東京で働く地方出身者、帰省時に「東京の人」扱いされる苦悩

NEWSポストセブン / 2020年1月5日 16時0分

 ネットが発達し、通信販売でたいていのものが手に入り、情報も入手できる時代に東京暮らしと地方住まいの差はそれほどないはず……というのは、それらの情報類を上手に使いこなせる人だけ。正月の実家帰省には、地元で暮らす旧友たちの無茶ぶりに応え続ける努力がもれなくついてくるという首都圏で働く人たちのぜいたくかもしれない悩みを、ライターの森鷹久氏がレポートする。

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「すっかり私“東京の人”になってしまいました。ただ東京に住んで、東京で働いているだけなのに…」

 昨年末、東京から中国地方の山間部にある実家に帰った新藤優人さん(仮名・30代)は、今回も地元の幼馴染や先輩、後輩から“東京の人”扱いをされたと訴える。新藤さんは高校卒業と同時に、専門学校へ通うために上京し、そのまま都内のIT系企業に就職した。特段、新藤さんに都会への憧れがあったわけではない。

「エンジニアになりたいという夢があり、その為には大阪か東京の専門学校に行くしかなかったんです。地元や最寄りの大都市である広島や岡山に仕事があれば、実家に帰りたいという気持ちはあるのです。田舎が嫌だ、ということでは全くないのです」(新藤さん)

 地元で酒を飲んでいると「お、地元を捨てた奴が帰ってきとる」と先輩にからかわれ、友人からは「東京のモンはやっぱ違うね」と、嫉妬の入り混じったいじられ方をされる。最初は「俺は都会に住んでいるのだ」という優越感がなかったわけではない。ただ、もう十数年もしつこくこう言われ続けると、嫌気もさすし、そろそろ腹も立ってくる。かと思えば…。

「今度ディズニーに行くから自宅に泊めろ、飛行機や新幹線の安いチケットを取りたいとか、無茶振りとしか思えないお願いをされます。自宅はワンルームのアパートだし、ディズニーなんか行ったこともない。青山のどこどこに行ったことはあるか、吉祥寺は?目黒は?浅草は?と観光の事も聞かれますが、オシャレには無縁だし、美味しいレストランだって全く知りません。地元の連中は東京の人はみんなオシャレでグルメだと思っているみたいなんです」(新藤さん)

 長崎県出身で、東京・有楽町の税理士事務所に勤務する松山ひかるさん(仮名・20代)も、帰省のたびに“東京の人”扱いをされるという複雑な心境を吐露する。

「長崎のど田舎出身で、友人のほとんどは田舎に残り、高校卒業から間も無く同級生や近しい人と結婚しました。東京に出られていいね、と言われるくらいならいいのですが、帰省のたびに“東京の流行情報”を求められたり“オシャレなお土産”を求められたり……。私はただ実家に帰って、昔話をしたりゆったりして過ごしたいだけなのに……」(松山さん)

 松山さんの住まいは、実は埼玉・戸田市。電車一本で職場まで通え、都内よりも家賃が安く、静かな環境が気に入って住んでいるのだが、以前地元の友人に問われた際、面倒で「住まいは東京」と言ってしまった為に、今も嘘をつき続けているともいう。

「だから正月帰省の前には“王様のブランチ”(TBS系)みたいな都内の飲食店、ショップ情報をテレビやネットで調べるようになってしまいましたね……。お土産も“東京ばな奈”ではダメで、毎年、表参道や青山、中目黒で人気のお店を調べて買ったり…。以前は確かに“東京っていいよね”と言われて気分も良かった。でも今は、無理して“東京の人”を演じているだけ。苦痛です」

 あなたの周りにいる「東京の人」も、実はこうした苦悩を、ひっそりと抱えているのかもしれない。

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