路上観察学会 マンホールの蓋の観察、オナラの音の記録行う

NEWSポストセブン / 2012年11月28日 16時0分

 松田哲夫氏は1947年生まれ。編集者(元筑摩書房専務取締役)。書評家。浅田彰『逃走論』、赤瀬川源平『老人力』などの話題作を編集。1996年からTBS系テレビ『王様のブランチ』本コーナーのコメンテーターを12年半務めた松田氏が、「路上観察学会」を振り返る。

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 一九八六年六月十日、藤森照信さん、赤瀬川原平さん、南伸坊さん、林丈二さん、荒俣宏さん、杉浦日向子さん、一木努さん、四方田犬彦さん、とり・みきさん、それにぼくなどはモーニングに身を包んで神田の学士会館に結集した。会食のあとスライドを使った発表会を行い、最後に藤森さんが会館前の路上で朗々と「路上観察学会発会の辞」を読み上げた。

「今から十数年ほど前、多くの者が図書館と美術館を後にしました。……その者たちがどこへ向かったかというと、たいていシャレた店やテニスコートに行ってしまいました。しかしやがてここに集うことになるわれわれは店へもテニスコートへも行けませんでした。もちろん、お金もなく、もてもせず、ネが暗かったからであります。

 しかし、そんなわれわれを受け入れてくれる場がたった一つだけありました。路上です。……もちろん、この地球上には、図書館や美術館や店やテニスコートよりも、もっと素晴らしい路上という場があることをまだ誰も気づいてはいませんでした。これは、目玉にとって、新大陸の発見であります。以来十余年、それぞれバラバラに自分の目玉を路上で磨いてまいりましたが、本年に入って初めて結集し、ここに路上観察学会を発足させることになりました」

 この学会のメンバーが、後に路上観察と名づけられる行為を始めたのは七〇年代のことだった。

 七〇年、林さんがマンホールの蓋に着目し、日本や世界の蓋を観察する。その過程で、ニワトリ小屋に変貌したテレビ(「ニワトリ・テレビ」)なども発見、しだいに路上観察に目覚めていく。林さんは、ヨーロッパに行った時、旅行の間にしたオナラの音と回数を記録したり、街を歩いていて靴にはさまった小石を毎日蒐集し、小さな瓶に入れるなど、森羅万象なんでも観察する人だった。

 七二年、今和次郎さんの考現学に興味を持っていた赤瀬川さん、南さん、そしてぼくが、ただ登って降りるだけの階段(「純粋階段」)を発見。これを契機に、町中にあって無用だけど大切に保存されている物件、無意識に作成された造形である「超芸術トマソン」を探索するようになる。

※週刊ポスト2012年12月7日号



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