金22「あなたには帰る家がある」が不倫・離婚・ダメ人間だらけすぎて見どころ満載!
OTONA SALONE / 2018年6月11日 17時0分
青春胸キュンもの、復讐劇、おっさんの恋愛となかなか楽しい春ドラマも終盤へ。中でも『OTONA SALONE』編集長がお気に入りということで今回書くのは『あなたには帰る家がある』(TBS系・毎週金曜22時放送)について。スタート当初から見どころが満載すぎると息巻いておりました。美しすぎる中谷美紀が中学生の母親役、え、玉木宏が不倫? 薄幸女優のパイオニア・木村多江も本気を出す??
回を追うごとにその人気を増し続けて物語はラストステージへ。毎週ニヤニヤしながら見ているうちに気づいた、本作の魅力について。
気づけば主要4キャストのダメ加減が露呈されていて笑う
平凡な共働き一家だったはずの佐藤家を襲ったのは、一家の主人である秀明(玉木宏)の不貞。その一件以来、家庭は崩壊を辿り続け、妻の真弓(中谷美紀)は一人娘を引き取って離婚することを決意した。秀明の不倫相手である茄子田綾子(木村多江)も夫の太郎(ユースケ・サンタマリア)と離婚をして、秀明と再婚を企む。その状況を太郎が許すはずがなく、4人の関係性は再び混線していく。
なぜ翌週が楽しみになってしまうのか。その魅力は主要キャストの4名(中谷、玉木、ユースケ、木村)が全員、人間としてのダメさを前面に露呈しているからなのではと思った。普通のドラマならまともな人間がひとりくらい登場して、事件に水を差すものだけどこのドラマに至ってはその気配は皆無だ。
まず出来心から浮気をするという佐藤秀明。個人的にだけどこのよく不倫沙汰の謝罪で使われる”出来心”という言葉が好きではない。会って、食事をして、ホテルに行って服を脱ぐ。この一連の行動はだいぶ時間がかかる。2〜3時間くらいの所要だろうか。下心と人間の性欲が動いているという無様な姿と時間をひと言で片付けるとは”出来心”はいかに便利な言葉なのだろうか。なら、私だってそこら中で使ってやろうかという気になる。
話を秀明に戻そう。まず浮気、そもそも自分では何も決めることができないような他力本願主義。だから綾子のストーカーを断ち切ることができず、ついフラフラしてしまう。人はそれを優しさと呼ぶかもしれないけれど、それは違う。ただの情けなさだけだ。第7話で秀明の会社の後輩・桃(高橋メアリージュン)から
「あんた何やってんの? 浮気も離婚も流されるままで……仕事だってそう! 今まで一回でも自分から動いたことあんの? だから奥さんに捨てられるんだよ! 調子に乗ってんじゃねえよ、オッサン!!」
と怒鳴り飛ばされたのは見ていて爽快だった。
浮気相手となった綾子も専業主婦で家庭へ献身的に尽くしているうちは、料理も上手で夜も旦那に奉仕する”良妻賢母”というポジションだった。でも秀明との愛欲に溺れて、彼女の中に秘めていた女が顔を出した瞬間に事態は急転。彼女は全女性から嫌悪感を示されて、男性からは恐怖感を覚えさせるストーカーに認定。第8話の全力疾走で真弓よりも先回りをして、秀明のアパートから登場するシーンはホラーだった。よくよく考えたらそんなに彼はいい男なのだろうか? でもそこしか居場所がない中年女に成り下がってしまった綾子。
そして昭和初期の男尊女卑の風潮を未だに引きずって生きる、茄子田太郎。妻は自分に従うべき奴隷と間違えている、偉そうな態度。結果、その妻には逃げられた。平成も終わろうとしているこのご時世に家事のひとつも満足にできない男とは……将来、子どもからお荷物扱いされるだけだ。
と、登場人物の特徴を並べているだけなのに、書いているだけでダメさは見事に露呈されていく。でもこれがこのドラマの醍醐味であり、視聴者が共感できるポイントだ。全家庭に起こる事件ではないけれど、誰もがその可能性を秘めている。そう思うと翌週の放送が楽しみになる。
中学生ママ役・中谷美紀さまが痛々しくてもなお美しく
そしてダメ人間のトリを飾るのは主演の中谷美紀さん演じる、佐藤真弓。旦那に浮気をされてその相手からの猛撃で、娘ごと恐怖に陥れられる。もともと竹を割ったようなサバサバした性格だからこそ、一連の事件をなかなか受け止められない。娘に浮気の事実を悟られまい、自分の育った環境と同じ母子家庭にしたくない。そう必死で頑張っている姿が痛かった。時には
「毎日毎日、家事と仕事に駆けずり回って24時間休みなしでお母さんやって、それでも疲れた顔するな? 手を抜くな? 料理をやれ? 6品作れ? それで旦那に浮気されないように若い女に負けないようにキレイでいろ? 笑顔を絶やさず女でいろ? そんなこと出来るか! 出来るわけないだろ!!」
と、怒鳴るシーンもあった。スカッとするかと思いきやなにか心がモヤっとする消化不良がする。ああ、夫に浮気をされた妻の威勢の良さとは痛いもので逆効果なのだ真弓が教えてくれた。なら虚勢を張らずに、ひたすら泣きじゃくっているほうが周囲にはいい印象を受けるのかもしれない。あの完全無欠の美人と言われた中谷美紀のビジュアルを持って演技をしても、周囲からはダメな女だと思われてしまうのだと。とはいえ、中学生の母親を意識したのかショートカット姿はめちゃくちゃ素敵だったけれど……ね。
結果、誰が悪いのか。そりゃ諸悪の根源は秀明だけど、4人のダメさやいろいろなことを回想するとループにハマる。そして来週の放送が楽しみになる。どうか最終回が普通のハッピーエンドにならないことを願いつつ。
≪文筆家、編集者 スナイパー小林さんの他の記事をチェック!≫
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