アルツハイマー病 脳の中でのみ糖尿病を発症している病態

NEWSポストセブン / 2012年9月1日 7時0分

 白澤卓二氏は1958年生まれ。順天堂大学大学院医学研究科・加齢制御医学講座教授。アンチエイジングの第一人者として著書やテレビ出演も多い白澤氏が、糖尿病とアルツハイマー病との関係について解説する。

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 米国ペンシルバニア大学医学部精神医学・神経学のスティーブン・アーノルド教授らの研究チームは、糖尿病を合併していないアルツハイマー病の患者の剖検脳を使って、神経細胞におけるインスリン抵抗性を調べた。

 もともと記憶を司っている大脳皮質の海馬と呼ばれる部分に最初に老人斑(アルツハイマー病で特徴的に観察される脳のシミ)が出現すると、海馬の神経細胞が死滅して、アルツハイマー病の症状の一つである記憶障害を起こすことが知られている。そこで、アルツハイマー病の患者で糖尿病を合併していない人の脳を調べた結果、海馬においてインスリンの効きが悪くなっていることが明らかとなった。つまり“脳が糖尿状態に陥っている”らしいのだ。

 さらに、このインスリン抵抗性を、軽度認知機能障害(MCI)の患者や認知症を発症していない患者の脳と比較・検討したところ、インスリン抵抗性は記憶障害の重症度に関連していることが分かった。また興味深いことに、これらの患者は全身の糖尿病は発症していないのに脳の中でのみ糖尿病を発症しているような病態だったという。アーノルド教授は、こう考察している。

「これまで糖尿病は、インスリンが全く分泌できない1型糖尿病と、インスリンの効きが悪くなる2型糖尿病とに分類されてきたが、アルツハイマー病は“3型糖尿病”と呼ばれるべき証拠が得られた」

 お昼に麺類やご飯などの炭水化物を摂取すると、食後1時間から1時間半ぐらいしてから、激しい睡魔に襲われるサラリーマンも多いと思う。お昼に食べた炭水化物は、食後の血糖を急上昇させる。食後高血糖は膵臓からのインスリンの分泌を刺激するので、高血糖になればなるほどインスリンがたくさん分泌される。過剰なインスリンは低血糖を引き起こすとともに、インスリンの効きが悪くなる。

 このインスリン抵抗性のために、集中力が低下したり、睡魔を引き起こしたりする可能性も指摘されている。脳内のインスリンの効き方は認知症を発症する前から日々の生活の中で脳の機能に影響を与えているのかもしれない。

※週刊ポスト2012年9月7日号



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