心の遠さを残酷に描く ハネケ監督の新作『ハッピーエンド』

OVO [オーヴォ] / 2018年3月14日 7時10分

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 内なる過激さがじわじわと迫る。何不自由なく、一見静かに暮らす人々の内面にある、目に見えない暴力性、それを自覚しながら意識的に盲目になる“人間らしさ”に、頬を打たれるような作品だ。名匠、ミヒャエル・ハネケ監督の『ハッピーエンド』が公開された。

 舞台はフランス・カレー。イギリスに渡りたい難民たちが集まるキャンプで知られた、フランス北部の町だ。その町の邸宅に住むロラン家。高齢の家長と、家業の建設業を継いだ娘、その息子たちの家族。ジャン=ルイ・トランティニャンやイザベル・ユペールなど、ベテラン俳優が見せる心の機微はもちろん、しばしば登場する携帯電話の画面と、つづられていくSNSメッセージの活字が、特別な役割を担っている。

 少女がスマホでこっそり撮影する母親の映像は、親子のとてつもない精神的距離を見事に映し出し、父親と愛人のチャットの活字も、“見知らぬ”家族の姿と、その遠さをつづる。手を伸ばせば触れられる距離にいる家族が、いかに遠い存在になり得るかを、スマホというツールが描き出す。

 家族や周囲の社会に対する無関心が、理解を阻み、不寛容な心の根を張り広げていく。そのスパイラルが、無関心ゆえに止まらない。家長の誕生日パーティーに、反抗的な息子が連れてくるのは難民たち。命をかけてフランスにたどり着き、不自由だらけの生活のはずの難民たちが、この一家の面々よりはるかに心安らかに見えるところが残酷だ。何も主張せず、ただ切り取られた場面が、見る者も覚えのある感情に容赦なく切り込んでくる。形や程度は違っても、誰もが心の隅に押し込んでいる“家族の病”が、浮かび上がってくるかもしれない。

text by coco.g

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