集団痴漢や強姦未遂に遭っても前向きな女の1人旅エッセイ

NEWSポストセブン / 2012年9月13日 16時2分

【書評】『ブラを捨て旅に出よう』(歩りえこ・著)/講談社文庫/630円

【評者】山下マヌー(旅行作家)

 失礼ながら、著者のことは存じませんでした。しかしながら、著者と編集者の作戦にまんまとハマり、タイトルに惹かれ思わず手に取ってしまったこの本。

 旅行本の類いでありながら旅の情報もノウハウも地図もなし。一言でいえば著者の超個人的な旅エッセイ。

 旅の始まりはアメリカ。留学のために150万円を持ってアメリカに行くも、「所持金150万円では大学の授業料は払えない」ことが判明。普通なら落ち込み、そこで一旦帰国となるところだし、そもそもそういうことは前もって調べてから出かけていくもの。しかしそこが「私らしいといえば私らしい」と、その150万円を持ってアメリカから世界一周の旅に。

 登場する21か国の中にはハワイやソウルなど、いわゆる日本人に馴染みの深い観光地は登場しないし、(実際はしているのかもしれないけれど)観光らしいこともほとんどなし。

 書かれているのは、バックパックスタイルでの旅行中にストーカーに追いかけられた話や、集団痴漢に襲われた話。強盗に襲われ首を絞められた話等など、旅行中の悲惨な体験が淡々と書かれているんです(中には、あまりに淡々としすぎて、「そこ、もっと詳しく知りたいのに!」と、突っ込みたくなるところもかなりあったりするのですけど)。

 しかしながらこの本はなんだか清々しいんです。普通の女性であれば、旅先でそんな目に遭ったら泣き出したくなるようなことでも、彼女はいつも前向き。おそらくそれは、心臓に問題を抱えていることが判明した15才以降、「お決まりの人生でなく、自分で決めた道を歩んでいく」と、そう決めた彼女の考えが旅にも貫かれているからなんでしょうね。

 だからラオスで裸で抱き合うカップルから3Pに誘われても、オマーンでレイプ未遂に遭っても、夜のサハラ砂漠でいきなり男性が上にかぶさってきても、いつも前向き。たった一人でこんなところに来た自分が悪かったとか、人を信じた自分が甘かったなどという反省は、微塵もなし。今この場所にいること、経験できたことを全て受け入れている、そんな潔ささえ感じてしまうんです。

 きっと彼女は旅をすることが生きている証であり、旅をすることでお決まりでない人生を歩んでいるのでしょう。だからこそ全てを受け入れることができる。

 彼女の言うところの、固定観念や当たり前にとらわれない「ブラに締め付けられない感覚」。それを楽しみたくなったら、みなさんも是非旅に出かけませんか!

※女性セブン2012年9月27日号



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