難病の51才日本人女性が安楽死を選択するまで、彼女の言葉

NEWSポストセブン / 2019年6月13日 11時0分

 ジャーナリストの宮下洋一氏はこのたび、その過程を記録したノンフィクション『安楽死を遂げた日本人』(小学館)を上梓した。同氏が取材に協力した『NHKスペシャル』(6月2日放送)も大きな反響を呼んだ。

 とりわけ家族に囲まれながら、小島さんが息を引き取るシーンが放映されたことは衝撃をもって受け止められた。穏やかな表情だった。最期に限らず、安楽死の日程が決まってからの彼女は、日増しに明るくなっていったという。次姉の貞子さんは話す。

「ミナちゃん、スイスに着いた途端、『私、この空気嫌いじゃないかも』と言ったんです。肩の力が抜けたようで、何かするたびに私たちに『ありがとう』と繰り返していました」

 小島さんは安楽死を迎えられることを「救い」と捉えていた。小島さんは生前、本誌にこう語っていた。

「安楽死は、私に残された最後の希望の光なんです」

◆死ぬ覚悟と寝たきりになる覚悟、後者の方が怖い

 彼女の存在を最初に報じたのは、2018年9月27日発売の本誌・女性セブンだった。医療技術の進歩とともに、現代人の平均寿命は飛躍的に伸びた。病床にあっても生き続けられる。延命が本人の意思であれば何ら問題はない。だが、希望に反して生かされている患者に「尊厳」があるかどうかを問う声は高まっている。そうした問題意識のもと、本誌は安楽死を希望する当事者を探した。すでに小島さんと連絡を取っていた宮下氏に協力を頼み、本誌は彼女と会った。

 新潟県の某病院。病室の扉を開けると、小島さんは、奥の傾斜が付いたベッドに腰掛けていた。呼吸器も装着してなければ肌艶もよかった。病室にいることを抜きにすれば、健康な女性にしか見えない。そんな彼女は、冒頭、思いもよらぬ言葉を口にした。

「たとえば今、ここに医師が現れて、この薬を1つのめば死ねますと言われたとしたら、すぐにのみますよ」

 彼女は言葉を継いだ。

「今は少なくとも、姉たちが見舞いに来てくれるから、幸せなんです。看護師さんも先生もいい。だけどそれは幸せということであって、楽しいということとはまた別なんですよ。あなたは幸せですかと聞かれたら、はいと言います。でも、楽しいですかと聞かれたら、返答に困ります」

 幸せだけど、楽しくはない。そんな複雑な思いを口にした。

 彼女が患う多系統萎縮症とは、5万人に1人が発症する神経性の難病。小脳などの異変によって、体の平衡感覚を失い、歩くことが困難になって、次第に言葉もままならなくなる。すでにインタビュー時には、呂律が回らないこともあった。

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