免疫の専門医が語る「がんと診断されたらいちばん最初にしてほしいこと」実は意外な
OTONA SALONE / 2024年1月10日 18時0分
日本人が一生のうちにがんと診断される確率は、男性65.5%、女性51.2%。ともにほぼ2人に1人です*1。いっぽう、がんで死亡する確率は、男性26.2%、つまり4人に1人。女性に至っては17.7%、6人に1人*2。がんは「必ずしも死の宣告ではない」病気になりました。
「がんかもしれないと感じたときからぜひ、漢方も使ってほしい」と語るのは、外科医・免疫研究者・漢方医のトリプルメジャー医である新見正則医院 院長の新見正則先生。いま漢方を語る理由を聞きました。
*1 2019年データに基づく。*2 2021データに基づく。ともに出典・がん情報サービス/国立研究開発法人国立がん研究センター
漢方はがん細胞を直接は退治しないが、免疫にアプローチして治療を助けることができる
「医学が発達し、がんはすでに『死の宣告』ではなく、仕事をつづけながら『共存していく病』になりましたが、それでもがんの診断を受けると皆さん大きなショックを受け、ご自身に残された時間のことを考えます。医師からすれば、たとえば脳卒中や心筋梗塞のハイリスク群のほうがよほど近々に命にかかわるのですが、やはり日本人にとってがんは特別な病気なのです」
そう語る新見先生は外科医としてキャリアをスタートし、さまざまな部位の悪性腫瘍と対峙してきました。女性の場合、30代から40代にかけて乳がん、子宮がん、卵巣がんなど女性がんの罹患が急増します。みなさんの周囲にも何人かの罹患者が思い当たるのではないでしょうか。いっぽうの男性では50代から60代にかけて、肺がん、胃がん、大腸がん、肝臓膵臓などが増えていきます。
「どんながんでもまずは標準医療に則って治療を進めてほしいのですが、その補完医療として、すべてのがんに漢方が有用であることはあまり語られていません。ぼくはキャリアの最初で外科医として悪性腫瘍と戦い、なぜ人はこうした疾患になるのかと免疫の研究に転じて、ついには免疫機構を元気に保つ方策としての漢方の専門家へと至りました。こんなにいいものがあるのだから日本人はもっと活用してほしいと思うのです」
がんの疑いがあると言われたその日から漢方を飲み始めてほしいと新見先生。
「がんだと診断されるとまず心が萎えます。心の元気を保つために、ぼくは48番、十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ)をお勧めします。気力体力が益すため、がんに対する免疫力がつくからです」
その他、気力と体力の回復には、人参と黄耆を含む「参耆剤」に相当する補中益気湯、人参養栄湯、加味帰脾湯がよいそうです。
また、抗がん剤の投与がはじまったあと、筋肉が攣縮するような痛みが出る場合は芍薬甘草湯がよく効きます。よく足がつったときに頓服で飲む漢方ですね。攣縮とはあしがつった時のイメージで、攣縮に有効な西洋薬はないので、筋肉がキューと痛む時には芍薬甘草湯を試してほしいと新見先生。
がん性疼痛は冷えによって悪化し、入浴で楽になります。なのですが、西洋薬で体を温める効果があるものはほとんどありません。ですから漢方薬で温めてがん性疼痛が楽になることは少なからずあります。気力と体力をつける参耆剤に附子という体を温める生薬を加えることが多いです。参耆剤の代表は補中益気湯、十全大補湯、人参養栄湯で、それらに附子を加えたものを使っています。
主治医に「漢方を出してほしい」と頼んでいいものなのですか?
しかし、病院によっては「何が奏功しているかがわからなくなるので、サプリメントの類を勝手に飲まないように」と言われることもあります。ましてや漢方はサプリではなく医薬品。主治医とケンカせずに試すにはどうしたらいいのでしょうか?
「主治医の先生に、正面から『先生は漢方はお好きですか?』と聞いてみればいいんです。『結構出してますよ』という先生ならば話が早いし、『うーん、ちょっとね?』とおっしゃる先生ならばそれ以上はお願いせず、遠隔診療で状況を聞いて処方してくれる先生に頼ればいいのです」
新見先生のオススメは、保険診療でのオンライン診療で完結していて、薬も配送してくれる出雲漢方クリニック。また、ドラッグストアで売っているものを使ってもOK。保険は効きませんが中身は同じ、「満量処方」であれば成分含有量も同等で、そこから量を減らした「3/4処方」「1/2処方」もあります。なぜこうした処方があるかというと、証が合えば(レスポンダーなら)半量などで効果があるかわり、証が合わない人には投与量を増やして用いても副作用ばかりが強く出ることがあると考えられているためです。
前編ではがん治療に対する漢方の役立て方を伺いました。後編記事ではそのほか「5つの心得」をお話いただきます。
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