働く妻は在職老齢年金廃止の恩恵大 年収144万円アップも

NEWSポストセブン / 2019年6月22日 7時0分

年金増額のチャンスも

 政府は、6月11日発表の「経済財政の基本方針(骨太の方針)」で、働く高齢者の年金を減額する「在職老齢年金制度」の“廃止”を打ち出した。

 現在、60~64歳までは月給と年金の合計収入が28万円、65歳以上は47万円を超えると働き続ける限り年金がカット(支給停止)される。それを廃止し、“いくら稼いでも年金を減額せずに満額受け取れるようにします”というのである。早ければ2021年に廃止となるとの見方が有力だ。

 妻が厚生年金に加入している共稼ぎ夫婦であれば、年金増額のチャンスは広がる。女性は“得する年金”の特別支給を男性より長く受けられるため、在老廃止の恩恵がより大きくなるからだ。

 現在60歳(1959年生まれ)の女性は来年(61歳)から特別支給が始まる。雇用延長などで働きながら年金をもらえば、2年後の2021年に在老が廃止されると、65歳になるまでの3年間は月給+年金(特別支給)が28万円を超えても減額されずにダブルで受給できる。

 女性は現在54歳までの世代で“得する年金”がもらえる。現在54~60歳の世代は、年金カットを気にせずにフルタイムで稼ぐ働き方で夫婦の「老後資産」を増やすチャンスが生まれる。

◆ねんきん定期便を確認

 年金額はいくら得するのか。現在59~62歳(女性は54~60歳)世代を前提に試算したのが図である。

 まず、ねんきん定期便などであなたや共稼ぎの妻が65歳になる前にもらえる予定の特別支給の年金額を確認してほしい。

 次に雇用延長後の月給にあてはめる。例えば、現行の在職老齢年金制度では、年金12万円の人が月給30万円を稼ぐと年金が7万円カットされて月収は35万円だ。だが、在老が廃止されて年金カットがなくなれば全額の42万円がもらえて年収は84万円アップする。

 これが月給40万円、年金12万円になると現行制度では年金は全額カットされるが、在老廃止で年金全額支給となると月収52万円にハネ上がる。年収にすると144万円アップだ。

◆58歳以下の場合は

 この図の試算は、“得する年金”がもらえない現在58歳以下の世代(男性)が「繰り上げ受給」を選択し、65歳になる前に年金受給開始する場合にも適用できる。

 総じていえるのは、在職老齢年金の廃止によって、現状の「働くほど年金を損する」という理不尽な仕組みが、「働くほど得する」に変わることだ。

 本来、当たり前のことではあるが、現在はそんな当たり前の仕組みさえない歪んだ制度になっていることに改めて気づかされる。「年金博士」こと社会保険労務士の北村庄吾氏が語る。

「現行の在職老齢年金は70歳を過ぎても会社で働く限り死ぬまで年金減額の対象になる。中小企業の経営者などには総額6000万円以上の厚生年金保険料を国に支払っているにもかかわらず、年金の報酬比例部分は全額カットされて一生もらえないというケースもあるでしょう。

 そんな数々の矛盾を含んだ在職老齢年金制度を廃止するのは意味があるが、廃止するとなると、これまで働きながら年金カットされてきた世代と、年金カットなしで働くことができる世代に不公平感が生まれるという新たな問題もある」

 その通りだろう。しかし、裏を返すと、矛盾だらけの年金制度の下で老後を生き抜かなければならない国民にとって、制度の矛盾や不公平さまでもチャンスと捉えて、したたかに利用する知恵と工夫が必要なのだ。

※週刊ポスト2019年6月28日号

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