66歳伝説の彫師 見せ歩くタトゥーブームに「刺青とは別物」

NEWSポストセブン / 2012年8月24日 16時0分

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伝説の彫師・三代目彫よし氏

 今年の夏、目立ったものと言えば「タトゥー」と答える人が少なくないのではないだろうか。ビーチで街で、肌に模様や文字を入れた若者たちにやたら遭遇する。ファッションとして一気に広まりつつあるように見えるタトゥー。ただし、こうした現状を半ば苦々しい思いで見ている人がいる。日本の伝統刺青の巨匠・三代目彫よし氏である。日本の刺青は「隠す文化」と説く氏に、日本の伝統刺青と昨今のタトゥーブームについて聞いた。

 * * *
 1979年に三代目を襲名し、以来、7000人近くに刺青を彫り、伝説の彫師とも称される三代目彫よし氏。まずは、これまでの来歴について。

――そもそも刺青に興味を持たれたきっかけは?

「日本の伝統的なものが好きだったんだよね。刀とか、武士とか、男っぽい世界。で、中学生のとき、図書館で『文身百姿』を見つけて、衝撃を受けた。刺青を入れた人のグラビアがびっちり載っている本でね。あれは表現しようのない感覚だったね。別世界の人間に出会ったような衝撃。それから何度も何度もこの本を見ていました」

――実際に彫るようになったのはいつ頃でしょう。

「中学1年か2年の頃から、見よう見まねで剃刀で自分の体を切って、彫るようになった。そうしているうちに、友達からやってよって言われて。でも自己流だから全然ダメ。今のように情報もないしね。21歳のときに横浜で初代彫よしに彫ってもらって、弟子入りを志願したんです」

――彫師になってからの苦労は?

「好きな世界に入ったわけだから、どんなことも苦労とは思わなかったね。ただ、うちの師匠は何ひとつ教えてくれなかった。見て覚える、感じて覚える、想像して覚える。自分の体に彫ってみて、どうですかって聞くんだけど、『うん』だけ。『うん』の中に本音を見出さなきゃならない。職人っていうのはこういうもんだと実感したね。いまは情報が発達して、技術は簡単に習得できるようになった。でも職人文化が失われて、精神性が受け継がれなくなった」

 次に、若者がタトゥーを入れる状況についてどう考えているか聞いてみた。

「タトゥーという言葉はもともと日本になかったんですよ。アメリカンタトゥーが入ってきてから、ワンポイントの絵柄を若い子が気軽に入れるようになった。彫る側にも、『彫師』という感覚の人と、『タトゥー・アーティスト』という感覚の二通りいる。彫師は職人、タトゥー・アーティストは芸術家っていう意識を持っている」

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