体外受精の無断出産 “男の産まない権利”と父親としての責任

NEWSポストセブン / 2020年3月24日 11時0分

想定外の現実に法はどう向き合うのか(時事通信フォト)

 別居後の出産をめぐる元夫婦の訴訟トラブルである判決が下った。そこで初めて認められたのは「男の産まない権利」。一体どういうことなのか。

 ある日突然、長らく別居中の妻から「あなたの子供を妊娠しているの」と言われたら──。しかもそれが性交渉ではなく、関係が良好だった頃に不妊治療で「凍結保存していた受精卵」で妊娠・出産しようとしているとしたら……男性はどんな感情を抱くだろう。これは、現実に起こった話だ。

 3月12日、大阪地裁で注目の判決が下された。別居中の妻(その後離婚)が凍結保存された受精卵を無断で使って出産したとして、40代男性A氏が元妻などに2000万円の損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁は「男性の自己決定権を侵害した」として元妻に慰謝料など880万円の支払いを命じた。

 A氏は2010年に結婚し、2013年から都内のクリニックで不妊治療を開始。しかし、その後、夫婦関係が悪化し、2014年に別居した。

 その翌年、元妻は不妊治療時に凍結保存された受精卵を移植し、妊娠した。元妻は翌2016年に長女を出産。その後、2018年に夫婦の離婚が成立した。A氏は元妻の出産が無断で行なわれたものだと訴えた。

「別居中の妻からLINEで体外受精による妊娠や出産を知らされていたA氏は、『精子は提供したが、移植には同意していない』と主張した。元妻がクリニックに提出した移植に関する同意書は、元妻がA氏の名前を勝手に署名したものだという。

 裁判所は偽造を認め、元妻は男性が移植に同意していないことを認識していたと指摘し、『元妻との間に子供をもうけるかどうかをA氏が決める権利を侵害した』としたのです」(全国紙司法担当記者)

 この判決は「男性の自己決定権が侵害された」と認められたところが注目を集めた。

「男性側の『リプロダクティブライツ』(性と生殖に関する権利)が認められた異例の判決です。リプロダクティブライツとは、子供を産むか、産まないか、いつ、何人持つかなどを自分で決める権利のことで、1994年の国際人口・開発会議で提唱されました。日本では2000年に男女共同参画基本計画に盛り込まれ、女性の健康支援策の基盤となった。リプロダクティブライツは主に妊娠出産を担う女性側に向けてのものという意味合いが強かったのです」(同前)

 家族問題に詳しいみずほ中央法律事務所の三平聡史・代表弁護士はこう語る。

「男性側に対して、子供を産む、産まないを決めるリプロダクティブライツが認められたことは画期的です。

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