは?海外から見た日本の事実【コロナ後の世界#1】
OTONA SALONE / 2020年6月4日 21時30分
こんにちは。特定行政書士・フエ科学大学特任教授の近藤秀将です。
私は、出入国在留管理庁に関する手続等、以下「入管実務等」と書きますが、これを専門とする行政書士であり、国内外の大学等で「移民」(Immgraiton)についての教育研究活動をしている社会学者でもあります。
入管実務等の具体的な内容は、ここでは「外国人、または外国人と関わる日本人から依頼を受けて、外国人が日本で暮らせるようにすること」。簡単に言うと、ビザ申請と理解して頂ければ大丈夫です。
さて、いま日本に暮らすみなさんのご関心は、「このあと日本はどうなっていくのだろう? どうやら欧米とは違うことが起きそうだ」ではないかと思います。
私の立場から見えているアジアと、その手前にある日本の話をしていきましょう。
【コロナ後の世界#1】モンゴル国ウランバートル市(Улаанбаатар)
[Fact](事実)の見え方は人によって違う。なぜなら…
新型コロナウイルス感染症、「新型コロナ」に関する[Fact]は、依然として相互矛盾しながら、私たちを取り囲む世界を飛び交っています。
私が経営する行政書士法人KIS近藤法務事務所は、東京・池袋と大阪に事務所を構えています。さらに、グループ会社ではモンゴル国ウランバートル市、中華人民共和国北京市、ベトナム社会主義共和国フエ市に拠点を持っています。
これらの国を中心として、アジア各地のリアルタイムの[Fact]を知ることができます。
新型コロナの話は「もうお腹いっぱい!」という感じで、マヒ状態になっている人も多いと思います。それはとても当然の反応です。なぜなら、相互矛盾する[Fact]は、互いをノイズ化するからです。
政治家、メディア、個人がそれぞれ発信する矛盾した[Fact]に耳を傾けすぎた結果、みなさんを取り囲む世界はノイズで濁っているのではないでしょうか。
もちろん、私が口にする[Fact]も、私が認識した[Fact]にすぎませんが、今私たちを取り囲む世界を飛び交う[Fact]とは少し違います。なぜなら、私が接する[Fact]は日本国内ではなく「外国」の日常で、なおかつその「外国」は日本と政治的な緊張がない地域だからです。
これから私は、敢えて「国別」ではなく、メディアが取り上げてこなかった「アジアの地方都市」を積極的に皆様にお伝えしたと思います。なぜなら、今、我々を取り囲んでいるノイズを除去するためには、自分たちとは遠い地の「事実Fact」を知ることが効果的だと考えるからです。
さて、今回取り上げるのは、モンゴル国ウランバートル市(Улаанбаатар)です。
「新型コロナで死者が出なかった国」モンゴル。その理由は何なのか?
モンゴル国は、人口約323万人(2018年末現在)、そして、国土面積約156万平方キロメートルという人口が少なく(約1.265憶人:2018年)、国土が広い国です(日本の約4倍!)。
日本からは、約6時間のフライトで行くことができます。通常は、成田からですが、夏の期間は、羽田からも直行便があります。
大相撲でモンゴル出身力士が活躍していることもあり、日本人にとってモンゴルは身近な国の一つでしょう。
多くの日本人には「遊牧民の国」「草原の国」等のイメージが強いかもしれません。
しかし、実際は、「シャングリラホテル」も進出し大規模なシネマコンプレックス等を含めたショッピングセンターもある「現代都市」です。
また、モンゴルの全人口323万人の約半分が首都であるウランバートル市に集まり、その多く「ゲル地区」という貧困地区に住んでいます(ゲル/гэр:モンゴルの移動式住居)。
この「ゲル地区」には、電気は通っていますが上下水道はありません。無秩序に家が増殖して行っています(水は、専用の販売所があります)。
ウランバートル市は、本来100万人を越える人口を抱えることはできないといわれています。
その顕れとして、ひどい交通渋滞があります。
今回の新型コロナでは、モンゴルでは現在まで感染者185人、死者は出ていません(2020/6/2時点)。
ウランバートルのようなインフラが脆弱な過密都市に多くの人口が集中しているにもかかわらず、死者が一人も出ていないのは、モンゴルの徹底した感染症対策が成功している証拠だと思います。
早期にロックダウンの英断、しかし起きてしまった「海外からの流入」
モンゴルは、早い段階で「ロックダウン」を決定し、外国からの人の流入を制限しました。
モンゴルで初めて感染が確認されたのは、モンゴル人ではなく3月2日にモスクワ発の便でモンゴル入りしたフランス人でした。
このフランス人は、3月7日から発熱し、PCR検査し新型コロナ陽性と確認されました。
私も、この日、ウランバートルにあるKISグループ駐在事務所のスタッフから緊迫した雰囲気で連絡があったのを覚えています。
以下が、モンゴル駐在事務所スタッフ(以下「MS」)とのSkypeのやり取りです。
――――――――――
MS 「代表、モンゴルにフランス人からコロナウイルスがありました。今モンゴルは凄いことになっています」
私 「凄いこととは?」
MS 「全ての道などを閉鎖し、市内で動いていたバスから人を降ろしています」
私 「なるほど……フランス人は、旅行者ですか」
MS 「いいえ、仕事で来ていました。フランス人は、今、ドルノゴビ(Ⅾornogovi)県にいますが、その前にウランバートル市内に約4日間泊まっていたそうです」
私 「かなり移動しているね……」
MS 「今、生放送でそのフランス人が3月2日にモスクワ経由でモンゴルに来たと伝えています。そのフランス人と接触した約500人を探しています」
――――――――――
一人の感染者の発生が、これほどの緊張感をもたらす、ということを日本に住んでいては実感することはできないでしょう。
モンゴルが、これだけ厳格な感染症対策をしているのは、一度、パンデミックが発生した場合、医療体制が弱いため、収拾がつかなくなるおそれが高いからだと言われています。
例えば、「ゲル地区」のような上下水道もない場所に多くの人口を抱えるウランバートル市でパンデミックが起きると、その結果がどれほどひどいものとなるかは想像できるでしょう。
モンゴルの国家非常事態特別委員会は、3月10日午前7時から17日午前7時までの間、ウランバートル市から地方への出入りを制限すると発表し、このフランス人と接触した可能性がある者に対しては徹底した検査が行われました。
当然、この徹底した感染症対策は、「経済」を犠牲にします。
「経済」を犠牲にしても、感染症対策を徹底するモンゴル政府の姿勢は、非常に明確です。
モンゴルは、5月25日付で新型コロナのワクチンが見つかるまでは、現状の厳格な感染症対策を継続することを発表しました。
6月2日時点でも、大学から幼稚園までは閉鎖され、12歳未満の子どもは商業施設やレストランに行くことができず、人々はマスクの着用が義務付けられています。
経済の要衝を遮断する姿勢に見える「絶対入れない」緊張感
現在のところモンゴルで確認されている新型コロナウイルスの感染者数は185人(5月28日時点)で、その多くがロシアから入ってきています。
モンゴルが国境を接している国は、中国とロシアの二カ国です。
モンゴルの輸出の約9割、輸入の約3割が中国である現状からすれば、モンゴルが中国からの感染者流入について厳格な対応をしていることが理解できます。
モンゴルは、パンデミックが発生すれば取り返しがつかないからこそ、緊張感をもって新型コロナに向き合っています。
そこには、「アベノマスク劇場」のような数百億円かけた〈余興〉が入る余地はありません。
モンゴルを知れば、あらためて日本が持つ「余裕」について考えることができるでしょう。
余裕があるからこそ、不安を煽る[Fact]をSNSで拡散できる。
もし、余裕がなければ、私達は、共通した[Fact]に向き合うしかありません。
モンゴルの現状をみると、この点、実感することができます。
近藤秀将/
≪特定行政書士・フエ科学大学特任教授 近藤秀将さんの他の記事をチェック!≫
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