高齢者の孤食を防ぐ「シニア食堂」 4人で始まり今は60人に

NEWSポストセブン / 2019年10月17日 11時0分

調理指導の漆崎邦子さん(手前。崎は「立」の方)

 高齢化が進む日本社会。一人暮らしの高齢者は増えるばかりで、ひとりで食事をする“孤食”も欠食、健康不良、うつ、さらには死亡にも関連するということで、問題視されている。

 そんななか、千葉県流山市で高齢者の孤食を防ごうと始まったのが、みんなで作って食べる朝食会『シニア食堂』だ。開始早々笑いと活気が満ちあふれ、なんとも楽しい会なのだ。

◆好奇心をくすぐるレシピで食への関心を誘う

 千葉県流山市の南流山センター・調理室に集まったのは、ボランティアを含む60~80代の18人。うち5人が男性だ。

 会員制で顔見知りが多いこともあるが、仲よく和気あいあいとした雰囲気。月1回の『シニア食堂』を楽しみに、意気込んで参加しているのがわかる。

 この日のメニューは韓国風焼肉とナムルのビビンパ、クリームコーンスープ、いちじくときのこの秋の酢の物。

 レシピ作成と調理の指導をする漆崎邦子さんは、

「シニアのみなさんは、長年、自分の家庭料理に親しんでいるので、簡単でも新鮮なおいしさがあり“家でも作ってみよう!”と思えるよう工夫しています。たとえばスーパーでよく見るけれど使ったことがない調味料や食材。今回はいちじくをデザートではなく酢の物に。そんな“好奇心”を大切にしています」

 ナムルの野菜はレンジ蒸しであっという間に下ごしらえできる技に、70代のベテラン主婦たちは口々に「これなら野菜がいっぱい摂れるじゃない!」。なるほど、随所にワクワクがちりばめられているのだ。

◆女性の手際のよさをリスペクト。食を通してさまざまな思いが

 調理を主導するのはやはり女性陣だ。少々ぎこちない男性の卵の溶き方を「菜箸を束ねて持って縦に動かすのよ」と女性がレクチャー。それでもうまくできず、スープの中の卵がまだらになったが、「まあ、これもありだね」と一同で大笑い。技術の習得ではなく、この場をみんなが楽しもうとしている。

「ここでのレシピを綴じて、気に入った料理は何度も作っています。しかし、つくづく女性はすごいねえ。料理が上手にできる。男はダメだ(笑い)」

 そう語ってくれたのはこの日最年長の85才の男性。30年近く前に妻と死別し、以来、自己流で料理をしてきたが、ここでしっかり習おうと思っているという。女性たちの手際や塩梅を実によく見ていて、85才にして少年のような探求心が魅力的だった。

◆食の感動は次につながる ひとりの食卓も豊かに

『シニア食堂』を主催するのは、婚活支援のNPO法人。かつてシニアの婚活支援をした中で、多くのシニアは結婚相手より、話し相手や一緒に食事をする相手を求めていると気づいたのが発端だという。おひとりさまでも孤立せず、継続的にみんなに会えて、QOLに直結することを考えて『シニア食堂』を企画した。

 2017年のスタート当初は会員数4人だったのが、今は60人超の盛況だという。同法人副代表の松澤知沙さんは、こう話す。

「シニアにとって、誰かと時間を共有することは大事ですが、参加した時だけが楽しいのではだめ。料理のおもしろさ、おいしいものを食べた感動や共感が、その人のひとりの時間も潤すというのが食の力だと思います」

 これからますます増えると思われる独居高齢者の孤食に、本人が料理を楽しむことで挑めるのではないか。『シニア食堂』の生き生きとしたシニアたちを見て思った。

※女性セブン2019年10月31日号

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