「江戸蕎麦 ほそ川」に密着、微塵の無駄もない真剣勝負

NEWSポストセブン / 2020年3月7日 7時0分

開店当初から鉢巻き姿を貫く細川さん

 東京・両国にある蕎麦の名店「江戸蕎麦 ほそ川」。挽きたて、打ちたて、茹でたての「三たて」が信条だという、朝7時半に始まる主人の細川貴志さん(71)の一日に密着した。

 まず、とりかかるのは出汁の準備だ。師と仰ぐ「翁」の高橋邦弘名人に倣って開店当初から鉢巻き姿を貫く。

「鴨南ばんそば」に使う仏シャラン産鴨は中まで火を入れない。「霜降り状態に汁をかけると旨いんだよ」(細川さん、以下同)。

 利尻昆布、大分産どんこを煮たあと、大量の鰹節を投入。最後に濾して出汁をとる。「かけ汁は飲んでもらえるようにつくっている」

 自家製粉した蕎麦粉は細かく、手で握るだけでギュっと固まる。

 蕎麦打ちの要ともいえる「水回し」。一気に約9割の水を注ぎ、手早く、丁寧にかき混ぜ残りの1割の水を調整しながら入れていく。瞬く間に菊の花のような形に練り上がった。

 腰を入れ、のし棒を使って蕎麦を均等に延していく。「一連の作業は体調の良し悪しが影響する」。蕎麦打ちは体力勝負。

 幅が均等になるよう切った蕎麦を包丁ですくい上げ、打ち粉を軽くはたく。粉の状態からわずか15分足らずでイキのよい蕎麦が誕生した。

 微塵の無駄もない真剣勝負の2時間半を終え、ほっとひと息つく午前10時すぎ。弟子の埜村翔太さん(26)と遅めの朝食をとる。この日の朝食は、まぜご飯と具だくさんのけんちんうどん。「捨てるのが嫌い」なため、天ぷらの衣液づくりで残る卵白をご飯にかける。

 午前11時45分、店に客を迎えいれる。センスのいい店内の大テーブルには澤清嗣の花器が鎮座。

 この日の蕎麦粉は色味を重視して、北海道産。「挽きたて、打ちたて、茹でたて」の「三たて」が信条。約30秒で茹で上げた蕎麦は、「味がわからなくなるから冷やしすぎない」とのこと。せいろは1150円。

「人参の天ぷら」(850円)は、栃木の農家から直送の葉付き泥付きの人参の旨さに尽きる。「人参嫌いの人でも食べられます」。

 フキノトウとジャガイモも盛られる「穴子天ぷら」(1650円)。銀座の名店「てんぷら近藤」などに通って極意を吸収した。

 冷酒は、静岡の「磯自慢」の本醸造、純米、純米吟醸のみ。「磯自慢が好きで、ウチ用にタンク一本造ってもらっている」。あてには「焼きみそ」(620円)がよく合う。

 とろりとした蕎麦湯もまた濃厚で絶品。ゆで汁をベースに、水で溶かした蕎麦粉を足す。

 京都から届いたばかりの新物のタケノコと木の芽、わかめをのせた「若竹そば」(1950円)。鰹節が発する香気に食欲は猛烈に刺激される。最後の一滴までかけ汁を飲んだのち、その余韻にしばし浸れる清々しい味。

●江戸蕎麦 ほそ川 【東京・両国】
東京都墨田区亀沢1-6-5
営業時間:11時45分~14時(L.O.)、17時半~19時半(L.O.)
定休日:月、第1・3火曜

※週刊ポスト2020年3月13日号

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