プロ野球の審判員 試合後のメシに三塁塁審が誘われない理由

NEWSポストセブン / 2012年10月26日 7時0分

 プロ野球では選手がもちろん主役だが、なくてはならない存在が審判だ。彼らなくして試合は成立しない。審判には隠れざる苦労がある。

 ひとつ例をあげると、審判はかなりの重装備である。ユニフォームの中にレガースとプロテクター、安全靴仕様のシューズ……。球審のフル装備は合計5kgにも及ぶ。この格好で試合終了まで立ちっぱなしだ。選手はベンチに座れるが、審判は座るわけにはいかない。そのうえ意外と走る機会が多く、見た目以上に体力を使う。

「一度、球場で審判の動きを見てみてください。自分の担当だけ見ていればいいわけではなく、打球の一番近くの審判が判定のために追いかけ、それに応じて他の審判も動いています。実は、審判ほど試合中に動き回るポジションはありません」(元セ・リーグ審判・篠宮愼一氏)

 そのため、日頃の鍛錬は欠かせない。審判の1日(ナイターの場合)は、午前10時頃に起床して散歩やジョギング、あるいはスポーツジムで軽く鍛えることから始まる。肩や腰に疲労がたまっている場合は、整体治療に出かける者もいる。

 試合開始2~3時間前までに球場入り。試合前の練習時に、「目慣らし」のためバッティングケージの後ろに入ることもある。その後シャワーを浴びて軽食。このとき、水分の摂りすぎは要注意。試合中はトイレに行けないのだ。

 試合をこなした後もすぐには帰れない。出場審判で行なう反省会があり、微妙な判定についてはビデオを使って議論になることもある。退場など大きなトラブルがあった場合は、報告書を作成しなければならない。そのためどんなに早くても、帰宅できるのは深夜11時から真夜中過ぎ。床に就くのは明け方近くになる。

 一軍レギュラーであればこれを4カードほど(約12試合)務め、次の1カード(3日間)が休みになるのが基本。現在は5人審判制が取られているため、担当は原則として一塁→二塁→三塁→球審→控え審判のローテーションとなる。元パ・リーグ審判員の新屋晃氏が語る。

「監督の抗議が多いのは得点に絡む三塁でのクロスプレー。そして一番プレッシャーがかかるのは球審ですね。球審をやれば1試合で3~4kgは痩せました」

 そのため「暗黙の了解」もある。前出・篠宮氏の話。

「試合後に審判同士でメシを食ったりもしますが、三塁塁審は誘わない。翌日が球審だし、ナーバスになっていることが多いんです」

 このためか、審判には特に胃の不調を訴える人が多いという。篠宮氏も何度となく胃痙攣に悩まされた。また、不幸にも夭逝する人も後を絶たない。『プロ野球審判ジャッジの舞台裏』(北海道新聞社刊)著者で、元パ・リーグ審判員・山崎夏生氏も、29年の審判生活の間に3人の同僚の死に遭遇した。胃がん、脳梗塞、心筋梗塞……いずれも40代の若さだったというから、ストレスの大きさが窺われる。

※週刊ポスト2012年11月2日号



【関連ニュース】

NEWSポストセブン

トピックスRSS

ランキング