肝臓がんは「個数」や「大きさ」によって切らない判断もある

NEWSポストセブン / 2020年2月28日 7時0分

切らないという判断もある

 健康診断や人間ドックで「異常あり」と判定されると、大病院や専門病院などで精密検査が行なわれる。その結果、重大疾患が見つかれば、医師と治療方針について話し合うことになる。その際、第一選択肢として提案されることが多いのが「手術」だ。

 典型的な例が「がん」だ。CTなどでがんが発見されると、医師から「すぐ切ったほうがいいでしょう」と提案されることは多い。

 だが、「必ずしも『切る』だけが正解とは限りません」と、医療経済ジャーナリストの室井一辰氏が指摘する。

「早期のがんは『見つけたら切る』が常識ですが、がんの種類によってはそうではなくなってきた。近年は生存率だけでなく、患者のQOL(生活の質)を見据えた治療が求められるようになり、部位やステージに応じて手術以外の治療法も組み合わせるケースが増えています」

 その判断は、個々の患者の状態や価値観によって変わる。

「切除しきれない進行がんで、手術後に再発してしまう可能性が高いならば、手術によってQOLが低下するのを避ける考え方もあるのです」(室井氏)

 後悔のない選択をするために大切なのは、様々な検査を経て診断が確定した後も「切らない道」を完全に排除しないことだ。

「とくに外科医は『治療の根幹は切除』という考えに偏りがちで、患者に手術を勧めることが多くなってしまう。

 病状によっては早く切ったほうがいいケースもあります。重要なのは医師の提案を鵜呑みにするのではなく、患者自身が選択肢を把握したうえで医師と話し合い、合意していくこと。それが最近の主流です」(室井氏)

 検査結果を踏まえて「切る、切らない」の境界線はどこにあるのか。腹部CTのケースを見ていく。

 腹部に超音波を当て、表面を撫でるように動かす腹部エコー検査は、「沈黙の臓器」と称される肝臓の異変を発見する。肝臓がんの疑いがある場合、造影剤を用いて連続して画像を撮影する「ダイナミック造影腹部CT検査」などを経て確定診断し、治療方針を決定する。ときわ会常磐病院の尾崎章彦医師が指摘する。

「転移でできたものではない肝臓がんの94%を占める『肝細胞がん』では、腫瘤(がんのかたまり)の個数や大きさ、肝機能の数値によって適切な治療法が異なります」

 実は“確実に手術したほうがいい”と判断できるケースは限られている。

「腫瘤が3つ以下で肝機能が良く、術後も十分に肝臓が残せる場合には手術によってがんを取り切ることが最も根治の可能性が高いと考えられます。一方、肝機能が低下している状態で外科手術をすると肝臓が負担に耐えきれず、肝不全を起こしたり腹水が溜まってしまうリスクが高くなる。最悪の場合、死亡してしまうケースもあります」(尾崎医師)

 3個以下でも大きさが全て3cm以下なら、別の治療法があり得る。

「この条件だと、外科手術以外に『ラジオ波焼灼療法』も選択肢になります。体内に針を刺して先端に電流を流し、がんを焼く治療法で、外科手術より体への負担が少なくて済む」(尾崎医師)

 さらに、4つ以上がんがあって手術でもラジオ波焼灼療法でも治療が難しい場合には、「肝動脈から抗がん剤などを投与する『肝動脈化学塞栓療法』を行なうことが増えてくる」(尾崎医師)という。

 検査でがんが見つかっても手術が必要かどうかは、他の様々な条件を加味して判断されるのだ。それは他の部位のがんや、がん以外の重大疾患でも同様である。

※週刊ポスト2020年3月13日号

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング