金田正一さん、400勝は一度も自慢せず298敗365完投誇った

NEWSポストセブン / 2019年10月21日 7時0分

原監督との1枚

 プロ野球の国鉄、巨人で前人未到の400勝を挙げ、本誌・週刊ポストの「誌上総監督」としてご活躍いただいた金田正一さんが、10月6日に逝去されました(享年86)。その死を悼み、カネやん担当30年の記者・鵜飼克郎氏が、感謝の言葉を綴る。

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「他人様から言われなくても、わかっとる。大きなお世話だよ。ワッハハハ」

 今年の夏、プロ野球史上最高の選手を選ぶ企画で金田さんが堂々の1位になったことを伝えると、こんな答えが返ってきた。そして、少し遅れて照れ笑いを浮かべた。

 不世出の400勝投手。だが私は金田さんの現役時代を知らない。漫画『巨人の星』で星飛雄馬に大リーグボールを編み出すよう進言した人、というイメージだった。ただそんな私にも、金田さんが400勝を自慢したことは一度もない。誇るのは決まって、298敗と365完投だった。

「巨人に打ちのめされ、マウンドに崩れ落ちるワシの姿を見るために、ファンは球場に足を運ぶんだ。(貧打の)国鉄は相手を0点に抑えないと勝てない。だからワシが投げるしかない。マウンドにグローブを叩きつけ、ベンチで椅子を蹴り上げるなど、悪役に徹しながら最後まで投げたよ」

 と、任されたマウンドを最後まで守ることに誇りを持っていた。とにかく全てが豪快だった。スピードガンのない時代に何キロ出ていたか聞くと「180キロは出ていた」と答え、私が戸惑う様子を見るとこう続けた。

「国鉄時代、地方球場での阪神戦。ワシが投げるたびに阪神の選手が首を傾げていた。そのうちタイムがかかり、審判がバッテリー間の距離をメジャーで測り始めた。球があんまり速いから距離が短いのではと疑ってきたんだ。それぐらいワシの球は速かった」

 金田さんは週刊ポストでは王貞治氏、長嶋茂雄氏との「ONK座談会」を筆頭に、話題の美女をゲストに秘話を聞き出す「美女対談」やグラビア撮影にも挑戦。「週刊ポストのせいで殿堂入りが10年遅れた」とボヤいていたが、明るいキャラクターは「カネやん」の愛称で誰からも愛された。テレビ番組でジャイアント馬場と戦ったり、横綱・輪島と土俵入りをしたり。ロッテ監督時代の“カネやんダンス”、日本テレビでの巨人贔屓の野球解説も、すべては野球人気を高めるためのパフォーマンスだった。

 金田さんが一度だけ「大リーグで投げてみたかった」と漏らしたことがある。日本人がメジャーで活躍を始めた頃だ。1955年の日米野球でミッキー・マントルから3打席連続三振を奪ったことがあり、「大リーグでも通用した」と話していた。時代が時代なら、本当に海を渡って大活躍していたかもしれない。

 記録にも記憶にも残る野球人・金田正一さんに、心よりご冥福をお祈り申し上げます。

●文/鵜飼克郎

※週刊ポスト2019年11月1日号

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