「切るべきがん・切ってはいけないがん」 違いはどこにあるか

NEWSポストセブン / 2019年8月19日 16時0分

そのガンは切る? 切らない?(写真/AFLO)

 8月8日、国立がん研究センターは、2009年から2010年にがんと診断された患者57万例を集計した最新の「5年生存率」を発表した。

 5年生存率とは、がんと診断された患者が5年後に生存している割合で、治療成果の目安となる。部位別(全期)にみると、5年生存率が最も高いのは前立腺がんの98.6%で、最低は膵臓がんの9.6%だった。医療経済ジャーナリストの室井一辰氏が指摘する。

「前立腺がんと膵臓がんで生存率が10倍近く違うことからも、がんの部位やステージによって治療効果が大きく異なることが読み取れます。治療しやすいがんがある一方、死に至るがんもまだ多いのです」

 ポイントは、部位やステージによって「治療内容」が大きく変わることだ。室井氏が続ける。

「これまでがんは『見つけたら切る』が常識でした。しかし今は生存率だけでなく、QOL(生活の質)を見据えた治療が求められるようになった。切除できたとしても、患者の術後の生活に大きな支障をきたすなら、開腹などの手術は避けるべきとの考え方が現われたのです。世界的にも、部位やステージによっては手術以外の治療法を選択する医師が増えています」

「切るべきがん」と「切ってはいけないがん」。その違いはどこにあるのか。

◆術後に生活が一変した

 今回の発表で5年生存率が上位のがんほど、状態によっては手術が必ずしもベストの選択ではないケースが出てくる。昨年、胃がんのI期で全摘手術を受けたA氏(75)が打ち明ける。

「手術によって再発の心配がほぼなくなったのはありがたいのですが、術後は食事量が半分ほどに減って、体がやせ細りました。さらに、食事は1日6~7回に分けて取らなければならず、そのうえ食後30分は安静にしなくてはいけない。食事が楽しくないだけじゃなく、それ以外の生活にも制限が大きい」

 日本人男性に最も多い胃がんは、I期の5年生存率が94.6%と100%近いが、術後にA氏のように落ち込む症例が少なくない。住吉内科・消化器内科クリニック院長の倉持章医師が指摘する。

「高齢者が胃を摘出すると、食事量が5~6割まで減って体力や筋力が激減し、術後のQOLが下がるリスクが大きい。身体が衰弱して他の病気になるケースもよく見られます」

 現在、胃がんI期の標準治療は低侵襲(体に負担をかけにくい)の内視鏡手術だ。

「患部のみを内視鏡の先のナイフで切り取る内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が主流です。早期の胃がんでは、なるべく胃を残す治療をすべきです。内視鏡専門医がいない病院や、がんのできた位置によっては、開腹して胃を摘出する手術を勧められることがありますが、基本的には避けたほうがよいと考えます」(倉持医師)

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