世界へ羽ばたくシンデレラボーイ 26歳の堀川未来夢、次は全英挑戦

OVO [オーヴォ] / 2019年7月17日 7時30分

全米オープンで豪快なスイングを見せる堀川(写真はゲッティイメージズ)

 国内男子プロゴルフ界で今シーズン前半の“シンデレラボーイ”といえば、日本大学ゴルフ部出身で26歳の堀川未来夢(ほりかわ・みくむ)だろう。プロ5年目でツアー初勝利を国内三大大会の一つ、ツアー選手権森ビル杯で飾り、5年シード、海外メジャーなどの出場権も獲得した。勝ち星に恵まれなかった苦悩を払拭し、一気に世界も視野に羽ばたこうとしている。6月の全米オープン選手権に続いて、7月18日からは全英オープン選手権に挑む。今、最も勢いのある選手の一人だけに活躍が期待される。

 人生のビッグウエーブはまず5月27日にやってきた。メジャー第3戦の全米オープン選手権(6月13~16日・カリフォルニア州ペブルビーチ)日本地区最終予選は、三重県の桑名CC(7210ヤード、パー72)で行われ、33選手が36ホールのストロークプレーで争った。市原弘大が通算13アンダーの131でトップ通過し、1打差で今平周吾。さらに1打差で堀川がチャン・キム(米国)と並び、堀川はプレーオフ2ホール目で10メートルのバーディーパットをねじ込んで初のメジャー大会出場権を勝ち取った。

 翌週はさらに大きなうねりが押し寄せた。国内三大大会初戦のツアー選手権森ビル杯(6月6~9日・茨城県宍戸ヒルズCC=7387ヤード、パー71)で、初日は6バーディー、1ボギーの66で1位発進すると、2日目以降も67、68でトップをキープ。最終日も5バーディー、2ボギーの68にまとめて通算15アンダーの269でツアー初優勝した。初日から首位を走る完全優勝だった。優勝賞金3千万円に5年シード、7月の全英オープン選手権の出場権などを獲得し、名前の通り「未来に夢」を膨らませた。

 第1ラウンドはスタートから圧巻のゴルフだった。ショット、パットがかみ合い、1メートル、3メートル、4メートル、4メートル、5メートル、10センチとパットを沈め、6連続バーディーを奪った。スタートホールからの6連続バーディーは日本ゴルフツアー機構(JGTO)発足の1999年以降では4人目の快挙だった。

 堀川が意気込んだのには理由があった。4月の国内初戦ではパットが思うように決まらず、同組の尾崎将司からラウンド後に指導を受けた。アドレスの手の位置や前傾の深さ、パターの長さなど。この日は再び同組で回る尾崎将への恩返しと位置づけ、張り切った。尾崎将はあいにく腰痛を抱え、「痛み止めを飲んだけど痛い。おまえのバーディーが終わったらやめる」と言いながらも我慢しきれず「ごめんな」と4番で棄権。それでも堀川の快進撃は止まらず、エンジン全開で4日間首位を突っ走った。

 もう一人、優勝を支えた人物がいる。バッグを担いだ清水重憲キャディーだ。イ・ボミ(韓国)の賞金女王獲得に貢献した名参謀で、今回が自身ツアー通算38勝目(男子18勝、女子20勝)。2年前のこの大会で初めてコンビを組み、その時の堀川の印象を「ツアー選手で一番下手だった」と語る。すぐに堀川に課題を出し①パターの距離感②アプローチ③120ヤード以内を5メートル以内に打てる技術―の習得を課した。堀川のことを磨けば光る原石とも感じていた。パットのラインを読む力は抜群で「目がめちゃくちゃよくて、ラインをほとんど外さない」と清水氏は高く評価していた。


 念願のツアー初優勝を、堀川は「夢だった。うれしいのが一番。でも初優勝まで長かったとは思わない。努力することは苦には感じなかったし、せっかくやるなら優勝した時の気持ちは、どれほどうれしいものなのか体感したかった」とかみしめた。一気にブレークし過ぎて、戸惑いも隠せない。「急に進み過ぎている。ひとつひとつ冷静になってプレーできればいいと思う」とも言葉を続けた。

 プレー中も笑みがこぼれる、みんなに愛されるキャラ。神奈川県出身で6歳からゴルフを始め、中学時代はソフトテニス部。厚木北高でゴルフを再開し、日大に進んでからは国体2連覇や関東アマチュア選手権、信夫杯争奪日本学生対抗戦に優勝した。大学4年の2014年に最終予選会のQTに挑戦し13位。ツアー1年目の2015年はブリヂストン・オープンで2位に入るなど初シードを獲得したが、1年で陥落してすぐ奪回。2018年はダンロップ・フェニックスの2位など、これまであと一歩のところで優勝に届いていなかった。

 大学卒業後も4年間は静岡県にある寮に住み、今オフも日大ゴルフ部の後輩達と一緒に合宿した。「学生とやると自分の意識も高くなる。自分の緩くなった気持ちを引き締めるためにもオフは学生とやるようにしている」とストイックだ。176センチ、85キロの体格。体重は学生時代の71キロから肉を食べて増やした。体重が重い方がゴルフも安定するからと説明した。

 勢いをそのままぶつけたその翌週のメジャー初挑戦、第119回全米オープン選手権(パー71)は、堀川にとって簡単ではなかった。コースは狭く、グリーンは小さい。海風の影響を強く受けるペブルビーチ・リンクスに対し、臆することなく挑んだが、壁にはね返された。73、75の通算6オーバー、148で予選カットラインには4打届かなかった。

 「緊張はしなかった」と言う初日、10番からスタートして8ホールで4ボギー。18番以降は4バーディー、2ボギーと巻き返したが、日本では経験したことがないグリーン周りの粘っこいラフに苦戦した。「日本とは全然違う芝質。グリーン周りからグリーンに乗せるのが難しく、入れたら1ペナルティーくらいの感覚。コースが難しくて景色を見る暇がなかった」と感想を漏らした。2日目はさらに難しいピンポジションに1番から出て13番までで7ボギー(1バーディー)をたたいた。終盤は意地で2バーディーを返したが、歯が立たなかった。

 それでも堀川の感覚では「初日は95点、2日目は80点ぐらいのゴルフをした」と言う。「外国人選手はラフからでもグリーンを捉えてくるのに対し、自分はラフに入ったらペナルティーになり、その差が出た」と感じた。世界で活躍するためには、課題に飛距離とラフからでも遠くに飛ばすパワーを挙げ、「ドライバーは、今はキャリーで260ヤードぐらい。300ヤードを確実に飛ばせるよう、290ヤードのキャリーは必要」と述べ、2年後を見据えての肉体改造も口にした。


 そして、いよいよ次は7月18日から4日間、北アイルランドのロイヤルポートラッシュGCで開催される第148回全英オープン選手権に臨む。北アイルランドでの開催は68年ぶり2度目。最古の歴史を持つ全英オープンは通常、スコットランドやイングランドが舞台となるが、ハリー・コルトがデザインしたこのコースはリンクス特有の起伏の多い土地に作られ、寒さや雨、さらに海からの湿った強い風に耐えながら優勝を争わなければならない。先の全米オープン選手権からは一転、選手は低めの弾道の球を打つことが要求され、堀川にはチャンスだ。

 アプローチは「50ヤード、100ヤード以内の勝負になったら、引けを取らない」と全米を戦って手応えを得た。「全英と全米では攻め方が違う。全英の方がグリーン周りのアプローチ、パットが大事になると思うので、しっかり磨きをかけて挑戦してみたい」とメジャー再チャレンジを心待ちにする。得意の小技を軸に、今度はどこまで戦えるか。堀川の挑戦は続く。

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