小池百合子、破れなかった天井とは【新・オンナの生きざま♯1】
OTONA SALONE / 2017年12月1日 21時0分
OTONASALONE読者の皆さま、はじめまして。ライターの仁科友里と申します。ある時は芸能人の自意識を深読みするコラムを書き、ある時は婚活のハウツー本を書くことを生業としています。
私自身がアラフォーたけなわということで、同世代、もしくはちょい上の女性有名人に心惹かれます。若さ万能の日本社会で、消えることなく活躍する女性有名人たち。彼女たちに共通点があるとしたら、自分の欲望を知っていること、そして女性であることを大事にしていることではないでしょうか。
本シリーズでは、勝手に女性有名人の人生を拝借し、女性が生き抜くコツについて考えてみたいと思います。
大敗を喫した17年選挙。そしてユリコは…
2017年は女性政治家が注目を集めた年ですが、その代表格が小池百合子都知事(以下、ユリコ)ではないでしょうか。日本初の女性総理大臣の誕生なるかと騒がれましたが、衆院選では大敗を喫したことは、ご存じのとおりです。
ユリコは、選挙結果についてこう述べました。
「都知事に当選して、ガラスの天井を破ったかな、もう一つ、都議選もパーフェクトの戦いをしてガラスの天井を破ったかなと思ったが、今回の総選挙で鉄の天井があると改めて知りました」
ガラスの天井とは、優秀な人材が性別や人種的マイノリティーであることを理由に、昇進を阻まれる頭打ちの状態をたとえた言葉です。ユリコは今回の敗北の原因を「オンナというマイノリティーだから」と考えていることがわかります。
負けた理由が「オンナというマイノリティーだから」というのは、らしくないと思います。というのは、ユリコほどマイノリティーを利用してきた政治家はいないと思うからです。
25年前にも「チアリーダー」発言があった
今から25年前、細川護熙熊本県知事(当時)に乞われて政界入りしたユリコが「私は細川さんのチアリーダー」と発言して、物議を醸しだしたことがあります。細川氏を応援し、盛り上げるという意味で言ったのでしょうが、お決まりの「40代でガールだって」という失笑に加えて、女性論客からはチアガールの意味をわかって言っているのかと抗議の声が上がりました。
チアリーディングの本場アメリカでは、チアガールはスクールカーストの頂点、いわばリア充中のリア充を指すとともに、意地が悪い、傲慢、男のことばかり考えているという意味も含んでいたからです。ユリコがパンチラも厭わないようなミニスカートが定番だったこともあって、永田町のチーママだと書きたてた週刊誌もありました。
そもそも政治家に必要な要素とは…
ユリコの処世術に嫌悪を覚える人もいるでしょうが、私は致し方ないことだと思っています。列国議会同盟が発表した2016年の「議会における女性議員の割合の国別順位」によると、日本は163位で、主要7か国中、最下位です。その少ない女性議員の中には、世襲の議員も含まれます。つまり、ユリコはマイノリティー中のマイノリティーです。
政治には地盤(支持母体)、看板(知名度)、カバン(資金力)が必要とされています。血統書のないユリコは、田中真紀子や小渕優子のように、ネームバリューとイメージで良いポストが転がりこんでくる能性はほぼありません。
総務大臣の野田聖子は「週刊現代」(講談社)でユリコと対談し、「今もほとんどの女性政治家は、自分で地位やパワーを勝ち取ることができていません」「お酌が上手じゃないと、大臣になれない」と発言しています。
世襲である野田が苦労するくらいですから、ユリコの苦労は並大抵のものではなかったはずです。ユリコは防衛大臣や環境大臣を歴任しますが、マイノリティー中のマイノリティーが重要なポストを得たことで、「男にも、世襲のお嬢さん議員にも負けない実力派」というイメージを獲得するのに成功したのではないでしょうか。
そのユリコが、都知事選に勝利したことで、男に遠慮せず、自らの能力を存分に発揮できる場所を得ました。しかし、情報公開を掲げていたわりには、築地移転問題で財源や運営費を検討した記録を残していなかったり、自らが任命した特別秘書の給与に関する書類を黒く塗りつぶすなど、現行不一致の印象を受けます。気に入らない記者に対する態度も高圧的で、大人気ない。
ユリコはもともと「向いていない」が…
なぜユリコの都政がいまいちかというと、はっきり言ってしまえば、目立たない仕事がむいていないことに加えて、彼女がプロのチアガールだからだと思うのです。
チアガールに必要なもの、それは男性です。チアガールが踊るのは、強い男のためとは限りません。甲子園を思い出してください。強豪校のチアガールだけでなく、負けがほぼ確定しているチームのチアガールたちが、涙をこらえて健気に踊る姿が中継されます。男が強かろうと弱かろうと、踊りさえすれば自分に注目を集めることができる、それがプロのチアガールです。
かつてのユリコには小泉純一郎という強い男や、都知事選の際に「大年増の厚化粧」と暴言を吐いてユリコの健気さを引き立てた石原慎太郎がいましたが、都庁トップの今、そういう男性は周囲にいません。ユリコの衆院選での敗北は「オンナだから」ではなく、ユリコを引き立てる「オトコがいないから」に思えてならないのです。
まだオワコンではない。天井をぶちやぶるには!
今回の敗北を受けて、ユリコ・オワコン説もちらほら目にしますが、私はそうは思いません。ユリコには2020年の東京オリンピックという切り札がある。
オリンピックを成功させるために自民党と手を組まざるを得ないでしょう。
そこで、自分を引き立てるオトコを見つけることができたら。その時こそ、ユリコが天井をぶち破ることができるような気がしています。
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