母親が勝手に貴重なAVを処分、息子は損害賠償請求できるか

NEWSポストセブン / 2019年6月10日 16時0分

勝手に”お宝”を捨てられてしまったら?

 子供の部屋を母親が事前の通知なく掃除する──多くの人が経験したであろう“家庭の風景”だが、もし母親が捨てたのが、貴重なAVだったら、肉親に損害賠償を求められるのか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。

【相談】
 興味深い訴訟がアメリカで起きました。父親が成人している息子のAVを破棄したところ、怒った息子は父親を相手に約970万円の損害賠償を求めたのです。私も先日、母に大事にしていたAVを捨てられました。その中に今では入手困難な作品もあったのです。肉親の母に損害請求できますか。

【回答】
 他人物なのを承知の上、無断で捨てれば、所有権侵害の不法行為。捨てたことに正当な理由がない限り、損害賠償責任を負います。それなのになぜ、捨てたのでしょうか?

 ゴミ同然の状態だったから、片づけたのであれば、故意に財産権を侵害する意思や過失もないので、不法行為にはなりません。ゴミとまではいえなくても、古くて保管する価値もない、と誤解してもやむを得ない場合も同様でしょう。

 大切なものであれば、お母さんが間違って捨てないよう注意すべきでした。仮に不法行為だとしても、相当程度過失相殺されるはずです。ただし、大事に保管していることがわかっているのに、お母さんが捨てた場合は、不法行為といわざるを得ません。

 その場合、お母さんの廃棄行為に違法性を失わせる正当な理由があるかですが、所持自体が禁止の児童ポルノの廃棄なら、あなたを守るための行為となります。一種の緊急避難的な行為で、違法性がないといえるかもしれません。

 しかし、その他のお母さん側に立った反論が思いつきません。保管場所が親の家であれば、所有者のお母さんは、公序良俗に反するモノの撤去を求める権利があると思いますが、勝手に捨てるのは法の禁じた自力救済で、許されません。教育上好ましくないという理由かもしれませんが、未成年者ではないので、監護権やこれに基づく懲戒権もなく、正当化できません。以上により、あなたが賠償請求できないことはないと思います。

 損害賠償を要求して相手にされなければ、裁判提起も可能ですが、訴状でタイトル名などを特定し、なおかつ、そのAVを持っていたことを証明し、そして、お母さんが捨てたことも証明しなくてはなりません。それにしても、訴状に並ぶ、いかがわしいAVタイトル名は、見物かもしれませんね。

【プロフィール】1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。

※週刊ポスト2019年6月21日号

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