日韓歴史問題 被害者無視し反日運動を優先させたため複雑化

NEWSポストセブン / 2019年8月23日 7時0分

異常に盛り上がる反日運動の行方は

 異様な盛り上がりを見せる韓国内の反日デモだが、日韓関係について客観的事実を知る多くの韓国人が実は「文在寅政権は間違っている」と感じている。

 韓国の大統領府である青瓦台前では、毎週“火曜日デモ”が開催されている。主催しているのは日帝被害者報償連合会・会長の金仁成(キム・インソン)氏という人物だ。同会は約1万人が登録する太平洋戦争在韓被害者団体だ。金仁成氏はこう語る。

「私たちは、韓国政府が日韓基本条約で受け取ったお金を被害者や遺族に返すべきだと考えています。徴用工問題でも、日本の(河野太郎)外務大臣は日韓基本条約に基づいて韓国政府が払うべきだと話していますよね。その通りなのです。このデモは2018年にスタートし、毎週開催していますが、いまだに韓国政府からは回答がありません」

 日本外務省は7月29日、1965年の日韓請求権協定に関する交渉記録を公表した。記録によると1961年5月10日に開催された協定交渉小委員会会合で韓国側代表は「強制的に動員し、精神的、肉体的苦痛を与えたことに対し補償を要求する」と言及している。

 韓国側は徴用工への補償を要求し、日本側も対応。つまり日韓請求権協定は、徴用工問題を含める形で「完全かつ最終的に解決された」と明記されるに至った。韓国では2005年の段階で交渉記録が公開されており、金仁成氏らもこうした事実を踏まえ火曜日デモを行なっているという。

 徴用工裁判では対日本だけではないトラブルが起きていたと金仁成氏は明かす。

「実は私のもとに、ある徴用工裁判の原告が相談に来ました。その方は徴用工遺族なのですが、判決後に日本企業の資産差し押さえ手続きまで行なったのは弁護士が勝手に始めたものだと言っていました。差し押さえ手続きや、企業に押しかけるなどの一連の圧力行動は弁護士らの考えで行なわれ、一部の遺族には相談すらなかったそうです。弁護士らの行為が日韓関係を悪化させる原因になったことで、一部の遺族はとても困惑しているようなのです」

 日韓の歴史問題は、その多くの場面で市民団体や弁護士が実被害者を無視し、反日運動を優先させてきたことで問題が複雑化していったという歴史がある。実は徴用工裁判においても同じ現象が起きていた、というのだ。

 光復節をピークとするように韓国内で猛威を振るった反日運動。しかし同時にその歪すぎる構造や矛盾も、取材や証言により浮き彫りになってきた。前成均館大学校名誉教授(経済学)の李大根(イ・テグン)氏もこう嘆く。

「文在寅政権は歴史問題や経済摩擦で反日ムードを煽り、国民を結集させてきました。でも韓国内には、実は中道の考えを持つ人も少なくない。本音は違っていても、反日や不買運動に流されてしまう人がとても多いのです。それは近代的な市民階級にまだ韓国国民が成長できていないという証の一つなのだと思います」

 信頼ある日韓関係を再び築けるようになる日は、果たしていつになるのか──。

●取材・文/赤石晋一郎(あかいし・しんいちろう)=『FRIDAY』『週刊文春』記者を経て今年1月よりフリーに。南アフリカ・ヨハネスブルグ出身。

※週刊ポスト2019年8月30日号

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