膀胱や腎臓など臓器のスキマに潜伏する「間質性炎症」の恐怖

NEWSポストセブン / 2019年4月11日 7時0分

医師も手こずる「間質」の病気

 3月26日に亡くなったショーケンこと萩原健一さん(享年68)の死因は、「消化管間質腫瘍」(GIST)という聞き慣れない病名だった。

 病名に冠される「間質」とは何か。NPO法人・稀少腫瘍研究会理事で、兵庫医科大学主任教授の廣田誠一医師(病理学)が解説する。

「間質とは、体内のあらゆる器官や臓器の“隙間”を埋めている組織のことで、それぞれの器官や臓器を支える役割を担っています。

 間質のがんは、消化管で起こるGISTが最も多い。一般的に、胃がんや大腸がんなどの消化器系がんは、臓器の表面を覆う上皮(粘膜)細胞ががん化することで発症しますが、GISTは上皮ではなく、その下層にあり、消化管を動かす働きを持つ『カハール介在細胞』という特殊な間質細胞が悪性腫瘍(肉腫)に変化して起こります」

 GISTは自覚症状に乏しく、患者が異変に気づきにくい。医師にとっても、上皮にできるがんに比べ、間質の壁の中にできる間質性がんでは、同じ検査を行なっても診断が難しい。

 例えば、加齢とともに増加する「前立腺肥大」や「過活動膀胱」、「膀胱炎」などと間違いやすいのが「間質性膀胱炎」だ。上田クリニック院長の上田朋宏医師(泌尿器科)が解説する。

「間質性膀胱炎になると1日に20~30回もトイレに行く頻尿が起こったり、尿道や膀胱に針を刺すような激痛が走る。

 通常の膀胱炎や過活動膀胱の症状と非常に近いため混同されやすいが、間質性膀胱炎の場合は細菌を抑える抗生物質を処方されてもほとんど効かず、なかなか治らない。

 一般的な膀胱炎は尿道から細菌が侵入し繁殖することで起こるので、抗生物質が有効ですが、間質性膀胱炎は細菌ではなく粘膜下層の間質に尿が染み込むことで生じるからです。診断がつかずに、8年越しで間質性膀胱炎だとわかった患者さんもいました」

 間質性膀胱炎は進行すると間質が線維化し、膀胱が萎縮してしまう。

「生理食塩水を注入して萎縮した膀胱を拡張させる手術しか保健適用の治療法はありません。新薬の開発も進んでいますが、一般の泌尿器科では見逃されやすいのが現状です」

 尿をろ過する働きを持つ腎臓にも「間質性腎炎」がある。一般的な腎炎が、糸球体(血液をろ過するフィルターの役割を担う組織)に炎症が起きて発症するのに対し、間質性腎炎は糸球体以外(間質)に炎症が起きる。

 自覚症状がないまま進行することが多く、ほとんどは健康診断などで腎機能の低下を指摘されて初めて発覚する。放置すると慢性腎不全を引き起こし、人工透析を余儀なくされることもある。福井大学医学部附属病院の髙橋直生医師(腎臓内科)が解説する。

「これまでは、抗菌薬や非ステロイド系消炎鎮痛薬などの副作用で起こる“薬剤性”の疾患と思われていましたが、近年では、薬剤性以外にも原因不明の間質性腎炎もあることがわかってきました。治療はステロイド投与が中心となり、いずれにしても早期発見が重要です」

 臓器のスキマに潜伏する病は研究も道半ばで、見つけ出すのも治療も一筋縄ではいかないものが多い。だからこそ注意を怠らないことが肝要だ。

※週刊ポスト2019年4月19日号

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