中曽根氏 安倍氏の前回の首相退陣は国政に対する責任感による

NEWSポストセブン / 2012年10月12日 16時0分

 尖閣問題などで漂流する日本の政治。外交について最高権力者にはどのような覚悟が求められるのか。4年11か月に及ぶ長期政権を担った中曽根康弘元首相が語る。

――安倍晋三元首相が自民党総裁に選ばれた。だが、首相時代には体調不良を理由に途中で職をなげうった。

中曽根:安倍君の祖父である岸(信介)さんは一念を持って愛国に徹していた。その背中を見ていたからだろう、安倍君にその信念は受け継がれている。本格派の政治家だと期待していたし、今も期待している。あのときは体調も考えて、国の政治に対する責任感から身を引いたのだと思う。その後も志を変えないで歯を食いしばって政治家としての修養に努めた。吉田松陰以来の長州の政治家の伝統を引き継いでいると思う。

――総裁選では5人の候補全員が、尖閣諸島でもめている中国にもっと厳しく対峙すべきだと主張した。

中曽根:領土・主権は、政治家、特に総理大臣にとって命にかえて守るべき重要なものだ。「不脅威、不侵略」の方針を掲げつつ、主権を擁護する。領土問題についてはそのような信条を堅持することが要諦だ。特に近隣外交については、総理大臣の信念を周辺国の人々が見ている。信念の強さが国の運命に大きな影響を与える。総理大臣は日本の運命を背負っていると自覚すべきだ。

――日本が弱腰だと相手はより強く出てくる。

中曽根:中国外交をよく見ていると大変に興味深い。最近は非常に洗練されてきている。影を潜めて表に出ないで実力を養う、「韜光養晦(とうこうようかい)」という一言で自分の立場を表明している。多弁を要せずに、周辺国に事態を理解させられる。中国外交の重み、深みが見える。

 外交というものは時間、歴史が非常に大事だ。つまり末永くものを考えて対処するということだ。日本の政治家でも、例えば竹島問題では河野一郎が“しばらく触らんでいい、そういう外交がある”と考えて、解決を急がず将来の世代に委ねる方針でやってきた。尖閣についても同様の方針が受け継がれている。つまり、主権を擁護するという強烈な信条と、歴史と時間をかけて守り抜くという信念。その双方が必要だ。

――国有化には寝た子を起こしたとの批判もある。

中曽根:尖閣諸島の国有化については、もう少し時間をかけて見てみないと功罪は判定できない。本来、日本の領土であるものについては法的、政治的条件を十分に整えておくというのは政治の一つの要件だ。野田総理はそれをやったのだろう。着手するにあたって外務省が内閣と一緒になって相当研究したと思う。

※SAPIO2012年11月号



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