証券会社 大口投資家ばかり優遇し、一般投資家はゴミと考える

NEWSポストセブン / 2012年9月21日 7時0分

 株で勝つのは難しいといわれるが、唯一絶対に儲かる方法が事前に内部情報を入手し売買するインサイダー取引だ。そして外国人ながらもインサイダー情報で大儲けしたアメリカ人男性がいる。

 その男性の名前はエドワード・ブローガン、53歳。日本の証券界で最も知られたヘッジファンドマネージャーの1人で、彼が運営するシンガポールのファンドは日本株の売買で圧倒的な力を持っていた。

 しかし、彼は6月29日、「増資インサイダー」の疑いで証券取引等監視委員会(SESC)から課徴金の支払いを命じられ、その後、日本から姿を消した。

 アメリカ人ながら流暢な日本語を操るブローガン氏は、外資系証券会社を渡り歩いた後、2000年に米大手ヘッジファンドの傘下の投資助言会社「ジャパン・アドバイザリー合同会社」のトップに就任。年収は数十億円、資産は数百億円にのぼるという。

 ブローガン氏がSESCの摘発を受けたのは、上場企業「日本板硝子」にまつわる「増資インサイダー」だった。2010年8月20日、増資発表の4日前に大量の「空売り(*注)」を行ない、約1600万円を不正に儲けたのだという。

 増資インサイダーとは、簡単にいえば企業の公募増資情報を利用したインサイダー取引のことだ。企業が増資すると発行株式総数が増え、1株あたりの価値が目減りするため、株価が下がりやすい。そこで企業が増資を発表する前に空売りし、発表後、株価が下がったところで買い戻せば、その差額分が利益となる。

 今年春から夏にかけて、こうした増資インサイダー事件が5件続いて摘発された。「みずほフィナンシャルグループ」や「国際石油開発帝石」、前出の「日本板硝子」の増資では、いずれも野村證券が情報漏洩に関与し、強い批判にさらされている。

 SESC幹部が憤る。

「証券会社では、インサイダー情報が漏れないよう、投資銀行部門と法人営業部門の間に“チャイニーズウォール(万里の長城)”と呼ばれる社内情報の壁が設けられなければならない。

 野村は2008年にM&A(企業の合併・買収)情報でインサイダー取引を行なった社員が逮捕される不祥事を起こし、壁の強化など防止策を打ち出していた。ところが野村が6月29日に発表した調査報告書では、この壁が崩壊し、組織ぐるみで情報漏洩を行なっていたことが明らかになった。

 たしかにインサイダー取引が重い罪ではなかった1980年代、証券マンは社内に落ちていた情報で個人的に株の売買をして稼ぎ放題だった。だが、そんな低いモラルのままなのは世界でも日本の証券市場だけ。断じて許すことはできない」

 東京証券取引所は、2009年以降に公募増資が公表された1部上場銘柄の公表直前1日の売買高と、それ以前の1か月の平均売買高を比較して、増加率が高かった20銘柄を民主党に報告した。

 つまりインサイダー取引が疑われる増資案件のリストである。前出の日本板硝子などに加え、全日空(公表日は2009年7月と2012年7月)や、りそなホールディングス(2011年1月)、NEC(2009年11月)などの名前が並ぶ。摘発された野村の3件は氷山の一角にすぎないのだ。

 一部の投資家がインサイダー取引で得た巨利は、その他の大多数の一般投資家の犠牲の上に成り立つ。『インサイダー取引で儲ける人たち』(アスペクト刊)の著者・高島ゆう氏がいう。

「証券会社は大口投資家ばかりを優遇し、一般投資家はゴミと考える。100万円投資する一般投資家が100人いても1億円にしかならないが、大口投資家なら1人で数億円、数十億円という投資が行なわれ、莫大な手数料が入る。

 どちらに“とっておきの情報”を与えるか――。証券会社は当然、自分たちのメリットを考えて行動する。誤解を恐れずにいえば、テクニカルやファンダメンタルズの分析などのテクニックでは儲けられない。一寸先は闇の投資の世界で、確実に儲けられるのはインサイダー取引だけなのです」

【*注】空売り/株価の下落を予想して、証券会社から株を借りて市場で売却し、その株が値下がりした時点で買い戻し、その差額で利益を得る投資方法のこと。

※週刊ポスト2012年10月5日号



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