市川海老蔵、スターが抱える宿命。彼を取り巻く三人のオンナたち
OTONA SALONE / 2018年7月6日 21時0分
前世がどうとか、守護霊が誰とか言われると、へぇとかほおと言いながら鼻をほじってしまう私ですが、それでは科学で解明できないことは信じないかというと、そういうわけでもなく、むしろ縁やめぐりあわせを強く信じているほうかもしれません。
スターの条件とは何か?
目には見えない何かがこの世にある。それを感じずにいられないのが、スターという存在です。スターの人生というのは、一筋縄ではいきません。宇多田ヒカルの母、藤圭子はマンションから飛び降り自殺を図っています。安室奈美恵の母は義弟に殺害され、吉田美和は9歳年下の夫を不倫略奪して結婚に至りますが、夫は30代の若さで亡くなってしまいます。
スターに才能や運が必要なことは言うまでもありませんが、記憶に残るスターになるために必要な条件は、悲劇ではないかと思うのです。悲劇から立ち上がり、さらなる名声を生み出せる人、それがスターなのではないでしょうか。
歌舞伎俳優・市川海老蔵の妻、麻央さんが亡くなり、一年が経過しました。人生百年と言われる時代、30代の若さで幼い子を二人残して、麻央さんが旅立つことになるとは、誰にも予想だにつかないことだったでしょう。
特にファンでもない人でも、事態が飲み込めているかどうかもわからないお子さんの姿は、胸に迫るものがあったと思います。格差が広がる社会で、人々は余裕を失い、他人に共感しづらくなっています。しかし、人には誰しも母がいることを考えると、子どもを置いて母親が旅立つという麻央さんの悲劇は、すべての日本人に刺さる痛みだったといえるのではないでしょうか。
憔悴する海老蔵を見て私が思ったのは、やはりこの人はスターだということでした。つらい経験をすることで、本人の意志とは別に、自らの立ち直る姿、子どもの成長という見せ場を得たのです。スターとは、本当に皮肉なものだと言わざるを得ません。
光源氏と海老蔵の切っても切れない縁とは・・・
海老蔵は七月大歌舞伎で「源氏物語」を演じます。市川團十郎家と源氏物語のつながりは深く、海老蔵自身の初お目見得も「源氏物語」でした。
海老蔵は市川新之助であった2001年に、作家・瀬戸内寂聴が初めて歌舞伎の脚本を手掛けた「源氏物語」で、光の君を演じています。2004年の海老蔵襲名披露公演の際、寂聴は新作歌舞伎「源氏物語」を書き下ろしています。当時の「婦人公論」(中央公論社)で、寂聴は「海老蔵は女たらしで光源氏ぴったり」という意味の発言をしていたと記憶しています。
海老蔵が独身で、いろいろな女性と浮名を流していたころなので、そう言われるのも無理はないのですが、今の状況と照らし合わせてみても、確かに海老蔵と平安時代のスター・光源氏は似ている部分があるように感じます。
光源氏がモテ男であることは間違いありませんが、三歳で母親と別れた源氏は生涯を通じて、母の面影を追っています。母親に生き写しと言われた義理の母である藤壺、藤壺の姪である紫の上がその典型例ですが、この二人の女性とつきあっても、源氏の浮気心が収まることはなかった。つまり、「似た人」では満足はできないということでしょう。
愛する人と死に別れることはつらいものですが、先に旅立った人は、永遠の愛を得ると考えることもできます。記憶というものは実はあいまいで、ウソをついたり、美化することもあるそうですが、生きている人間は記憶の中の人間に勝つことはできないのです。海老蔵はこれから先、再婚も含めて海老蔵は恋をするでしょうが、麻央さんに勝てる女性はいないでしょう。麻央さんは永遠になったのです。
海老蔵が光源氏っぽいなと思うところが、もう一つ。
女性とモメないことです。歌舞伎俳優・片岡愛之助は、熊切あさ美と妻である藤原紀香との二股を騒がれ、結婚せずに子どもを設けた女性には「週刊文春」(文藝春秋社)において、一緒に暮らしていたのに、ある日突然いなくなる無責任ぶりを暴露されています。
海老蔵にも隠し子の存在が騒がれたことはありましたが、少なくとも相手の女性がマスコミに不満をもらしたことはありません。このあたりの行き届いたケアのよさは、やはりお育ちと言わざるをえません。
海老蔵は女優・米倉涼子と交際しており、結婚間近と報道もありましたが、米倉は女優の道を選びました。米倉は「ドクターX~外科医・大門未知子~」(テレビ朝日系)で高視聴率を記録し、ミュージカル「CHICAGO」でブロードウェイで主演を果たしています。
米倉の活躍は彼女の問題ですが、何かがうまくいかない時に、人のせいにしたいと思うのが人間というもの。米倉が日本を代表する女優に成長を遂げたからこそ「別れてよかった」と言えるわけで、恨まれずに済みます。海老蔵にしても「元カノが大女優」というのは、勲章です。米倉の活躍は、海老蔵にとっても「いいコト」なのです。
物語に秘められた「気持ち」とこの現実
源氏物語の娘たちの運命とは……
源氏物語といえば、エッセイスト・酒井順子は「紫式部の欲望」(集英社文庫)で、「源氏物語とは、作者である紫式部が、自身の秘めた欲望を吐き出すために書いた物語なのではないか?」と仮定しています。「男に連れ去られたい」「ブスを笑いたい」「モテ男に復讐したい」などの欲望のなかに「娘には幸せになってほしい」という気持ちが紫式部の中にあったのではないかと予想するのです。
瀬戸内寂聴はそれを裏付けるように「やりたい放題の源氏も、血のつながった母娘には手を出さない」と指摘していますし、実際、源氏の元カノの娘たち(秋好匂宮、玉鬘)は、安定した人生を生きています。これは自身も娘の母親であった紫式部の母心からだと思います。
海老蔵には麗禾ちゃんというお嬢さんがいます。歌舞伎の家に生まれた女の子は、舞台に上がれない疎外感を味わって成長するそうです。お母さんを亡くした影響だってないとは言えないでしょう。しかし、それでも、スターの血をうけついだ彼女は、それを乗り越えて幸せになる能力を持っていると私は信じてやみません。
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