天野祐吉氏 レバ刺し禁止は国民を過保護にし飼いならす規制

NEWSポストセブン / 2012年7月22日 16時1分

「みんなで決めよう『原発』国民投票」の賛同者に名を連ねるコラムニストの天野祐吉氏は、雑誌『広告批評』の主宰者として、長年テレビCMや新聞広告を批評してきた。その天野氏が、原発にまつわるメディア・広告のあり方を分析し、今後の脱原発運動の新たな可能性を提言する。また、広告への規制とレバ刺し規制の関係についても解説する。

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 これまでの原発推進広告は、「なんとなく推進」の気分を作り出してきました。例えば、1988年に主要新聞各紙に出た電力各社、旧通産省、旧資源エネルギー庁の連名の広告。そこには「安全の確保のためにこんな努力を重ねています」と大書され、その下に小さな文字で「これだけがんばっています」ということが事細かに書いてあります。

 この広告、コピーも構図も下手くそです。覚えていますか? と聞いても誰も記憶にないでしょう。

 ただ、下手な広告に効果がないとは言えません。しつこく繰り返していると、なんとなく「原発は安全」であることを人の意識下に刷り込む効果はあるのです。

 目立つ広告は検証され、批判の対象になりうる。だから、人々の意識下に刷り込むには、下手くそな広告でよかったのです。繰り返し広告を出す資金力のある人たちにとっては、それも表現の仕方の一つだった。狙ってやったとしたら、実に巧妙な広告とも言えるでしょうね。

 脱原発の動きの中から、これから優れたコピーや表現、広告が出てきてほしいと思っています。ただし、メディアの事なかれ主義によって、それが難しいのも事実です。

 社民党は土井たか子さんが党首だった時代に、「本当に怖いことは、最初、人気者の顔をしてやってくる」という選挙CMをつくりました。人気者とは当時の小泉純一郎総理であることは言わずもがなで、これも『通販生活』同様、テレビ局側に放映を拒否されました。誹謗中傷に当たるというのです。

 政党の広告なら政策を議論するのは当たり前で、比較する材料を有権者に与えるのは当然のことなのに、テレビはそれを自主規制してしまう。一般の企業CMでも今は全部「当社比」でしょう。有権者や消費者は物事を判断する比較情報を与えられないという、大変不自由な環境にいるのです。

 適切な比較と、相手への誹謗中傷が見分けられないほど、国民はバカなのでしょうか? 過保護のように規制を強めると、国民はどんどん飼いならされ、本当に国の保護がなければ生きていけない弱い存在になってしまいます。

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