過当競争で廃止・休止続出 治療中に歯医者が「倒産」したら…

NEWSポストセブン / 2019年3月23日 16時0分

経営が苦しい歯科医院も少なくない(写真はイメージ)

 歯科医院に通う患者が向き合わなくてはならない問題は、「間違った治療」だけではない。近年、顕著に増えているのが歯科医院の倒産だ。通っていた歯医者が潰れた時、何が起きるのか。患者はどうすればいいのか──。

「もう治療しないなら、お金を返してください!」

 千葉県船橋市にある歯科医院の待合室で、患者たちの怒号が飛び交っていた。その前に立つ無精髭で普段着姿の男が、院長である50代の歯科医だった。

 千葉で3軒、沖縄で1軒の歯科医院を経営。日本小児歯科学会の認定医として矯正治療を行ない、インプラント、ホワイトニング、訪問歯科まで幅広く手がけていた。

 東京・高輪のプリンスホテルに近い高台に5階建ての自宅を持ち、車は1000万円以上するセダンやオープンカーのベンツ。とにかく羽振りの良さが目立っていたという。

 異変が起きたのは、昨年2月。理由も示さずに千葉県内の3歯科医院を休診にして、連絡が取れなくなったのである。患者の中には、矯正治療を受けるために、100万円超の費用を前払いしていた人もいた。

 船橋市の歯科医院に集まった患者たちに、歯科医はその翌週、費用を返すと答えたが、約束を果たさぬまま姿を消してしまった。

 それから1年──。この歯科医に直接話を聞きたいと思い、船橋市の歯科医院を訪ねたが、人けはなかった。壊れたまま放置された看板が、荒んだ雰囲気を醸し出す。派手だった歯科医の暮らしぶりからすると、歯科医院は随分と質素な外観だ。

 同じ歯科医が県内で経営する他の2か所も同様の状況だった。千葉市内の歯科医院は、さらに小さくて狭い建物で、誰かが侵入したのか、ドアのガラスが割れたまま放置されている。

「知り合いの母親が通院していたけど、“何度もしつこくインプラントを勧められて通うのをやめた”と言っていた」(近隣の理容店主)

 外房の九十九里浜に近い、東金市の閑静な住宅街に建つもう1軒も、駐車場に埃をかぶったベンツが2台あるだけ。オープンカーの後部には異様なほど大きな傷が付き、タイヤはパンクしていた──。

 この歯科医の財務状況を調べると、2017年11月、東京簡易裁判所が彼の所有する不動産について、仮差し押さえ命令を出していた。

 推定約1億7000万円の借入金があったという。以降、銀行や保証協会が次々に債権の回収に乗り出し、昨年12月には、競売にかかっていた歯科医の自宅が売却された。

 このケースからは、「金額が大きい治療費の前払い」が重大なリスクをはらんでいることが浮き彫りになる。

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