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鈴木保奈美、第二次ブームで思い出される「90年代自傷型ヒロイン」の呪い

OTONA SALONE / 2018年10月12日 21時0分

芸能人は芸能人であることを、決してやめられない生き物だと私は思っています。

 

90年代、若手トップ女優だった鈴木保奈美(以下、ホナミ)が、ことあるごとに「女優がむいていない」「私はスーパーと家の往復で幸せになれるタイプ」と女性誌などで発言していた時、私は世の中のことを知らない子供でしたが、ホナミが専業主婦という地味な生活がおくれるはずがないことくらいはわかりました。

 

ホナミ・バブルを揶揄するオトコ、歓迎するオンナ

そのホナミがとんねるず・石橋貴明とできちゃった再婚をして、芸能界を引退します。あれだけのスターなのに引退会見も公演もなく、無理やりやめたという印象を私は持ちました。しかし、やはり子育てに一段落ついた2008年に仕事復帰し、2016年に「ノンママ白書」(フジテレビ系)で主演に返り咲いて以降、NHKの連続テレビ小説「わろてんか」、「主婦カツ」(NHK BSプレミアム)、「SUITS/スーツ」(フジテレビ系)などに出演、ホナミの出世作「東京ラブストーリー」(フジテレビ系)の再放送が高視聴率を記録しているということもあり、今は第二次ホナミブームと言っていいでしょう。

 

面白いのは、このホナミ・バブルについて、男女で視点が異なることです。「とんねるずのみなさんのおかげでした」(フジテレビ系)が打ち切られたことから、オジサン御用達・日刊ゲンダイは「暇な石橋貴明が超多忙な鈴木保奈美に突き付けた二つの条件」を報じています。石橋が暇をもてあまし、ホナミに「どんなに撮影が遅くなっても、家に帰ること」「夕方には家に一本電話を入れること」という条件をつけたり、「元カレ(フジテレビの元プロデューサー)と会っているのでは?」と疑心暗鬼になっていると報じています。

 

女性週刊誌はどうかというと、その反対です。「女性自身」(光文社)は「鈴木保奈美を変えた主婦経験 スタッフ仰天のリアル演技を見せる」という内容で、ホナミの主婦経験が演技に深みを与えていると書いています。「女性セブン」(小学館)では「鈴木保奈美、原田知世ら50代女優が、再び注目を集めるワケ」と人気の理由を好意的に説明しています。

 

妻がいきいきすると不倫しているかもと疑う男性と、これまでの経験を活かしていると好意的に解釈する女性。ホナミの心中はホナミにしかわかりませんが、私もホナミは今が一番楽しく女優をやっているのではないかと勝手に推察しています。

 

あのドラマの再放送で、私たちが思い出したこと。次ページ

「東京ラブストーリー」がアラフォーに残した呪いとは・・・

第一次ホナミブームの代表作と言えば、「東京ラブストーリー」(フジテレビ系)でしょう。私も若いころはリカに肩入れして見ていたのですが、年を取ってからもう一度見てみると、あ~と叫びたくなってしまう。リカが面倒くさすぎるのです。

 

このドラマで一番有名なセリフは、リカの「セックスしよう」でしょう。当時は女性からセックスを誘うことがセンセーショナルなことだったわけですが、本当にリカが奔放で、手当たり次第にセックスする人だったら「東京ヤリマンストーリー」になってしまい、女性の共感を得られないでしょう。カンチから見れば、「東京のオンナは軽い」と思ったかもしれませんが、視聴者は失恋して落ち込んだカンチがかわいそうで、こういう時に言葉が無力であることを知っているから、重くならないように奔放なオンナを演じてあげたという、リカの何重もの気遣いを知っているからこそ、引き付けられるわけです。

 

相手のためを思って何かをするというのは、愛情の証です。しかし、そのために自分の何かを犠牲にするとしたら、それは“自傷”です。しかし、往々にして若い時は、犠牲が大きいほど「それだけ愛している」と思いがちです。

 

なぜ自傷的な恋愛をしてしまうかというと、答えは簡単で「愛されたいから」だと思うのです。これだけ自分は犠牲を払ったのだから、きっと相手は報いてくれると思ってしまう。ドラマに影響され、悲しい時ほど明るくはしゃぐ、でもオトコに好かれないので陰で泣く、その結果、重くなってますます恋愛がうまくいかなくなるという90年代自傷型ヒロインの呪いの解けないアラフォー女性は多いのではないでしょうか。

 

独身女性の自傷の最たるもの、それは既婚男性との恋、つまり不倫だと思うのです。いくら愛されている実感があったとしても、優先順位は家庭のほうが上でしょうから、自尊心が傷つけられるでしょう。当時、保奈美はフジテレビの敏腕プロデューサーと不倫していると言われていました。人気女優と交際するのは勲章でも、妻子持ちの男性が本当に家庭を捨てるかは別問題。関係が煮詰まったからでしょうか、ホナミは江口洋介とのタヒチ旅行を写真週刊誌に撮られ(せ)たかと思うと、今度はモータースポーツジャーナリストと結婚してまもなく離婚など、ちょっと自暴自棄ともとれるような行動に出ます。ホナミを取材嫌いで態度も悪いと書いた週刊誌はたくさんありました。

 

しかし、石橋と再婚し、子どもをもうけた後は落ち着いたようです。結婚やお子さんを持つことがプラスに働いたのでしょうが、もう一つ、自傷をする必要性をなくしたことも大きいと思うのです。結婚前、遊び人として有名だった石橋ですが、今日まで女性問題を報道されていません。ホナミの自尊心は保たれているのです。

 

「愛され」を求めるまえにすべきこと

女性誌にはずっと「愛され」という言葉が使われています。愛されることが幸せへの近道だと思われているからでしょう。しかし、本当は愛されていないのではなく、愛をキャッチできていないのではないでしょうか。

 

たとえば、穴のあいた洗面器にどれだけ水をいれても、水は貯まりません。同様に相手が愛情を注いでくれたとしても、自分の心が穴だらけだと愛情を感じない。なぜ心に穴があくかというと、自分で自分の心を傷つける自傷行為をしているからではないでしょうか。

 

自分の心を傷つけるものは、人によって違います。不倫やセフレを筆頭に、毒親、出来のいい女友達、反対に出来がいいと思えないのに幸せな女友達、人によってはお姉さんや妹の場合もあるでしょう。自分の心を傷つけるものを早く見つけて、そこからきちんと遠ざかること、それが自傷行為をしないコツです。

 

若いころ、神経の細さや癇の強さを感じさせるホナミでしたが、時を経て、おちつきやまろみを感じさせるようになっています。もしかしたら、人を熟成させるのは、人に言えない経験や地味さなのかもしれないと思うのでした。

 

≪フリーライター 仁科友里さんの他の記事をチェック!≫

 

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