生産台数7600万台 ホンダ・スーパーカブのリニューアル秘話

NEWSポストセブン / 2012年8月19日 7時0分

 全世界での累計生産台数約7600万台(2011年末時点)。発売から54年経過した今も年間約400万台以上も販売する本田技研の顔ともいえる『スーパーカブ』が、2012年5月、全面リニューアルを敢行した。この50年以上にもおよぶチャレンジの歴史を振り返ってみよう。(文中敬称略)

 1983年に本田技研工業に入社した今田典博(二輪R&Dセンター企画室主任研究員)には創業者本田宗一郎(1991年逝去)との思い出があった。EVスクーターを試作した1989年のことだ。宗一郎が開発部署を視察に訪れることを知った幹部は、今田にこういった。

「鍵をつけていたら絶対に乗りたいといい出すから、しまっておけ」

 訪ねてきた宗一郎はスーツ姿にも拘わらず、床に膝をつけ、スクーターを隅から隅までなめ回すように見て、こういった。

「これは動くんか?」
「はい、動きます」
「じゃあ、鍵を持ってこい」

 試乗した宗一郎は満足そうな笑みを浮かべ、「ええなぁ~。なかなかええ!」を連発した。この時の光景は今も鮮明に思い出される。創業者の職人魂、技術への執着心を目の当たりにした経験は、今田にとってかけがえのないものとなった。

 2012年5月、ホンダは仕事バイクの定番『スーパーカブ50』(50cc)を全面リニューアルした。「そば屋の出前持ちが片手で運転できるオートバイを作ろう」という宗一郎の発想から生まれ、自身も心血を注いで開発されたオートバイは、優れた耐久性とリッター100キロ以上という驚異的な燃費で爆発的な人気を博した。ホンダの業績を牽引し、四輪メーカーとしての今の地位を確立した立役者として社史に刻まれた名車だ。

 その『スーパーカブ』のリニューアル話が持ち上がった。世界中の『スーパーカブ』の開発の総責任者である今田は「『カブ』の世界市場での立ち位置が変わってきた」という。

「日本市場で受け入れられるよう、騒音や燃費、排ガス規制、耐久性など非常に高度な水準を設定していたが、これが近い将来世界標準になることは明らか。中国や東南アジア製による低価格の二輪メーカーと戦うためには、従来の使い勝手そのままに、低価格帯へ向けて大きく踏み込まなくてはならなかった」

 低価格化の手段としてトップが打ち出した目標はエンジンやシャーシ(骨格)など全面改良した上で低価格化を図るというものだった。日本市場向け『スーパーカブ』の主力は50㏄モデル。しかし、世界市場の主力は『スーパーカブ110』(110cc)だった。

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